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真面目な顔つきで、星夏は言葉を継いだ。


「あきらかに傷ついてる最中の人を放っ ておくって、できないたちなんだ」


「傷ついてなんかない!」


「誤解してほしくないんだけど、哀れん でるわけじゃないよ、俺は」



……。同情、じゃない?


だったら、何だって言うの?



星夏の言葉の続きを、私は放課後に聞く ことになった。


昇降口前で話していたせいで、生活指導 の教師に、早く教室に行けと言われてし まって。


「じゃあ、放課後に、また話そ!」


星夏は、そうすることが当然のようにそ う言い、自分の教室に入っていった。隣 のクラスだったんだな。今まで全く知ら なかった。



――――放課後。待つ必要なんかない し、先に帰ってしまおうと思ったのに、 私は結局、校門前で星夏を待っていた。


帰りのホームルームが長引いているの か、星夏のクラスの生徒は、まだ帰路に ついていない。


星夏のことを置いて帰るのは、負けたみ たいな気がして、なんだかシャクだっ た。


アイツは、私に見えない何かを見ている 気がするから。


悔しくて、ちょっとだけなら話を聞いて やってもいいかという気になった。面倒 だし、ウザイけど。



「不機嫌さん、お待たせ! 先に帰られ たかと思ってた」


待つこと20分。やっと、星夏が来た。 悔しいけど、ちょっとホッとしてしま う。


「ホームルーム長引いてさ。ごめんね、 俺が約束したのに待たせて。ありがと う。不機嫌さん」


どちらかともなく歩き出す。私は、無表 情でボソッと言った。


「いい加減、その呼び方やめてよ」


「じゃあ、名前教えてくれる?」


「嫌だ」


「不機嫌さん、だね」


「くっ……」


私はしぶしぶ、学生手帳を渡した。最後 のページに、本名が書いてある。


それを見て、星夏はうっとりした顔に なった。


「可愛い! しらゆきちゃんって言う の!? うわぁ~。こういう名前のコ、 周りで初めてだぁ」


東白幸あずま・しらゆき。私の本名 だ。


雰囲気と合ってないって、よく言われ る。恥ずかしいよ、改名したい。それく らい、私にとって、この名前はコンプ レックスだった。


クラスの下僕達にも、下の名前で呼ぶな と命令してある。


「これからは、シラユキちゃんて呼 ぶ!」


「呼ぶな、やめろっ」


私の抵抗もむなしく、星夏は嬉しそうに 笑っている。これだから、この名前は嫌 いなんだ。私に似合わない。







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