ティア
よろしくお願いします。
『どうやら無事、絆が結ばれたようね』
固唾を飲んで見守っていた場に声が響いた。
絆? 赤竜は、思わず子竜たちとの絆を確かめる。淡い光に包まれた親子の絆。
安定している! 喜びと驚き、安堵に包まれ、壊れてしまった子竜の方へ視線と向けた瞬間、赤竜は取り乱した。
--何故!? この子はどうなったの!?
かすかに震えていた小さな身体は、今はもうピクリともしていない。
--そんな、!?
『落ち着きなさい。あなたの子竜は、ここよ』
金の瞳をそっと伏せながら、横たえていた自分の子を優しく抱き上げ、言う。
『正確には、わたしの子の中にいる』
愛しそうに、大事そうに赤子を見つめていた瞳を、今度は真っすぐ赤竜に向ける。
『わたしは、人族の………ティア。あなたは、わたしの娘を守り、慈しみ、育てると誓った。たとえ形を違えても、自分の子を救って欲しいと願った。そちらの……』
ティアは赤竜の抱えた卵を見ながら、続ける。
『その卵の子竜は、竜のまま。けれど、双竜の絆はここにある』
ティアは、自分の子を赤竜によく見えるよう持ちあげた。
--本当に?
ああ、確かに真紅の絆と親子の絆をその子から感じる。一体?
ティアは、混乱する赤竜の瞳を覗き込み、真摯に言う。
『決して、絆を奪い取ったわけではない。子竜たちに無理強いをしたわけでも。
分かるでしょう? 絆は歪められてはいない、と。そして、あなたの子竜の存在、心もこの子から感じ取れるでしょう?』
ティアの手元、抱かれた子に赤竜の視線が吸い寄せられる。脳裏をよぎる、傷つき震えていた赤い小さな子竜。絆を通して伝わってきた、痛み、苦しみ、哀しみ。それが、今は、凪いでいる。伝わってくるのは、生きている喜び。
--ああ、生きているだけで。この子は、わたしの子。
赤竜は、涙を流した。
ようやく名前が一人出せました。名前の一部ですが……。次、人族とは、です。
読んでいただき、ありがとうございます。