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※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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PART.21  純白の鎖と、屋上の断頭台(フェイクカップル)

誠也が転校してきて一ヶ月。 学園内での私の「聖女」としての地位は不動のものとなっていた。そして同時に、誠也の立場も、私の手によって完璧にコントロールされていた。 「白雪さんの幼馴染」という、光栄かつ、他の女子が近寄ることすら許されない特殊な檻。


誠也は必死に抗っていたわね。 わざと仲の良くないガラの悪い連中とつるもうとしたり、私を無視して帰ろうとしたり。でも、そのすべてが、私の「悲しげな伏せ目」一つで無に帰した。


「黒峰くん、白雪さんを困らせるなよ」――正義感に燃えるバカなクラスメイトたちが、勝手に誠也を追い詰めてくれる。


(……準備は整ったわ。さあ、誠也。あんたの人生の『主権』を、私に譲渡してもらいましょうか)


私は朝一番に、あいつの靴箱へ一通の手紙を忍ばせた。 封筒は淡いサクラ色。丁寧に綴じられたシール。どこから見ても「恋する乙女のラブレター」そのもの。 けれど、中身は違う。


『今日の放課後、屋上で待っています。来なかったら、あんたが広島の私立を「一身上の都合」で辞めることになった本当の理由……私がデマを交えて全校放送で流してあげる』


広島での誠也の事情なんて、実は大して調べていない。でも、あいつは「私ならやりかねない」と知っている。その恐怖心こそが、私にとっての最強のリードだった。


放課後。茜色の空が広がる屋上。 重い鉄扉を開けて、誠也が姿を現した。あいつの顔は、死刑台に向かう罪人のように真っ青だったわ。


「……何の真似だよ、美香。あんな手紙、誰かに見られたらどうするんだ」


「あら、見られた方が都合がいいのよ。……誠也、あんた、まだ分かってないのね。今の私が、この学校でどれだけの『権力』を持っているか」


私はフェンスに背を預け、ゆっくりとあいつに歩み寄った。 聖女の仮面は、もう半分剥がれている。 あいつの前でだけ、私は「狂犬」の牙を、もっと鋭く、美しく研ぎ澄ませた状態で披露できる。


「いい? 誠也。今、階段の下には『白雪さんの告白を阻止しようとする親衛隊』と、『白雪さんの恋路を見守る放送部』が潜んでるわ」


「……はぁ!? お前、わざと広めたのかよ!」


「当然でしょ。あんたに『拒否権』を与えないためにね」


私は誠也の胸元に指を這わせ、その心音を感じ取った。激しく、不規則に打つ鼓動。ああ、心地いい。私の存在があんたの生命を脅かしているという、この感覚。


「条件は一つ。今日この瞬間から、あんたは私の『恋人』になりなさい。……もちろん、フェイクよ。あんたみたいな不憫な男、本気で愛するわけないじゃない」


「……っ、ふざけんな! 何のためにそんな……」


「盾よ、盾。……私が『完璧な聖女』で居続けるためには、近づきすぎる男たちを追い払う『公式の番犬』が必要なの。あんたは、全男子の嫉妬を一身に受け、私に徹底的に搾取されるためだけに、ここに呼ばれたのよ。それに、私だってストレスが溜まってるわよ。私の下ネタに付き合ってもらう相手が一人は欲しいのよ。」


私は誠也の顎をクイと持ち上げ、その曇った瞳を覗き込んだ。


「嫌なら、今すぐこの扉を開けて叫べばいいわ。『白雪美香は暴力女で、俺を脅してるんだ!』って。……でも、誰が信じるかしらね? 涙を浮かべた私と、焦ったあんた。……明日には、あんたは『白雪さんを辱めようとした卑劣漢』として、この街から社会的地位を失うことになるわよ」


誠也は絶望に顔を歪めた。 その歪みが、私の胸を焦がすほど熱くさせる。 小学校の頃、あいつが私を「普通」に扱ってくれたことへの復讐。 そして、私を一人にして広島へ行ったことへの、甘美な報復。


「(……さあ、選びなさい。私の隣で、一生私の毒に悶える『嘘の彼氏』になるか。……それとも、今ここで社会的に死ぬか)」


私は誠也の耳元で、甘く、呪いのような声を囁いた。


誠也は長く、震える吐息を漏らした。 そして、諦めたように目を閉じ……。


「……お前の勝ちだよ、悪魔。……なってやるよ、その、偽物のカレシとやらに」


「――正解。よくできました、管理人さん」


私は満足げに微笑むと、誠也の首に腕を回し、わざと外から見えるような角度で、あいつの肩に顔を埋めた。 瞬間、階段の方から「……嘘だろ」「黒峰、あいつ……!」という、絶望と驚愕のどよめきが聞こえてきた。


(……聞こえる? 誠也。これが、あんたがこれから一生背負う『呪い』の足音よ)


あいつは私の背中で、震える手で私を押し返そうとしたけれど、私はそれを許さなかった。 もっと強く、もっと深く、あいつの記憶に私の毒を刻み込む。


これが、私たちの「契約成立」の全貌。 恋なんて呼べるような、綺麗なものじゃない。 私があいつを独占し、あいつの自由を奪い、死ぬまで私だけを見続けさせるための、純白の鎖。

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