プロローグ
一人の部屋に響く、機械音。
今月シングルチャート1位の、人気歌手の曲。一週間前から公開されている、映画のイメージソングにもなった。
私はサビのメロディが鳴り終わる前に携帯を手に取って、電話に出た。
聞こえるのは、私の大好きな人の声。1年前から付き合合ってる彼氏。河上恭介(恭ちゃん)。
「恭ちゃん久しぶりー!!」
いつも、電話掛けてきてくれたときは、
「おぅ」
って言って、私のテンションにちょっと笑う。
でも、この日の彼の声はいつもとは違っていた。
どこか悲しそうで、声のトーンは低かった。
先週かららレポートが終わらないって言って、ずっと連絡ができなかったから、久しぶりに聞く恭ちゃんの声、私は嬉しかったのに。
(5日前に会った時も
「今日から寝れない」
とか言ってたし…疲れてるのかな〜…)
そう私は勝手に解釈して、一人でいろんな事を話し続けていた。
(5日も話してなかったから、話す事がたくさんあったんだもん。5日間は長いよぉ〜。めッちゃ寂しかったんだから…。)
「日曜どっか行こうよッ!!久しぶりに恭ちゃんの車乗りたいな〜」
「弥奈が前、行きたいって言ってたとこ?」
「そお〜!覚えてるッ?!」
「―――…どこだっけ?」
「え゛ッ?!ウソ、恭ちゃんひどッ」
私は、座っていたベットを叩く。
「うそ。覚えてるし」
そうやっていっつもイジワル言う恭ちゃんが好き。
「恭ちゃん大好きィ〜」
私はいつも通り、彼に甘えた。恭ちゃんは彼氏だけど、お兄ちゃん的存在でもある。