甘い幸せ 〜リナの手作りお菓子〜
数日後の昼下がり。
畑の片隅に、にわかに人だかりができていた。
「ほらほら、順番に並んでくださーい!」
そう声を張り上げているのはリナだった。
小さな木のテーブルの上には、きれいに並べられた小さなクッキーやパイ。
素朴だけど、ふんわりとした甘い香りが風に乗って村中に広がっている。
「おお、こりゃうめぇな!」
「リナちゃん、これどうやって作ったんだい?」
「こんな甘いもん、久しぶりに食べたわぁ……」
魔法があった頃は、甘いお菓子なんて簡単に作れた。
火を起こすのも、材料を混ぜるのも、焼き加減を調整するのも全部魔法任せ。
でも今は、リナが何度も失敗して、火加減を覚え、材料を自分の手でこねて焼き上げた、
手間と愛情だけが詰まった小さな幸せだ。
「リナちゃん、もう残ってないの?」
「ご、ごめんなさい、これで終わりなんです……! また作りますから……!」
テーブルの横では、カイルが腕組みをして得意げに頷いている。
「な? おれの発明よりリナのクッキーの方が村を救うって言っただろ?」
「カイル……それ、褒めてるの……?」
「もちろんだ! おれの自慢の相棒だ!」
言いながら、カイルはリナの手を取って、
こっそり自分のポケットにしまってあったクッキーを差し出した。
「ほら。お前もちゃんと味見しとけ。お前のクッキー、世界一うまいから。」
「……っ……バカ……」
リナの耳は真っ赤だ。
でも、その頬には、ほんのりと甘い笑顔が咲いていた。
甘い香りが村に満ちて数日後。
お菓子が評判になるのを見て、カイルの頭の中に、あの危険な電球がまたピカッと灯ってしまった。
「……よし! これだ……リナのクッキーを自動で大量生産できれば……!
村人の腹も、リナの腕も、両方救える!!」
そうして、あっという間に「自動クッキー製造機」の設計図が完成した。
今回のカイルは違う。
火は使わない! 爆発もなし! 回転軸と滑車を使い、手動式!
安全第一のはずだった……はずだったのだが。
——翌日、村の広場。
「……これが、『カイル式自動クッキー製造機』だ!!」
ドドンッと披露されたのは、樽を改造した奇妙な箱。
ハンドルを回すと、中で生地がこねられ、ローラーを通って型抜きされ、
最後に炭火でじっくり焼かれて外にポトポト落ちてくる仕組みだ。
「すごい! これならリナちゃんの手が楽になるじゃないか!」
「カイル、今回は失敗しないだろうな……?」
村人たちは半信半疑。
その横でリナは手を合わせて小さく祈っていた。
「お願い……今度こそ爆発しないで……!」
意気揚々とカイルがハンドルを回し始める。
ゴリゴリ……ゴリゴリ……ゴリゴリ……
「おお……生地が混ざってる……! 型に流れて……!」
パチパチ……じゅわ〜〜
「……できた!? 焼けてる!? 落ちてきた……!」
村人たちの目の前に、ほかほかのクッキーがぽとり。
誰かがそっと口に入れる。
「……おお……ちゃんとクッキーだ!!」
「やった!! おれ天才!!!」
と、そこで——
ゴリゴリ……ギギギ……ギィィィ……
「カ、カイル……なんか音が……!」
「……へ?」
中でこねられ過ぎた生地が詰まり、型抜きローラーに生地がみっちり絡まり……
ボンッッ!!
