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※閲覧注意 「幼馴染の定義」とはいったい何なのだろうか  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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PART.11

文化祭を目前に控え、俺の仕事は「広報」の枠を完全に超えていた。 美香の「清楚なイメージ」を盤石にするため、俺は連日、生徒会広報誌や新聞部と協力して校内掲示板に、吐き気のするような嘘の美談を書き連ねる必要があった。もちろん、新聞部の男子からはまるで家畜を見ているかのような目で見られたが、


【学校新聞・号外】 「白雪美香さん、クラスの劇で使う衣装を、夜遅くまで一人で繕う姿を目撃。指に針を刺しながらも、『みんなの笑顔が見たいから』と微笑む姿は、まさに現代の天使――」


「……誰だこれ書いたやつ。俺だよ、死にたくなってきた」


実際は、俺が隣で衣装を縫わされ、美香は「誠也、運針が遅いわよ。あんたの指、もしかして全部親指なの? 早くしないと、あんたの耳たぶをホッチキスで衣装に固定してあげるわよ」と罵声を飛ばしていただけだ。




「……鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番、美しいのはだあれ?」



放課後の体育館で、俺たちは劇の練習をしていた。劇は一年のクラスがやるため、一時は取り合いになるかと思ったが。難なく場所を確保できた。舞台上に立つ美香は、まさに「絶世の美女」だった。 クラスで用意した白雪姫のドレス(俺が徹夜で仕上げた)に身を包んだ彼女は、スポットライトを浴びて、神々しいまでの光を放っている。 クラスの男子たちは、口を開けて「美香様……」と、もはや宗教画を拝むような目で見つめていた。


「――はい、カット! 白雪さん、完璧だよ! 次は猟師との対峙シーンね。黒峰、入れ!」


担任の声に押され、俺は「獲物を仕留められない気弱な猟師」として舞台に上がる。


「あ、あの……姫様。王妃様の命令で、あなたを……」


台本通り、気弱にナイフを向ける。 だが、美香が俺の胸ぐらを掴んで引き寄せた瞬間。客席からは見えない角度で、彼女の瞳に「魔王の光」が宿った。


「(……ねえ誠也。あんたのそのナイフの持ち方、何? 豆腐でも切るつもり? そんな弱々しい殺気じゃ、私のこのドレスの資産価値に傷一つつけられないわ。もっとマシな演技をしなさいよ、この無能なプランクトンが)」


「(……注文が多すぎるんだよ! 俺は気弱な猟師役だろ!)」


「(いい? 猟師。あんたは私の美しさに圧倒されて、自分の存在自体が罪であると自覚して絶望するの。ほら、跪きなさい。私のこのハイヒールの先で、あんたの喉仏を優しく愛でてあげるから……)」


美香は台本を完全に無視して、俺の顎をクイと持ち上げた。 客席からは「白雪姫が猟師の命を乞うている、なんて慈悲深いシーンなんだ……!」と感動の溜息が漏れているが、実際は「獲物をいたぶる捕食者」の構図である。


「ああ……猟師さん。私の命を奪う前に、一つだけ教えて。……あなたのその醜い魂は、私の愛で、浄化されるかしら?」


「(……浄化される前に、お前の毒で腐りきってるよ!)」


俺が必死に「感動している猟師」の顔を作っていると、舞台袖から鋭い視線を感じた。 氷室会長だ。彼女は腕を組み、美香と俺の「濃厚すぎる(ように見える)」演技を、値踏みするようにじっと見つめていた。


稽古が終わり、俺は舞台袖でへたり込んでいた。 そこへ、着替えを終えた美香が、清楚な笑みを顔に貼り付けたままやってくる。


「お疲れ様、誠也。私の『慈悲』、全身で浴びた感想はどうかしら?」


「……お前、本番であのセリフ言ったら即刻中止だぞ。あと、会長がずっと見てた。絶対怪しまれてる」


「いいじゃない、怪しまれるくらい。それだけ私たちの『ニセモノの愛』が真に迫ってるってことよ」


美香はクスクスと笑いながら、俺の耳元で囁いた。


「明日は、生徒会の『お悩み相談』の予行演習よ。神崎が『美香様に叱られたい』っていう、救いようのない悩みを投稿してきたみたいだから……あんたが広報として、どう『調理』するか楽しみにしてるわ。……もし失敗したら、あんたのそのパステル、今度こそ本物のインクで真っ黒に染めてあげる」


「だから例えが最悪なんだよ!!」


文化祭当日まで、あと三日。 美香の「清楚」という名の虚像は、俺の精神を犠牲にしながら、さらに巨大に膨れ上がっていった。

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