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※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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PART.4

「ーー待て。待てと言っているんだ、黒峰誠也ッ!」


翌日の昼休み。中庭へ向かおうとする俺の前に、まばゆいばかりの金髪が立ちふさがった。 生徒会会計、神崎勇清。 県内屈指の進学校において、校則の限界を攻めたヘアスタイルと、無駄に整った顔面を持つ男。そして、白雪美香という名の「ファンクラブ」を信仰する狂信者である。


「……なんだよ、神崎。今は昼飯の時間だ。俺の空腹は、お前の無駄に輝く金髪で満たされるほど安上がりじゃないんだ」


「黙れ! 貴様、昨日……生徒会室で美香様と二人きり、何をしていた! 会長から聞いたぞ、なにやら『卑猥な比喩表現』を用いて数学を教えてもらっていたそうじゃないか!」


「……」


氷室会長。あの人、やっぱり面白がって言いふらしたのだろうか。あ、終わった。これ、どうにかしないと社会的地位を失うやつだ。俺は全力で言い返す言葉を考えた。


「卑猥じゃない。あれは、その……独自の暗記法だ」


全力で考えた割には、あまり効果のない発言だと、自分自身でも感じた。


「嘘をつけ! 美香様のような清らかなお方が、そんな不潔な言葉を口にするはずがない! 貴様だろ、黒峰! 貴様がその卑しい性欲を隠しきれず、美香様に不適切な単語を強要したんだろう! 謝れ! 今すぐ全校生徒の前で『私は歩く公然わいせつ物です』と叫びながら土下座しろ!」


「冤罪のレベルが飛躍しすぎてて怖えよ! そもそも、俺がそんなこと言えるわけないだろ、相手はあの白雪さんだぞ。大体……」


その時だった。


「……あら、神崎くん。誠也くんをあんまりいじめないであげてください」


背後から、鈴の音のような、それでいて背筋が凍るような美しい声が響いた。 いつの間にか現れた美香が、困ったような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべて神崎を見つめている。


「美、美香様ッ! 申し訳ありません、このような不浄な男を排除しようとつい熱くなってしまい……!」


「うふふ、神崎くんの熱心さは嬉しいですけれど……。でも、誠也くんは私の大切な『彼氏』ですから」


美香が俺の腕にそっとしがみつく。 神崎の顔が、嫉妬と絶望で、まるでこの世の終わりを見たような表情に歪んだ。 ……が、俺の耳元には、0.1デシベルの「猛毒」が届く。


(……ねえ誠也。この金髪のバカ、さっきから私のこと『清らか』なんて言ってるわよ。笑わせないで。私の脳内メーカー、今あんたをどうやって社会的に抹殺するかという『殺意』と、昨日の夜に見た〇Vの『構成案のダメ出し』だけで埋まってるっていうのに。……ねえ、このバカを今すぐこの中庭の噴水に沈めて、金メッキを剥いできていいかしら?)


(やめろ。あと〇Vのダメ出しをするな。お前は何を目指してるんだよ)

俺は腹話術で返しつつ、神崎の方を向く。


「神崎、わかっただろ。白雪さんは怒ってない。だから――」


「いや、認めん! 断じて認めんぞ! 黒峰、貴様に決闘を申し込む!」


神崎がバッと指を突きつけてきた。


「再来週の中間テスト……五教科の順位で、俺が貴様に勝ったら、今すぐ美香様と別れてもらう!」


「……は?」


「逆に、もし俺が負けたら……そうだな。生徒会会計の権限を使い、貴様が広報活動で使う経費を、倍にしてやろう!」


「公私混同な気がするんだが! しかも勝った報酬が賄賂かよ!」


金髪の狂信者・神崎が突きつけた条件は、さらなる無理難題だった。 俺、黒峰誠也の前回の合計点は……286点。平均すれば57点そこそこだが、その内訳はひどいものだ。


「……五教科合計? 神崎、お前、俺の前回の社会の点数(95点)を知ってて言ってるのか?」


俺はできるだけの言い返しをしてみた。正直、こいつには勝てる気がしない。少しでも戦意喪失してくれれば嬉しいが……

しかし、それは反って逆効果だったかもしれない。


「フン、暗記だけの科目がどうした! 美香様を支える男なら、論理的思考 (数学)も、感性 (国語)も、グローバルな視点(英語)もすべて完璧であるべきだ! 数学20点、国語45点などという、脳の一部が壊死しているような男に、美香様の隣に立つ資格はないッ!」


「いやなんでお前が俺の点数知ってるんだよ!? ストーカーか?」


俺が呆れていると、美香が俺の腕をギュッとつねった。 「清楚な微笑み」を顔面に張り付けたまま、彼女は俺にだけ聞こえる声で囁く。


(……ねえ誠也。この金髪、言わせておけば『脳が壊死』なんて、私の専売特許みたいな暴言を吐いてるわよ。殺していい? 今すぐこいつの頸動脈をこのシャーペンで突き刺して、綺麗な赤い噴水を作ってあげましょうか?)


(……やめろ。それと、俺の成績が壊死レベルなのは否定できないから、余計に刺さるんだよ)


(……受けなさいよ、誠也。このバカ、頭の中がハッピーセット以下の知能しかないくせに、実家が太くて予算だけは持って。経費が倍になれば、私の私物――ええ、エロゲーの限定版とか、最新のバイ――じゃなくて、マッサージ機とか、全部『広報用資料』として落とせるじゃない)


(絶対にお前の私利私欲だろ! てかマッサージ機って言い直したよな今!?ていうか、普通に別れるの全然アリなんですけど!!!別れるから受けなくていいって言ってやろうか?)

(私と別れようとするなんていい度胸ね。いいから、受けなさい。最終通告よ。もし勝負を破棄する…または負けたら……あんたのその貧相なモノを、学校のHPに『不審物』として掲載してあげるから)


(……お前、自分のカレシ(偽)に何の恨みがあるんだよ!)


逃げ道は、最初から断たれていた。


「……わかったよ。その勝負、受けてやる。五教科の点数で勝負だ」


「よし! 言ったな、黒峰! 覚悟しておけ! 美香様、見ていてください! 俺がこの男の化けの皮を剥いでみせます!」


神崎は満足そうに、高笑いと共に去っていった。 嵐が去り、再び二人きりになった中庭で、美香は大きくため息をつく。


「……あー、マジで疲れる。あのバカ、視界に入るだけで脳細胞が死滅するわ。ねえ誠也、さっきの決闘。絶対勝ちにいかないと承知しないわよ。あ、追加で罰下すわ。負けたら、あんたを私の家の庭にある犬小屋に監禁して、24時間ぶっ通しで『私の悪口をラップにして歌う刑』に処すから」


「罰ゲームのセンスが独特すぎて逆に怖いんだよ! ……ああ、もう、胃が痛い。なんで俺が、お前のためにこんな苦労しなきゃいけないんだ……」


「愛ゆえ、かしら?」


「お前の口から出る『愛』が、呪いの言葉にしか聞こえないのはなぜだろうな」


中間テストまで、あと13日。 俺の敵は、数学の公式と、金髪の狂信者ーーそして、隣でクスクスと笑う「清楚な皮を被った魔王」だった。

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