送り2
「じゃあまた明日」
華ちゃんを家まで送り、今しがた凛も家に帰った。
あとは茜を駅まで護衛したら家に直帰するだけだ。
「さて、もう隠すこともないじゃろ」
「・・・部長、気が付いてたんですか?」
「まあそりゃの」
気が付いてて一緒に帰るのを提案するとか性質が悪いんじゃないんですか?
「それでどうしてこのような奇怪な状況になったのじゃ?」
「それはかくかくしかじか・・・」
おい茜、そんなんで伝わるのはフィクションだけで。
「ほぅ、そうじゃったか」
「えっ!?伝わったのか!?」
ついに俺以外の心も読むようになったか・・・。
「つまり海人はMなんじゃな」
「全然伝わってなかった!」
「はい!正解です!」
「正解なのか!?お前は何を伝えたんだ!?」
「この世の真実じゃな」
「そんな世はない!」
「真実はいつもひとつ!」
「やかましい!!」
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、呼吸を整える。
2人交互に連続でボケてくるなんて鬼か。疲れるわ。
内心でさらにつっこみをしていると。
「まあ大方罰ゲームかなんかじゃろ」
「は?本当にかくとしかだけで伝わったのか?」
「そんな訳ないじゃろ。海人が自らこんな恰好するとは思えんし、その恰好にならんければいけない理由も思い浮かばないんでの。それとも海人にはその手の趣味があるのか?うわ、引くの」
「ないから!勝手に引くなよ!罰ゲームであってるよ」
あと分かっててさっきまで悪乗りしてたのか。どこまでも性質悪いな。
「やっぱりの。それにしても・・・」
言葉を止め、紅がじろじろと見てくる。恥ずかしいんでやめていただきたい。
10秒くらいたっぷりじっくり見られた後、ぼそっと呟かれる。
「似合うの」
「ですよね!」
「やめてくれ」
メイド姿が似合うとか言われても全然嬉しくないからな?
「でも本当に似合っておるぞ、面白いくらいに。記念に写真でも撮っとこうかの」
「・・・お好きにどうぞ」
「なんじゃ、抵抗しないのか」
つまんないの。と付け足す紅。
なんなの。俺をからかうのを生きがいにでもしてるの?
「もうすでにたくさん撮られたからな」
8割方華ちゃんに。
「・・・それは・・・なんじゃ、気にするでない」
「ああ、サンキュ」
同情するような、哀れむような視線で見られた。悲しい。
「センパイ、そんな気にしちゃダメですよ。人の噂も750日って言うじゃないですか」
「75日だ。俺に卒業まで笑い者になれって言うのかよ」
「そんなこと言ってないじゃないですか。・・・まぁウチは一生持ってますけど」
おい、今ぼそっと恐ろしいことを言わなかったか?
「てか、そもそもこんなの着ることになったのは誰のせいだと思ってんだ」
「センパイ」
「お前だわ」
「責任転嫁はよくないですよ。センパイの運がないのが悪いんですから」
うぐっ、納得いかないけど微妙に合ってる気がする。凛じゃないのに。バカのくせに。
「さて、そろそろ駅に着くのでセンパイのメイドはここまでです」
「え?家まで送らなくていいのか?」
「はい。電車代とかも掛かりますし、そこまで時間を奪えませんから。それともお金を払ってまでウチを家に送りたいんですか?すみません、身の危険を感じるので通報します」
「やめろ!」
なんで俺何も言ってないのに通報されそうになってんだよ。さっきの紅といい、人の話を聞かないのが流行ってるのか?そういえばこの部の入部条件って人の話を聞かないことだっけか。納得。
「それより茜にそんな気遣う心が残ってるとはな」
「むっ、失礼な。制服返しませんよ?」
「いや、それは返せよ・・・。てか、お前が持ってたのか」
「はい、センパイの匂いがしました」
「嗅ぐなよ!」
「いい匂いでしたよ?」
「聞いてねぇよ」
やめてー!恥ずかしい!
自分の制服の匂い嗅がれるとか何の罰ゲーム?
あ、ジャンケンでしたね。
「茜、電車の時間は大丈夫なのか?」
今まで空気と化していた紅が口を開いた。
「あっ、そうでした!じゃあ部長、センパイ、また明日ー!!」
「おう」
「またの」
茜が小走りで去っていく。
残った俺と紅は小さく手を振りながら茜がいなくなるのを見届けた。
その後1分ほど立ち尽くしてからようやく動き出した。
「帰るかの」
「そうだな」
「それにしても妾らがいない間に面白いことをしておるんじゃのう」
「俺は全く面白くないけどな」
「メイド姿の海人は面白いぞ?自信持っていいレベルでの」
「誉めてないだろ」
「もちろんじゃ」
「だろうな」
紅と軽口を叩きながらも帰路につく。
最近よく一緒に帰ってる気がするな~。
まあ楽しくないわけじゃないから全然いいんだけど。
「それより紅たちはカフェでどんな話をしてたんだ?だいぶ長い時間居たようだけど」
「なんじゃ?気になるんか?」
「・・・少しな」
「そこまで言うならしょうがないのう」
そこまで言った覚えはないんだが。
「実は・・・」
「実は?」
「海人がメイド服を着たら面白そうだな~という話をしていたのじゃ」
「何部員で無駄に通じ合ってんの!?」
そんなところで通じ合わなくてもいいから!
「まぁその話も少しだけしたが」
「本当にしたんだ・・・」
「だいたいは星のことじゃったぞ」
そりゃ天文部の二人がする話と言ったらそうなるだろう。
「それから・・・昔話かの」
「へ~、二人の昔話か。興味あるな」
「なら直接聞いてみればよかろう」
「機会があったらそうするよ。紅は?」
「妾は・・・」
顔を少し俯かせる紅。
なにか話ずらいことでもあるのだろうか。
「あっ、そろそろ家に着くの」
「いや、まだだよ!?俺たちの家と駅なんて学校はさんで反対側なんだからそんな早く着くはずないでしょ!てかお前の家知ってるんだから嘘つくないよね!?」
「つっこみが長い。30点じゃ。それから暑苦しいぞ」
「ひどくねっ!?」
もう色々とひどかった。
それからも普段の近況報告などを軽く交わし、家までの道をゆっくりと歩いていった。
「じゃあまたの」
「おう。また明日」
紅を家の前まで見送ってから背を向けて歩き出す。
時間はそろそろ8時になる。
運動部ではないのだが部員のキャラが濃いので相手をしてるととても疲れる。
ようは腹減ったから早く帰りたい。
俺は紅たちといたよりもスピードを上げて家に帰った。
こうして天文部の一日は今日も平和に終わった。
「めでたしめでたし」
「打ち切り臭出すな!」
こんにちはー。
今回のサブタイトルは思いつかなかったから前回のままでいいや~、とか考えて付けたとか思ってます?
その通りです。
あ~、書くことない。ないよー、どうしよー、やゆよー。
もう意味がわからなくなってきたので締めます。
今回も見てくださった皆様、本当にありがとうございました!