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ひみつのアリアちゃん  作者: 友坂 悠
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いんたーみっしょん 魔法使いアリア

 温かいお湯。

 ゆったりと浸かるのは好き。


 今までは裸になると自分の嫌な体が見えるからお風呂はあんまり好きになれなかったけど、お湯に浸かるのは気持ちいい。


 お湯に浸かった身体をゆっくり眺めるとそこには紛れも無い胸が見える。

 ちゃんとした女性特有の胸の谷。

 なんだかものすごく満足感と安心感に包まれながら、あたしはたゆたゆとお湯につかっていた。



 まはりーくまはーりたやんばらやんやんやん。

 なんか自然とそんなメロディーを口ずさんで。

 懐かしい感じのメロディーで、なんかアニメの歌だったはず。

 小さい頃見たことあるはずなんだけど友達はみんな知らないって言う。

 谷崎さんは知ってるみたいだったけど、

「アリアちゃんはリアルで見たことない筈」

 って言われた。

 まりあちゃんもちゃんと知ってたし、絶対見たことあるはずなんだけど何処でだろう?


 そんなことをボンヤリ考えながらお湯に浸かってたらのぼせてきた。

 そろそろあがろうかな。


 ガタガタ

「あーもう、つかれたぁー」

「ありあちゃんいるのー?」

「あ、お風呂入ってるのね、あたしもはいるー」


「あ、あ、ちょっとまって、もうあがるから」


 あうあう。

 あわてて出ようと思ったけどもう脱衣所で服脱いでるまりあちゃんが見える。

 どうしよう……


「もう、狭いんだから何も一緒に入らなくてもいいじゃない」

 思いっきり強がってそう言ってみる。


「なによー、小さい頃から一緒に入ってるんだもん、今更だよー」


「ってなに? もしかしてありあちゃん、、」


 さっさとお風呂場に入ってきたまりあちゃん、湯船に深く浸かり込んでるあたしを覗き込んで、、

 気がつかれた?


「えーーー?」


「どうしちゃったのその胸。豊胸? な、わけ、ないよね。さすがに1日でそんなふうになるわけない」


 顔を真っ赤にして俯いてるあたし。

 ぶつぶつ言ってもっとちゃんと見ようとでもするかのように覗き込むまりあちゃん。


「んー、もしかしてその胸あたしよりも大きい?」

 じろじろみて。

「もう、ほんとどういう事? あがってちゃんとみせてよ!」


 あーん、もう、かんべんして。


 あたしは観念してまりあちゃんに身体を見せるように湯船から立ち上がった。


「え?」

 とうぜん下半身も見える。

「うそ……」

 呆然としているまりあちゃん。無理もない。

 現実的にはあり得ないよねこんなの。

「っていつの間に手術とか、ってわけないよね」

「どうかして隠してるの?」

「最近はそういうのすごいんだーー、ほんものみたい」

「どこで買ったのそんなの」

 矢継ぎ早に。


「ちがうー」

 すっかり作り物だと思われてるみたい。

 一瞬そう誤魔化そうかともおもったけど、やめた。

 まりあちゃんには隠し事出来ないよ。

 嘘ついたって絶対いつもばれるもん。


 あたしは真っ赤な顔を手で押さえながら、今日のいきさつを話していった。


「へぇ。不思議なこともあるんだねー。」

 ゆっくりふたりで湯船につかりながらいろいろ話してたら、落ち着いてきた。

 まりあちゃんもいろいろ納得してくれたみたい。


「でも、漫画とかなら大概そういうのって魔法が解ければ元に戻るもんじゃないの?」

「うん、そうもおもうんだけどよくわからないんだ」

「その変なねこみたいのは?」


「ナインって名前の黒猫なんだけどね。見た感じ普通の猫。喋ってるって言っても、本当に声出してるって感じじゃなくて、なんだか心の中に響いてくるような声で」

「テレパシーみたい」 

「夢奴って怪物やっつけたらいつの間にか世界が元に戻ってて、ナインも居なくなってたの」

 そういえばあの子どこに行ったんだろう。っていうかあの狭間の世界にまだいるんだろか?

「ありあちゃんの服は?」

「うん。元に戻ってた」


「で、帰って来てお風呂って思って裸になってびっくりで」

「あー、まぁ、そうだよねー」

「すごく嬉しかったんだけどね」

「そこは正直だよね。うん。あたしもうれしいよ」


 本当?

 これは心の中だけ。

 本当にそう思ってくれてるならいいな。


 でも、あの言葉……

 フツウのおとこのこに戻れるかも知れないよって……


 嫌、だ。

 嫌。

 気付いてしまった。

 あたしはオトコノコではいたくない。

 いくらフツウ、でも。

 こんな風に思う気持ちがなくなるって事?

 それって、もう、あたしじゃ無いよ。

 今のあたしじゃ無くなるって事だ。

 それは嫌。

 絶対嫌。


 あたしはその夜ノボせてフラフラになりながら、碌に頭も乾かさないままベッドの上に倒れこみ、そのまま寝てしまったらしい。



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