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短編集

おっきなアメ

作者: 縁 笈留

 にんげんたちのいない世界の、にんげんたちのいない島。そこにある森の中でウサギとリスがなにやら会話をしているようです。


「ね、ね、リスくんリスくん」

「どうしたの? ウサギさん」

「きょう、ぼくは夢をみたんだ。おっきなおっきなアメがふる夢さ」

「おっきな雨?」

「そう、おっきな飴。まるい飴玉がたくさんたくさんふってくるんだ。それも色とりどりでね! あれはいつか本当にふるよ!」

「えぇっ、そんなの大変じゃない!」


 どうやらウサギとリスの会話はどこかちがっているようですね。もう少しよく聞いてみましょう。


「そうかい? まいにち飴が食べられるんだよ? あぁ、たしかにそんなことになったらぼくは嬉しすぎて大変なことになりそうだね」

「そうじゃないよっ。だって大きな雨玉がふってくるんでしょう? そんなものがあたったら痛そうだし……たくさんふってくるってことはボクの家とかきっと流されちゃうよ!」

「あぁ、よくかんがえればそうだね。でもぼくの夢だとそんなことは起きなかったなぁ、なんでだろう?」

「夢ってそういうものじゃないかな? それよりもボクはさっきの話が怖くて怖くて仕方がないよ。色とりどりの雨が振るなんて……」


 2人のかんちがいがどんどんとすすんでいくうちに、あたりは夕方になっていました。この森は夜になるとお腹をすかせたオオカミが出るのでとてもキケンです。


「あ、もうこんな時間なんだね。くらくなるまえに帰ろう。飴をたべるまえにオオカミに食べられちゃいそうだ」

「そうだね。ボクは雨なんて食べないけど、きっとオオカミさんは僕達を食べちゃうんだ。さっさとおうちに帰らないと!」


 すぐに家に帰ったのがよかったのか、2人がさきほどまでいたところにオオカミがやってきました。


「話し声が聞こえたからすぐにやってきたが、もういないのか……ふむふむ、しかしおっきなアメか……ヒヒヒッ、これは使えるぞ!」


 しかもオオカミはさきほどの話を聞いていたようです。それになにやらわるいことを考えているようで、とてもブキミな顔をしています。


 次の日の朝、ウサギの家のまえでオオカミがさけびました。


「おっきなアメが降ってきたぞぉ!」


 ウサギは夢がかなったと思い、あわてながら家をとびだしました。

 しかしアメが降っているわけもなく、どこでふっているのだろう?と上をしきりに見ているウサギを、オオカミはペロリとたいらげてしまいました。


 そしてオオカミはリスの家のまえでさけびます。


「おっきなアメが降ってきたぞぉ!」


 リスはあの話が実現したんだと思い、びっくりぎょうてん。ブルブルと怯えながら家のなかにこもっています。

 そのようすにオオカミは頭にハテナを浮かべます。そしてきっと聞こえなかったのだろうと思い直し、もう一度さけびます。


「おっきなアメがたくさん降ってきたぞぉ!」


 しかし、まだまだリスは家からでてきません。しびれをきらしたオオカミは家を吹きとばそうとたいあたりをしはじめました。


「うぅ……おっきな雨に家が流されかけてるんだ……でも大丈夫。きのうウサギさんの話をきいてボクの家を大改造したんだ! 今ならオオカミがぶつかってきてもたえられるぞ!」


 なんどたいあたりをしても動きもしない、がんじょうなリスの家にオオカミはつかれはててしまいました。



 夢と現実をいっしょにすることはよくないことですが、ヒトの話をマジメに聞く。そのようなことをしていれば、リスのようにどこかでむくわれるはずです。みなさんも相手にせいいをもってなにかをおこないましょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 優しい話でいいと思いました。 これからも執筆活動頑張ってください。
2013/04/03 20:53 退会済み
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