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※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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PART.20

再会した誠也は、私が作り上げた「聖女・白雪美香」を前にして、まるで宇宙人でも見るような目で私を見ていた。


休み時間、クラスの連中が私の周りに壁を作り、私の一挙手一投足を崇めるように見つめる。その輪の外側で、誠也は一人、引き攣った笑いを浮かべていた。


「(……おい。あれ、本当に美香かよ……。中身入れ替わってんのか?)」


あいつの心の声が聞こえてくるようで、私は内心、笑いが止まらなかった。 でも、私は完璧な「聖女」を演じ続ける。 丁寧な言葉遣い、控えめな仕草、誰に対しても向けられる無機質な優しさ。 あいつが知っている「狂犬・美香」を徹底的に否定することが、今の私には必要だった。


放課後。 私は、誠也が一人で帰るタイミングを完璧に計算して、昇降口で待ち伏せした。


「黒峰くん、少しお話しできるかしら?」


周囲に他の生徒がいる中、私は最大限に可憐な微笑みを見せた。 誠也は露骨に嫌そうな顔をしたが、周りの男子たちの「お前、白雪さんに話しかけられて何その態度は!」という無言の圧力に負け、渋々私についてきた。


人気のない校舎の裏。 あの日、雪の中で「聖女」になると決めた場所とよく似た、冷たい空気が流れる場所。


「……で、何の用だよ。白雪『さん』」


誠也が、皮肉たっぷりに私の名字を呼んだ。 その瞬間、私の仮面の下で、封印していた「毒」がドクンと跳ねた。


「ふふ、そんなに他人行儀に呼ばないで。私たちは、幼馴染でしょう?」


「……嘘をつけ。お前、さっきの教室でのアレ、何なんだよ。あんなの、俺の知ってる美香じゃねえ。……気持ち悪りぃんだよ、その、一点の曇りもないみたいな顔」


「気持ち悪い?」


私は一歩、誠也に歩み寄った。 あいつは反射的に後退りする。あいつの脳裏には、小学校時代、私に追い回された記憶が刻まれている。


「酷いわね。私はあんたの助言通り、外面を良くしただけよ。……ねえ、誠也。あんた、広島で何をしてたの? どんな女の子と仲良くしてた? 勉強は? ……私のいない二年間、あんたは何を食べて、誰に毒を吐いて生きてきたの?」


畳みかける私の問いに、誠也は顔をしかめた。


「……別に普通だよ。普通に友達作って、普通に生活してた。お前みたいに、変な鎧を纏う必要もなかったしな」


「普通、ね。……ふん、つまらない答え」


私は、誠也の胸ぐら……ではなく、制服の襟元を優雅に整えるフリをして、その耳元に顔を寄せた。


「(……ねえ、誠也。あんたがどんな『普通』を過ごしてきたか知らないけれど、これからは違うわよ。あんたは、この学園の誰もが憧れる『聖女・白雪美香』の、唯一の汚れパートナーになってもらうんだから)」


「(……は? 何言って――)」


「(いい? 今の私は、この学校の秩序そのもの。もしあんたが、私の『過去』を不用意に喋ったり、私の平穏を乱そうとしたら……。……全校生徒を敵に回して、あんたの人生を、ドブ川より不潔に塗り替えてあげる。……分かったかしら、せ・い・や・さん?)」


美しく、澄んだ声で、けれどドブ川の底より冷たい殺気を込めて囁く。 誠也は目を見開き、喉を鳴らした。


「……っ、お前……中身は1ミリも変わってねえな、このクソ美香」


「うふふ、最高の褒め言葉。……さあ、帰りましょうか。みんなが、仲良しな私たちを見て微笑ましがってるわよ」


私は再び、完璧な「聖女」の微笑を顔に貼り付け、誠也の腕を軽く取った。 あいつの体が強張るのが伝わってくる。 その抵抗こそが、その怯えこそが、私にとっての最高の蜜だった。


あいつが転校してきてから一週間。 私は周到に準備を進めた。 誠也を孤立させ、彼が他の女子と親しくなる芽をすべて摘み、一方で私は「昔から彼だけを想い続けていた健気な幼馴染」という物語を周囲に流布した。


そして、例の「告白」の日がやってくる。 誠也の靴箱に、私が「手紙」を忍ばせた、あの日。


それは愛の告白なんて生温いものじゃない。 「私の共犯者になるか、それともこの学校で社会的死を迎えるか」という、究極の二択を迫る招待状だった。

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