熱でパンパンに膨れた炭火室がはじけ飛び、
白煙とクッキー生地が村の広場中に飛び散った。
「ぎゃあああああ!!」
「ああああ!! まただあああ!!」
村人たちは悲鳴を上げながら、頭からクッキー生地まみれ。
カイルは真っ白な煙の中で、四つん這いで泣いていた。
「……安全……第一……だったはず……だろ……」
その背中に、リナの冷たい視線が突き刺さる。
「カイル……あとで、ちょっと、話あるから……」
「……はい……」
——カイルの挑戦は、今日も懲りずに続いていく。
自動クッキー製造機の爆発(という名の大惨事)から数日後——
村の集会所には、真剣な顔の村人たちがずらりと並んでいた。
その中央に、しょんぼりと正座する発明家・カイル。
後ろで腕を組んだリナが、完全監視モードで睨んでいる。
「……というわけで……えー……カイル殿……」
村長が咳払いをひとつ。
「お前さんの発明で、この村……まあ、多少は……便利になりつつあるのは、認める。」
「……ほんとに?」
「……認める。」
カイルが小さくガッツポーズをしたのを、リナが即座に肘でつつく。
「だがな……!」
村長は人差し指をカイルの額に突きつけた。
「もう爆発するのは勘弁してくれぇええええええ!!」
「うわっ、近い近い! ごめんて!!」
村人たちが一斉に叫ぶ。
「火がつかない鍋とか!」
「家の煤を取る道具とか!」
「安全に井戸の水を汲むやつとか!」
「畑仕事がちょっとだけ楽になるやつとか!」
「要するに! 命が危なくないやつ!!」
皆の悲鳴に近いリクエストに、カイルは汗を垂らしながら、でもどこか目を輝かせた。
「……わ、わかった! わかった!!
つまり、火も爆発も回転も無しで……もっとシンプルで……確実に便利な道具だな!」
「おお! そうだそうだ!」
「頼むぞ……カイル殿……! 爆発は……もう……嫌なんじゃ……」
カイルは大きく頷き、立ち上がった。
「おれに任せとけ!!
おれはもう二度と村を粉々にしない発明家として生まれ変わる!!」
「……三度目くらいだけどね……」
リナがぼそっと突っ込んだが、誰も否定できなかった。
こうして、爆発しない『安全な便利道具』の開発計画が
カイルの頭と、村人たちの切なる願いを乗せて、しぶしぶスタートしたのだった——
村人たちからの「安全な発明を!」という涙ながらの嘆願を受けたカイルは、
数日間、小屋にこもりっきりになっていた。
「……火を使わずに、お湯を沸かす……火を使わずに……」
部屋の中には、試作図面が散乱し、奇妙な試作品が転がっている。
そして、カイルの横ではリナが腕を組んで見張り役。
「爆発は絶対ダメだからね?」
「わかってるって! 今回は爆発要素ゼロだから!」
カイルは机の上の金属筒をリナに見せつけた。
「見ろ! これが『カイル式火なし湯沸かし器』だ!!」
「……どういう仕組みなの?」
カイルは鼻を鳴らして得意げに説明を始めた。
「中に特殊な石を入れておいてな、ここに水を注ぐと石がゆっくり反応して熱を出すんだ!」
「……それ、また爆発しない?」
「するかーー!! するか!! 絶対にしない石だけ厳選した!!
