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赤竜かあさん

よろしくお願いします。

 わたしを見つめる琥珀の瞳。

 けれど、その下には、わたしを丸のみ出来そうな大きな口が。牙が。圧倒的な存在感。その存在が、ひたすらわたしに注目している。こ、怖い。


 思わず、びくっとする赤ん坊のわたし。同時に今までわたしをあたたかく包んでくれていた腕の感触が、冷たい床に変わっていることに気がつく。

 あたたかく見守ってくれていた金の瞳は、焦げ付くような竜の琥珀の瞳に。


 おかあさん、おかあさんがいないっ!

 うわゎゎゎ--------ん!


 心の動揺のままに、そのまま、大声をあげて泣き出すわたし。だって、もうへとへと。ぐだぐだ。すっごく疲れて寝るところだったのに。

……ふわふわ極上の羽根布団に包まれて、ぬくぬくあたたかく赤の子竜と一緒に。

だけど、今は冷たい床の上で、一人床に転がされて――。


 うえぇぇぇ-----ん!

 もう、悲しいやら、悔しいやらで、わたしの感情はめちゃくちゃ。どこかで冷静に今の自分を観察しているわたしもいる気がしたけど、ほとんどのわたしは赤ん坊のわたしとともに泣き叫んでいる……。何だかお腹も空いてきて、わたしの不快指数は上がる一方。そのとき、べろん、と生温かく湿った何かに顔をなでられた。


 な、何?! 驚きに目を見開くわたし。そのわたしに覆いかぶさる影。赤銅色の竜の顔が近づいてくる。


ぎゃあぁぁ-----! 怖い!


べろん、べろん、べろん。竜は、一生懸命にわたしの顔を舐めている。驚きと恐怖で思わず泣き止むわたし。そんなわたしに、竜の心が流れ込んできた。


--な、泣かないで。泣かないでね。一体、いきなりどうしたの?

どこか、痛いの? 苦しいの? 一体、わたしは、どうしたら……

ああ、でも、わたしにはティアのような腕はない。

わたしの腕で触れたら、この子を傷つけてしまう。

どうしたら、どうしたらいい? どうか、そんなに泣かないで……


 焦り、混乱し、その根底にはひたすらわたしを労り、心配する心。その心に触れて、わたしは少し落ち着いた。竜の琥珀の瞳をじっと見つめる。


 ああ、何だ。わたしは、この瞳を知っている。

 わたしのきょうだい、赤と黒の子竜と同じ。

 この竜は、子竜たちのお母さんだ。


 何故だか、すとん、とその事実がわたしの心に落ちてきた。思わず口が緩む。


 にっこり笑ったわたしを見て、今度は赤銅色の竜が固まった。







赤竜かあさん、主人公に泣かれて大慌てです。

読んでいただき、ありがとうございました。

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