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(1)

ママは、私にとってたった一人の、かけ がえのない家族だった。あの男が現れる までは……。


あの男と恋愛して、ママは変わってし まったんだ。食べ物の好みや、金遣い。 私への言動までも。


恋は人を変えてしまう。それも、悪い方 向に。ママを見て痛感した。


私は絶対に、男なんて愛さないと決め た。


この世に『無条件の愛』なんてあるわけ ない。



男は、女を抱きたがる。服従させたが る。支配したがる。勘違いもはなはだし い。劣等生物のクセに。


ママを愛した男もそうだった。


だから私は思った。男に利用されない女 になりたい。と。


鉄壁の鎧をまとい、誰にも触れさせない んだと。


男を、利用する側に回るのだ、と。



私の意思は強かった。誰にも利用されな い、むしろ利用してやる女になることが できたのだから。


ママがあの男と出会ったのは、私が中1 の時だったっけ。それから5年後。私は 見事に『上の人間』になっていた。


私の頼みを断る男はいない。


私を痛めつけようとする男もいない。


女子には嫌われた。一方的に憎まれたり して。


寂しくなんてない。ただ、孤独なだけ。


孤独な時間は、私を強くしてくれる。失 うものがない人生って、けっこう楽だ。


自分だけ嫌な思いをするのは嫌だから、 そうなる前に人を傷つける。楽しくはな いけど、時々快感。


友達もなく、頼れる親もなく。


いるのは『下僕』だけ。下僕は、私のご 機嫌を取り、ヘコヘコ頭を下げる。


こんな毎日も、悪くない。苦労せずに、 いい思いができる。まるで、『女王さ ま』だ。




学校帰り、下僕達と別れて私は帰路につ いた。


「おい! 待てよ!」


知らない男に腕を強く引かれたのは、こ の時が初めてだった。


同じ高校の男子。ネクタイの色を見る と、タメだと分かる。三年生。知らない ヤツだ。


「うぜー……」


ため息まじりにつぶやき、私はそいつの 腕を振り払った。


「お前のことは、よく知ってる」


男は、怒った顔で私をにらみ、言った。


「返してやれよ、アイツの彼氏」


は? 知り合いでもないのに馴れ馴れし いんだよ。


つーか、この男、何キレてんの? ウケ る。バカじゃね。


無視して、私は男の横を通りすぎた。関 わりたくないヤツとは、口をきかないの が一番だ。







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