眠れない夜の猫。
フツウの男の子にもどれるかもしれないよ
って、言われたあのとき。
一瞬世界が暗転し、あたしはまったく元の場所、服も何もかももとのままの状態に戻ってた。
何が起こったか理解するまで数秒。
もしかして夢?
そう思ったけど違ってた。
あたしにとっての時間はちゃんと経ってる筈。
ただ、戻ってくるまでの意識が途切れているだけ、だ。
ふだん、気絶したり寝たり意識がなくなってから気がつくまで、起きるまで、っていうのは、普通に時間が流れているのがわかる。
寝て、起きて、とかでも、まったく寝たときから起きるときまで時間がワープするような感覚は無くて、その間時間の経過があったんだろうな、って感じはあるよね。
寝ちゃいけないときにいつの間にか寝ちゃってて、それで起きたとき、気がついた時でさえ、
あー、やっちゃった、とは思っても、まったく時間がワープしたかのような感覚に陥ったことはない、と、おもう。
いつの間にかこんな時間……という感覚と、一瞬で時間がワープする感覚って、似てるようでやっぱり違う。
怖かった。
無っていうのがほんとうに存在するってことが。
とんでもなく、怖かった。
寝るのが怖い。
今の状態が夢になってしまいそうで。
寝るのが怖い。
おきたら、やっぱり元に戻ってしまっているかもしれないから。
寝るのが怖い。
このままのあたしは、もういなくなってしまうかもしれないから。
夢を見ている時、これが夢だって自覚とかしたことは無いけど、起きると普通に夢だったりって納得することって結構ある。
夢を見ている間は、無くしてしまったもの、後悔していたこと、夢や希望が叶っていたりもするし、逆に夢のなかでどうしようも無いことで悩んでいたりする。
この間見た夢の中のあたしは、お風呂に入ろうとして悩んでいた。
夢のなかのあたしはふつうの女性のはずで、そう認識していて、普通に女湯の暖簾をくぐり。
着替えようとした所で何故かなかなか着替える事ができず。
ロッカーの空きが見当たらず、やっと見つけたロッカーはすごく入れにくく。
すべて脱ぎ終わり風呂場に向かうと、何故かなかなかたどり着けず……
そしてまたあるときの夢の中のあたしは何故か自信満々で、いっぱいのねこがいて、しあわせだ。
お母さん猫に子猫が4匹。
ほかにも何匹も猫が現れる。
サバトラ白にグレイに黒に、
キジトラにサバトラに、
まん丸でふわふわでかわいい猫。
ちっちゃくて人懐っこい子。
現実にカエルと寂しくなる。
夢から覚めたあとは、もう、このままどこかに行ってしまいたくなるような、そんな寂しさを感じながらおきる。
だんだんと夢の記憶が曖昧になっていき、そして細かいところは忘れてしまうので、なんとか生きていけるのかもしれない。