赤竜かあさんと…
よろしくお願いします。
子竜たちのおかあさんだ~。分かってしまえば、もうわたしは怖くない。
……大きなお口はまだちょっと怖いけど。
仕方がないよ。だってこれは、本能的なものなんだもん、うん。
だけど、その牙も爪もわたしを傷つけることなんてない、と言い切れると思う。心配そうにわたしを見つめるその琥珀の瞳が、伝わってくるその心がうれしい。
うれしい、という感情に引きずられて、今度はきゃっきゃっと笑う赤ん坊のわたし。
う~ん。かなり幼児化? 赤ん坊化? してるな、わたし……。赤ん坊の身体に引きずられたと考えるべきか、精神力が尽きたというべきか、悩む。
だって、子竜たちのおかあさんに心話で話かけられないんだもの。こうやって、冷静? に考えている少しのわたしと赤ん坊化してるたくさんのわたし。う~ん。
あ、子竜たちのおかあさんが動き出した。恐る恐るもっと近づいてくる。
きゃーっ! ほとんど、ゼロ距離。わ、わたしのこと、つぶさないでね? ちょっとうるっとしながら、竜を見上げると、琥珀の瞳を細めて笑った気がした。そのとき、竜の右腕に抱えられているものに気がつく。
あ、卵だっ! 卵のきょうだい、発見!
テンションの高いまま、卵の方へばたばたと小さな赤ん坊の手をのばす。
竜はちょっと困ったような顔をしたけど、そうっとわたしの隣に卵を差し出した。わたしの小さな手と、卵が触れあう――――わたしの脳裏に黒の子竜が浮かぶ。卵の中で、小さく丸くなって眠っている。無意識でも、わたしの手が触れている方へよってくる。それが嬉しくて、おかしくて、思わずふふっと笑う。
そんなわたしと卵を竜は優しく見つめていた。
ほっこりと和んでいたそのとき、後ろでどさっと大きな音がした。びくっとするわたしにかかる優しい声。
「わたしの大事なおちびちゃん。ただいま」
おかあさんだ! おかあさんが、戻ってきた! わたしの意識はおかあさんでいっぱいになる。
そうだ! お腹も空いてたんだった。本能も訴える。きゃー、考えていたわたしがどんどん、小さくなる。
ほぼ赤ん坊化する前にわたしが見たのは、おかあさんを求めて泣くわたしを見て、少し悲しそうにする子竜たちのおかあさんだった。
赤竜かあさんと交流中、ティアママが無事帰ってきました。
読んでいただき、ありがとうございました。