旅の記憶
三題噺もどき―はっぴゃくよんじゅういち。
画面の中では、キラキラとした世界で、楽しげに遊ぶ様子が流れている。
有名な遊園地で、アトラクションに乗ったり、ポップコーンを食べたり。
大きな城を背景に、花火が打ちあがっている。
「……」
スマホの、小さな画面の中でのことなのに。
どうしてこういうのは、目が惹かれるんだろう。
羨ましいとかそういうのではなく、単に目が止まる。手が止まる。
「……」
暗い部屋の中で、布団にもぐってスマホをいじっていた。
時刻は見ていない、何時だろうか。
「……」
テスト期間中なので、いつもより少しだけ早い時間に帰宅して。
いつも通り風呂と夕食を済ませて。
それが終わる頃にはもういい時間になっていたから、さっさと布団に入った。
「……」
ホントは勉強をした方がいいんだろうけど、学校でしてから帰ってきているのでまぁ、いいだろう。それに明日はテスト最終日だが、メインの5教科はもうほとんど終わっているようなモノなので……国語があるが、テストの前の時間に自習が入っていたのでそこでまた見直せばいい。
「……」
まぁ、それならそれで。
さっさと寝てしまえと言う感じだが。
こういう時に限って眠気は襲ってこないのだ。テスト中はいくらでも眠れそうなくらいに睡魔が襲ってくるのに。
「……」
画面をスクロールすると、次はりんごが画面に映った。
何だろうと思えば、ただ果物の皮をむいて、スイーツを作っている所だったようだ。
こういうのも、見ていて飽きがこないというか、ずっと見ていられるような気がする。
「……」
さっきまで見ていたキラキラとしたものも手は止まるし、眼は惹かれるが、見続けられるかと言われると、そうでもない……気がする。
あの子が映っていればそれはまた別の話だが。
「……」
去年行った修学旅行の話だが。
その時はあまり写真を撮る気になれずに、カメラは鍵付きのロッカーに置いていくと言う写真部らしからぬことをしていたからな……重いんだ一眼レフって。
だから、あの時の写真というのはあまり残っていない。お互いスマホで自撮りするようなタイプでもない。他に人が居ればそうしたかもしれないが、2人で居たのでまぁ、しないよなと言う……。
「……」
あの子は、パッと見るとそういう―偏見で申し訳ないが―自撮りをしていそうな、SNSに写真をあげて承認欲求を満たしたがるような、あのきゃぴきゃぴした、私の苦手なタイプの人種に見える。多分、何も知らない人が見たら、そう思う。
「……」
けどまぁ、そんなことはなく。
確かに周りに合わせて、そういう事をすることもなくはないらしいが。
ほぼ真逆というか、自分を撮るのはあまり好きじゃないらしいし、SNSもしてはいるけど、写真をあげるようなことはしないし……私にゲームや二次創作というモノを教えてきたのはあの子だし。まぁ、そういう事だ。
「……」
アトラクションにも乗らずに、ひたすら歩いていた。
途中で買ったキャラメル味のポップコーンをもって、ウィンドウショッピングと言えば聞こえはいいけど、人が多めの散歩って感じ。
まぁ、目的のお土産とかは買ったけれど、それ以外はほんとに。歩いたり座ったり。
「……」
修学旅行そのものは、あまり乗り気ではなかったのだけど。
あの遊園地での一日は楽しかったし、いい思い出だといつでも言える。
やっぱり、何か残しておけばよかったなぁと少し、思わなくもない。
まぁ、お揃いで買ったニット帽はあるから良いか。
「……」
更にスクロールすれば、何か今度する映画の広告が流れてきた。
ホラーだそうだ。この時期にと思ったが、ホラーはいつでもしているイメージがなくもない。夏が多いだろうけど、もう今のご時世いつでも夏みたいなものである。
田舎……と言うと田舎の人に怒られそうだが、田舎なので。映画館に行くのも一苦労なのだ。だからホントに見たいものしか見に行かない、しそもそも行けない。
「……」
電車でそこに行くにもお金と時間が掛かる。
映画を見に行くためだけにそのお金と時間を捻出できるほど、私はお小遣いというものは貰ってないし、アウトドアではない。
「……」
でも。
そうだな。
今年は、そういうのを、してもいいかもしれない。
「……」
せっかく最後の高校生活で。
あの子と会えるのは、今年が最後かもしれないから。
お題:りんご・キャラメル・遊園地




