表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/30

PART.26

「……おい美香、これ流石に縛るのキツすぎだろ。血が止まって足先が紫色になってきたんだが」


「黙りなさい。あんたみたいな逃げ癖のあるドブネズミは、これくらいガッチリ繋いでおかないと、私の美脚の魔力に当てられて失禁して逃げ出すでしょう? 安心なさい、もし足が腐り落ちたら、私が一生車椅子を押して『介護 (飼育)』してあげるから」


「介護じゃなくて飼育って言ったぞ今! そもそも何だよ、この密着度は!」


二人三脚の練習という名目だが、美香はわざと俺の脇腹に自分の体をこれでもかと押し付けてきている。体操服越しに伝わる体温と、柔らかい感触。そして、彼女が動くたびに漂う、甘くもどこか刺すような香水の匂い。


「何よ、さっきから心臓の音がうるさいわね。……誠也、あんたのその卑しい心臓、私の二の腕に当たってピクピクしてるわよ。……ねえ、もしかして私との密着で、あんたの『股間の聖火台』に火が灯っちゃったのかしら?」


「灯るかバカ! 緊張と恐怖だよ! そもそも『聖火台』とか言うな、体育祭をエロい文脈に引きずり込むんじゃない!」


「うふふ、いいじゃない。これぞ青春の汗と脂、そして隠しきれない性欲の祭典よ。ほら、ちゃんと私の腰を抱きなさい。……もっと深くよ。あんたのその震える指先が、私のウエストの曲線に絶望を感じるくらいにね」


美香は俺の腕を強引に引き寄せ、自分の腰に回させた。 周囲の男子生徒たちからは「黒峰死ね」「代われ」「いや、あいつのあの死にそうな顔、相当な責め苦に遭ってるぞ」と、嫉妬と哀れみが混ざった視線が突き刺さる。


「(……ねえ誠也。この状態で走るのよ。もし歩幅が合わなくて転んだら、あんたをクッションにして、私は優雅にその上に着地してあげる。……あんたの顔面に、私の『聖なるヒップ』をダイレクト・アタックさせてあげるから、光栄に思いなさい)」


「(……それはご褒美じゃなくて、ただの圧殺刑だろ! 真面目に走れよ!)」


「いっちに! いっちに!」と、美香は外向きには爽やかな掛け声を出しながら、俺の耳元では「(あんた、今鼻の下伸びてるわよ。私の汗を直接吸い込める距離にいて、興奮して脳漿が漏れ出してるんじゃない?)」と地獄のASMRを叩き込んでくる。


その時だ。グラウンドのフェンス越しに、冷ややかな視線を感じた。 見れば、そこには他校の制服を着た沙耶香が立っていた。彼女は、親密そうに密着して走る(引きずられる)俺たちを、ゴミを見るような、あるいは救いようのないものを見るような、形容しがたい表情で見つめていた。


「(……沙耶香……)」


俺の動きが微かに鈍った瞬間、美香が鋭く俺の脇腹を抓った。


「――っつ!!」


「よそ見厳禁よ、誠也。あんたが見ていいのは、ゴール地点と、私の『聖女の仮面』の裏側だけよ。……あの子、まだうろちょろしてるのね。いいわ、だったらもっと見せつけてあげましょう。……ほら、次のターンで、わざとよろけて私を押し倒しなさい。……『事故』を装って、グラウンドのど真ん中で私とパフパフする特権をあげてもよくてよ?」


「するわけねえだろ!! 事故じゃなくて事件だよそれは!!」


俺の絶叫は、体育祭の予行練習の喧騒にかき消された。 右足の束縛、身体的な密着、そして精神的な凌辱。 文字通り「美香に縛られた」俺の体育祭。ゴールの先にあるのは勝利か、それとも俺の社会的な死か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