3章16 舞踏会ではなくパーティーです。
本日2話目です。1話目を未読の方はバックお願いします。
「パーティー?ああ3日後の創世主の誕生祭だね」
トリスタさんがパーティーの事を知っていた。なんでも創世主の誕生を祝う祭り、つまり大陸クレッシェンドの建国祭みたいなものらしい。
創世主の誕生イコール浮遊大陸の誕生で、建国祭ということらしい。でも、この祭りはトウキクでしか行われないそうだ。
他の地方では替わりに収穫祭やら花祭り、海の祭り(ティファーン限定)等があるそうだ。
そして、それぞれのトウキク領主が主となってそれぞれに領単位だったり町や村ごとに祝うそうだ。
王都ではいつも祭りに先駆けて前夜にパーティーが開かれる。参加できるのは領主及び貴族、特別に招待されたゲストのみ。
地方都市ではそれぞれの領主により祭りの開催や時期が決められており、もう祭りが終わったところもあるらしい。そう言えば先日、何処かで祭りがあったとか聞いたっけ。
領主達は自領の祭り、王都の祭り両方参加の義務があるのだそうだ。王都での式典に参加するため時期をずらしているのだろう。領主もなかなか大変だ。
王都の街では、パーティーの翌日から庶民の祭りが始まる。屋台とかパレードとか大道芸とかあるのかも。これは絶対行きたい!ワクワクするぜ!
その前にパーティ〜だ〜!
舞踏会ではなくパーティー、宴会に違いない。やっほぃ。
「もちろん出席なんかしないよ」
あ、やっぱり。
ジュノさんてば、さすがにあの場では断れなかったのね。シルビアお母様を通じてお断りする気らしい。
しかし······
「パーティー出席することになった」
は?
シルビアさんに説得されたのかしら。でも、なんと言ってジュノさんに「出席する」と言わせたのだろう。シルビアさん強いわ。
「えーっ、ジュノ大丈夫なの?」
「ジュノ、やはり母上に会う時、私がついていけば良かったか」
「いや、ちゃんと交換条件出したから。今回の訪問が終わったら、こちらが連絡しない限り向こうからは二度と連絡したりしないと約束させた」
私以外が「おお〜っ」と拍手をした。ジュノさん本当にそれでいいの?
「ジュノも言う時は言うんだね」
「だな、驚いた。同じ女性でも母親は別ということか」
「ジュノくん、今回の訪問が終わったらって、まだ他にあったのかい?」
そうよ。トリスタさんの言う通り、他にも何かあったのかしら。
「ジュノさん、そうなの?」
「実は····」
ジュノさんは2〜3日滞在したらユシャさんに引き取られるまで預けられていた孤児院を訪ねるつもりだったそうだ。
しかし、シルビアさんから実の父親の所在がわかったからには一緒に会って欲しい、その為にはパーティーに出席する必要があるとのことだった。
でも、ジュノさんのお父さんて今の創世主かもしれないとか言ってなかったっけ。そんな雲の上の人にはどう考えても簡単に会えないんじゃない?確か中央の神殿にいるはず。王都にくるの?
「今、伯爵が会えるように調整しているそうだ。変な話だが、母も伯爵も俺の父親であるだろう創世主に会わせるために結婚したようなことを言っていたんだ。母は俺の父親の事しか考えてないから、俺はダシにされてると思うが、伯爵は何故そこまでして俺を会わせようとしているのかが分からない」
「確かにそうよね···」
「そうだな善意だけでそういう事をするとは思えないな」
「え〜っ!ヒナもラクも同じ意見?なんで?なんで、なんで?」
アルクくんがいると深刻な話じゃなくなるなあ。
「アルクうるさい。普通貴族ってのは利益にならない事はしないもんだ」
「でもラク、商人も利益のことばっかりだよ」
「貴族の利益は金だけじゃない」
「ラク、貴族じゃないのになんで知ってるの?」
「エルといればわかるようになるんだ。エルはエルで結構苦労してるからな」
「「ふーん」」
ジュノさんもうんうんと頷いている。漫画や小説でしか貴族を知らなかった私にとって割と身近な人が貴族だった事に改めて驚く。あれ?そう言えばユシャさんも貴族だった?あの本名からして貴族っぽいし、王族と同じクロフォードの姓を持ってる。
「あ、ヒナ。言い忘れてた。パーティーにはヒナ達も出席だから」
はい?なんですって?
「ちょちょちょっと、ジュノさん!どう言うことよ!」
「心配すんな。フィン様達やトリスタさん、いやバーディさんとしてだけどみんな出席だから」
「だからそれなんでよ。私貴族じゃないし!お断りします!」
「ユシャさんに会うのが遅くなるけど頼むよ」
「そ、そう言う訳じゃ…もう、わかったわよ」
ジュノさんによると、フィン様とクリス様は魔族とは言え貴族だし、私は付き人として参加。アルクくんとラクシエルさんは護衛ってことで。バーディさんはアドゥーラだしトウキクでの私達の案内を任されてるからと言う事で無理矢理承知させたらしい。
私の衣装は用意してくれるとのことだ。
私は体形や歳が近そうな(本当に近いか知らないが)ハオルチアさんのドレスを頂いて手直しして着ることに。ハオルチアさんが申し出てくれたらしい。
不思議。庶民の私にドレスを譲るなんて嫌かな、と思ったんだけどな。
男性陣はジュノさん以外はトリスタさんが準備する。変装用とかで色々持ってるのかと思ったけど、貸衣裳にツテがあるそうだ。 その辺の事情はまた、いずれ。
ジュノさんの衣装はシルビアさんがしっかり準備していた。
なんとなく、そんな気はしてたけどやっぱり母親なんだね。しかし、こんな短期間で色々対応できる伯爵邸の使用人達、なんてハイスペック。
久しぶりにルーが夢の中に現れた。
「もう監視がキツくてね。でも最近はアイツが珍しく何処かへ出掛けるとかで、みんなそっちに掛かり切りなの」
「へえ。何処にいくんだろうね。あ、こっちはパーティーに出席する事になったのよ」
「今頃ならトウキクは創世主の誕生祭ね。·········」
「どうしたの、ルー?」
「まさかね······」
「?」
この時のルーの頭の中のまさかが実現するとは······
········まさにまさかである。
読んで頂きありがとうございます。ヒナさんはダンス出来ないし時間無いから練習しても間に合わない。貴族の話は、雰囲気で。あまり詳しく考えないで頂けると有難いです。まだユシャさんには会えないヒナさんです。