石が反応しきったら取り替えるだけ! 安全無害! しかも煙も火も要らん!!」
「……ほ、本当に……?」
リナはおそるおそる試作品の蓋を開け、筒の中にそっと水を注いだ。
しばらくすると……
ジュワ……ゴボゴボ……ポコポコ……
筒の外側がほのかに温まり、注ぎ口から湯気が立ち上り始める。
「お……おおおお!!」
「沸いてる……沸いてる!!」
リナの瞳がきらきらと輝いた。
「カイル……すごいじゃない! 本当に火を使わないでお湯が……!」
「はっはっは! おれを誰だと思ってんだ! 爆発王の……いや、安全王のカイル様だぞ!」
思わずリナもくすりと笑った。
「これなら村の人も喜ぶね。朝のお茶も、お風呂も、ずっと楽になる……!」
「だろ! おれの頭脳は伊達じゃないんだぜ……!」
嬉しそうに胸を張るカイルを見て、リナはそっと頬を緩めた。
——こうして、村に新たな便利さと、ほんの少しの幸せが届いたのだった。
カイルが発明した『火を使わない湯沸かし器』は、
村長の家を皮切りに、試験的に数軒の家に置かれた。
「……ほ、ほんとに火を使わんでいいんか……?」
恐る恐る金属筒に水を注ぐ村人のおばあさん。
そばでリナがにこやかに声をかけた。
「大丈夫です、おばあちゃん。少ししたら温かくなりますから。」
おばあさんは半信半疑で湯沸かし器を見守る。
ジュワ……ゴボゴボ……ポコポコ……
やがて、注ぎ口からふわりと湯気が立ちのぼる。
「……あっ……あったかい……!」
リナが小さな木の椀にお湯を注ぎ、そっとおばあさんの手に渡した。
「ほら、触ってみてください。」
おばあさんは両手で椀を包むと、そのまま小さく涙ぐんだ。
「……あったかい……薪を割らんでも……わしでも……一人で……」
集まった村人たちも湯気を眺めて顔をほころばせた。
「これなら、子供でも安全だな……」
「夜にお茶を入れるのも楽になるわい……!」
「お風呂のお湯も、少しずつ足せば……薪の半分で済むかもな!」
カイルは少し離れたところで、照れくさそうに帽子をかぶり直した。
「……ふっ、見たか……おれの真の実力を……」
隣でリナが微笑んで、小さく拍手を送る。
「おめでとう、カイル。今度こそ大成功だね。」
村人たちはカイルを囲んで口々に礼を言った。
「カイル殿! 本当にありがとう! これがあれば、冬が越せる……!」
「さすが発明家様じゃ! あんたは村の宝じゃ!」
さっきまでの爆発のトラウマが嘘のように、笑顔と湯気が村に広がっていく。
——こうして、『火を使わない湯沸かし器』はカイルの名誉をほんの少しだけ取り戻し、
村人たちの暮らしを、またひとつ温かくしたのだった。
湯沸かし器の試験が無事に終わった夜。
村の広場には、出来たての温かいお茶を手にした村人たちが集まっていた。
ほのかな湯気が立ち上り、誰もがほっとした笑顔を浮かべている。
カイルはリナにお茶を注いでもらい、ひと息ついていた。
「は〜〜……おれ、今日はもう寝たい……」
リナが苦笑しながら湯のみを差し出す。
「お疲れさま、カイル。本当に頑張ったね。」
ところが——。
「カイル殿!! 次の発明じゃ!!」
村長が、ずずずいっと前に出てきた。
「ひぃっ……! ま、まだ何か……!?」
カイルが背筋をぴんと伸ばすと、村人たちが一斉に声を上げた。
「わしは! 火を使わんで煮物が作れる『火なし鍋』が欲しい!!」
「おれは! 子供でも安全にお米が炊ける『自動ごはん炊き器』がいい!!」
「わたしは! 家の埃を吸い取る何かを!! もう箒で掃くの嫌じゃ!!」
「洗濯板をこすらんでいいやつはないかの!! 腰が死ぬ!!」
村人たちが四方八方から声を浴びせかける。
カイルの頭の上に汗が吹き出した。
「ま、待て待て待て! 一度にそんなに言われても!!
一晩で作れたらおれは魔法よりすごいぞ!!!」
「おぬし、発明家じゃろ? できるできる!」
「村の便利はカイル殿の腕にかかっとるんじゃ!」
「たのむ!! 腰が死ぬ!!」
村人たちの真剣すぎる顔を前に、カイルは完全に逃げ道を失っていた。
「……リナ……助けて……」
リナはすっと微笑み、肩をぽんと叩いた。
「頑張ってね、発明王様。」
「えっ!? おれ寝たい!! おれ休みたい!! うわああああ!!」
こうして、カイルの『安全便利道具プロジェクト』は、
感動の湯気のあとも終わることなく、さらに過酷さを増して続くことになった——。
カイルの小さな研究小屋には、またしても謎の装置が散乱していた。
鍋の形をした金属の容器。謎の石。木箱に詰まった試作部品。
「……つまり! 湯沸かし器と同じ原理を応用すれば、鍋の中身も火を使わずに煮える!!」
カイルが目を爛々と輝かせて机を叩いた。
「でも……今度はお湯だけじゃなくて、野菜とか肉とかを煮込むんだよね……?」
リナが首をかしげつつ、鍋の中を覗き込む。
「問題ない!! 温度調整をして、一定時間熱が持続するように、この『超加熱石』を—」
ガシャッ!
