ケーキ屋
「センパイはやっぱチーズケーキですよね?」
「それ以外ありえんの」
「いえ、むしろそれ以外食べちゃ駄目ですね」
・・・いきなりひどい言われようである。
「皆さん、そういうこと言っちゃ海人君が可哀想ですよ~」
「あぁ華ちゃん、ありがとう!」
やっぱり華ちゃんは天使だ!
「海人君はチーズケーキしか食べたことのない残念な人だからしょうがないんですよ~」
「・・・・・・」
え、何?今のは聞き間違いだよね?
華ちゃんがそんなこと言うはずないよね?
あっ、夢か!!
「諦めろ、これが現実じゃ」
「華センパイ!ナイスです!」
「華もなかなかやるわね」
「えっ、えっ?なんですか~??」
悪気がないところがまた傷つくな。
と、紅が流れを変えるように話だした。
「さて!話しておらんでケーキを選ぼうかの」
みんなでそろって「はーい」と返事をし、茜と華と凛が集まってケーキを見始めた。
残った俺は同じく残ってる紅に話しかけた。
「じゃあ俺らも見て回るか」
「なんでお主と一緒に回らにゃならんのじゃ」
「いいじゃねぇか。一人で回るのもなんだし」
「お主と回るくらいなら孤独死した方がマシじゃ!」
「そんなに俺と回りたくないのかよっ!?」
結構傷つくぞ。
「ま、まぁ今回ぐらいは一緒に回ることを許可するのじゃ」
「何だその上から目線は…」
「妾は部長だからの」
「そういえばそうだな」
小さいから忘れてたよ。
「お主、それ以上失礼なことを考えとったら子供用包丁並みに安全な妾でも怒るぞ」
「比較の対象がおかしいだろ!」
ぐたぐた言ったが結局一緒に見ることになった。
一緒に回って色んなケーキを見たが、やっぱりチーズケーキが一番だな。
ちなみに華が苺をたくさん使ったショートケーキで凛が普通のブルーベリーケーキ、紅が栗の少ないモンブランを選んできた。
残る茜はというと…
「美味しくなーい」
ブルーベリーの変わりにイクラが、生クリームの変わりにワカメが敷いてあるなど見るからに不味そうなケーキを選んでいた。海鮮ケーキというらしい。名前からして非常にはずれ感がある。
「そりゃそんな外見で美味しい方が驚くわ」
「確かにの。よくチャレンジしたのー」
俺と紅が言うと。
「人生色んなことに挑戦しないでどうするんですか!」
とか言うのが茜である。バカである。
というかこんなケーキを置いてあるこの店の店長もなかなかのバカなのだろう。
みんなが美味しく食べ終わった頃には茜は涙目でケーキを頬張っていた。
「そんなになるならなんでそれを選んだ…」
「うっ、センパーイ・・・」
「泣くな。俺も食べるの手伝ってやるから」
「やったー!!センパイ大好きです!!」
泣き顔が笑顔に変わるならこのくらいなんでもないぜ!!
我ながら単純だな~。
「人がよいの」
その後15分かけてやっとケーキを食べ終わった。
「茜、もう明らかに無謀な挑戦はするなよ」
反省を促すため俺がそう言うと
「なんでですか!人生色んなことに挑戦しないでどうするんですか!」
・・・全く反省はしていないようだ。
「よし!みんな食べ終わったの。今日は星がよく見えるから早く帰って準備するぞい」
「「「「おー!!」」」」
「ちなみにみんなのケーキ代は奢りじゃ!」
へー、珍しく紅が部長らしいことするじゃないか。
「海人のな!!」
「なんでだよ!?お前部長なんだからお前が払えよ!!」
「なんじゃお主は。女子に金を払わせて男の自分は払わぬつもりか?」
「くっ!」
「ほれ、ここはお主の顔を立ててやっとるのじゃ。さっさと行かぬか」
「ぐぬぬー!」
はぁ、しょうがない。払ってやるか。
「じゃあみんなケーキ代いくらだ?」
「妾は240円じゃ」
「私は380円です~」
「私も240円だ」
だいたいそんくらいだよな。
「茜はいくらだ?」
「ウチは620円です!!」
「高っ!?」
「テヘペロ☆」
「テヘペロ☆、じゃねー!!!」
なんでこんなに高いんだよっ!あと値段を聞いた時、紅が笑っていたような…
・・・まさか、あいつこれを知ってて俺に払わせようとしたんじゃないのか!?
「ほれ海人、早く払うのじゃ」
「くっ、コノヤロー」
絶対知ってたな紅の奴め!一度言った手前払うことは払うがな。そして泣く泣く約1500円もの代金を払った。
「さぁ帰るかの。もちろん海人以外!!」
「なんでだよっ!!!!」
ケーキ屋でも俺たち天文部の日常は変わらない。
次回は真面目に星関係のことを書こうと思ってます。