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ひみつのアリアちゃん  作者: 友坂 悠
8/28

エンジェルレイヤー


       ☆☆☆


 こんな夢を見るのはこれが初めてというわけではなくて。

 正直なんのトラウマなんだろうかって思うけど、理不尽なのは嫌いなはずなのに、夢の中で起きる事は理不尽な事が多すぎて嫌。

 もう何度も出てくる景色。

 現実じゃないって夢の中で理解してるくせに、目が覚めたと思った夢を見た事もあって、もうどこまでが夢かどこからが現実か時々わからなくなる。

 今のこの時ももしかしたら夢なのかもしれないな。

 夢を見ているんだったらいいな。



 夢、と言えば、あれはあのこに似てるかもしれない。

 もしかしたらそれがあんな夢を見せてるのか。


 あたしがそのこにあったのは夕焼けに月が見える綺麗な空の日。

 確か小学5年の春。

 連休の頃だった気がするけどよく覚えてない。

 街の図書館に出かけたあたしはその時だけ隣にあった子供科学館に立ち寄ってみたんだった。

 いろんな展示物があったけど理科とかあんまり得意じゃなかったあたしにはよくわからないのも多かったけど、でも静電気の玉とかよくわからないぐるぐるまわるエンジンとか、不思議な物が多くて見てて飽きなかった。

 子供科学館はけっこう自由に入れるはずなのに今まではなんか入り辛かったんだけど、この日は図書館でピンとくる借りたい本が見当たらず、借りてたハックルベリーの冒険を返却しただけで出てきたから、ほんとなんとなくで隣を覗いて見る気になったんだった。

 もう夕方だったから空はピンクになって、薄茶レンガのその建物がすごくセピア色ないい雰囲気で、なんだか吸い込まれるように入口を開けてた。

 ガランとして静かな館内で一人不思議な展示物を見て回るのは、まるで別世界に紛れ込んだアリスのようで、すごく不思議な感覚で。

 まるで夢のようで。

 というか、もしかしたら夢だったのか?

 とも、思ってた。


 もういいかげんにひと通り見たかな?

 と、この時間が終わってしまうかなって、ちょっと淋しく思い始めてたそのときだった。

 きみ、一人? って。

 よかったら一緒に見ない? 遊ぼうよ。

 そんな風に後ろから声を掛けられた。

 ナンパ? まさかね。

 そんな風に思いながら声の方に振り向くとそこには屈託のない笑顔の少年? がいた。

 男の子みたいな雰囲気なんだけど顔立ちその他女の子みたいで、髪はショートだけど男の子っぽい刈り上げではなくてどちらかといったらやっぱりショートカットの女の子。

 ここって一人だと全部遊べないんだよね。って笑顔で言う声はやっぱり女の子の声かな?

 これだけ女の子女の子なのになんで全体で観ると少年に見えるのか自分でもよくわからないけれど、たぶんそれは言葉遣いだけではなく醸し出している雰囲気なのだろう。

 ちょっとダボッとした丸首のシャツに紺のジーンズで、靴は普通の白のスニーカー。

 服装も完全に男の子っぽい。

 やっぱり男の子、かな?

 そんなことをたぶんキョトンとした顔しながら考えてた。

 こっちにおいでよー

 とか言いながらさっさと歩いて行っちゃうその子から何故か目が離せず、あたしはたぶん無言で着いて行ったんだろう。

 科学館の中を熟知してるっぽいその子は始終笑顔で、いろんな事を説明してくれて、いろんな遊びを教えてくれた。

 何をどう遊んだのかあとからはっきりとは思い出せないけど、たぶんあたしも笑顔になっていたんだとおもう。

 それだけは、たぶん。まちがいないとおもう。





 たぶんあたしの子供の頃にとっての、唯一の、一番の、幸せな思い出だったから。









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