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※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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PART.7  真っ黒のアンサーシート


運命の中間テスト当日。 教室内には、独特のひりついた緊張感が漂っていた。 試験監督の田辺――先日、美香に「動く性犯罪予備軍」とまで罵られた数学教師が、厚い問題用紙の束を持って教壇に立つ。


「……いいか、一問一答が将来を決めると思え。では、始め!」


チャイムと共に、一斉に紙をめくる音が響く。 俺、黒峰誠也は深呼吸をして問題用紙に目を落とした。


(……よし、まずは数学だ。ここで躓くわけにはいかない。神崎との勝負も、俺の精神も、すべてはこの一枚に――)


だが、大問一の放物線を見た瞬間。俺の脳内に、昨日まで散々浴びせられた「あの女の声」が、4K画質のサラウンド音響で再生された。


『いい? 誠也。この関数のグラフを、女の足の曲線に見立てて解説してあげるわ……ほら、ここから急激にイッちゃうのよ、yの値が』


「(……っ!?)」


ペンを握る手が激しく震える。 違う、これは二次関数だ。座標平面上の点だ。エロゲーのCGじゃない。 落ち着け。計算しろ。解の公式だ。 だが、解こうとすればするほど、美香が書き込んだ「ガーターベルトの締め付け」だの「絶対領域」だのといった最悪な比喩表現メタファーが、公式と複雑に絡み合って脳内を埋め尽くしていく。


(……クソが! 集中できねえ! あいつの声が……美香の声が邪魔すぎる!)


ふと斜め前に座る神崎勇清に目をやると、あいつはあいつで、何やら虚空を仰ぎながら「美香様……神話……」とブツブツ呟き、ペンが完全に止まっていた。あいつはあいつで、別の意味で詰んでいるらしい。


続く二時限目、国語(古文)。 ここでも美香の呪いが俺を襲う。


『この「をかし」っていう表現……現代風に言えば「マジ最高、イキそう」って意味よ』


(出るな! 訳す時にその言葉しか浮かばなくなるだろうが!)


「……黒峰。顔が赤いぞ。体調でも悪いのか?」


試験監督の先生が、不審そうに俺の顔を覗き込んできた。 俺は「いえ、大丈夫です」と震える声で答え、必死に解答欄を埋める。 「平安時代の連中はセッ〇スのことしか考えていなかった」という美香の偏見に満ちた解説のおかげで、なぜか複雑な男女の贈答歌(和歌)の「裏の意味」がスルスルと解けてしまうのが、何より腹立たしかった。


――そして、一日目が終わり。 放課後の生徒会室。俺は魂が抜けたような顔で、ソファに沈み込んでいた。


「お疲れ様、誠也。……その死んだ魚のような目、いつにも増して知能が低そうで素敵よ」


美香が、いつもの「清楚モード」を脱ぎ捨てて部屋に入ってくる。 手には、どこから入手したのか解答速報を持っていた。


「ねえ、さっきの古文の第三問。ちゃんと私の教えた通り、『絶頂』のニュアンスを含めて訳したでしょうね?」


「……そんな訳で点が出るか! 『趣がある』って書いたよ! お前の声が脳内でうるさすぎて、回答欄に『絶頂』って書きそうになったのを必死に堪えたんだぞ!」


「あら、残念。……でも、手応えはあったんでしょ? あんたのその、普段は20点しか入っていない空っぽの頭に、私の特製インク(知識)をたっぷり流し込んであげたんだから」


「言い方が卑猥なんだよ! ……まあ、その。……お前のおかげで、空欄はなかったけどな」


俺が不本意ながらも礼を言うと、美香は一瞬、意外そうに目を見開いた。 そして、すぐにニヤリと邪悪な、けれどどこか嬉しそうな笑みを浮かべる。


「ふん。礼なら神崎の点数が出てからにしなさい。……さて、明日は残りの教科ね。理科の生殖、まだ『実技指導』が足りないんじゃないかしら?」


「理科は55点あるって言ってんだろ! 帰らせろ!」


俺たちの背後で、廊下を歩く氷室会長の足音が聞こえた。 美香が瞬時に「聖女」に戻り、俺が「不憫な彼氏」を演じる。


嘘と毒舌にまみれた中間テスト。 その結果が、俺たちの「ニセカップル生活」をさらに加速させることになるとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。

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