言い終わらないうちに、鍋の底で何かがはじける音がした。
「……あ。」
ゴゴゴゴゴ……
リナが青ざめる。
「カ、カイル……今の音……」
「ま、待て! まだ爆発とは限らん! 熱が……熱が……あっつ!!」
カイルが鍋に触れて飛びのく。
次の瞬間——
ドンッッ!!
鍋の蓋が吹き飛び、ぐつぐつ煮えたぎった人参の欠片が天井に直撃した。
「ぎゃーーーーーーっ!! またかぁぁぁぁ!!」
「だから言ったのにぃぃぃぃ!!」
二人は小屋の隅に転がりながら、煮汁の雨を避ける。
……数分後。
鍋の残骸と飛び散った野菜の山の中、二人は肩を落として座り込んでいた。
「……はあ……おれ……火を使わないはずが……結果的に一番熱い……」
「そもそも、熱を出す石を増やしすぎなんだってば……」
リナが手拭いでカイルの頭についた人参を拭き取ってやる。
「でも……これさえ完成すれば、みんな楽になるんだよね。」
「……ああ……失敗したって、何度だって作り直すさ……
おれ様の発明魂に、爆発ぐらいでひびは入らん!!」
カイルが鼻を鳴らし、立ち上がる。
「よーし! 次は『超加熱石』を二個減らして、調整し直す!!」
「もう一回だけだよ! 村の畑まで吹き飛ばしたら、さすがに許さないからね!」
「へいへい! おれを誰だと思ってる!」
——こうしてまた、村人の安息を脅かす(?)新たな挑戦が始まったのだった。
夜も更け、小さな研究小屋にはまだカイルの奮闘する音が漏れていた。
「……これをここに繋いで……いや違う! 温度が上がりすぎる……くそ……!」
金属片を組み立てたり外したり。
カイルの手はもう油で真っ黒だった。
——トントン。
扉が控えめに叩かれた。
「……ん? 開いてる……」
軋む音とともに、リナがそっと顔を覗かせた。
「カイル、休憩しなよ。これ、持ってきたから。」
手には、湯気の立つお椀と、小さな籠に入ったおにぎり。
「……うおっ……! うわあ……!」
カイルはがちゃがちゃと工具を放り出すと、子犬のように飛びついた。
「おお……この匂い……うまそう……!」
リナは床の工具をよけて、小さな布を広げると、カイルの前にお椀を置いた。
「お味噌汁と、お夜食のおにぎりだよ。冷めないうちにどうぞ。」
「女神か……おまえ、絶対おれの守護霊だ……」
カイルは湯気をはふはふしながら、お味噌汁をすする。
「……うめえ……はあ……生き返る……」
リナはにこにこと、膝を抱えてカイルを眺めていた。
「ちゃんと噛んで食べて。あんまり急いで戻ってくるから、のど詰まらせるんだから。」
「だって……おまえの作った飯は……発明より偉大だからな……」
おにぎりを両手で大事そうに頬張るカイル。
その様子を見て、リナは小さく笑った。
「カイルが頑張ってるから、私も頑張れるんだよ。」
「……リナ……おれ、絶対火なし鍋成功させるからな……!」
「うん、信じてる。」
月明かりの中、小さな研究小屋にだけ、温かな湯気と優しい笑い声が漏れていた。
湯気の立っていたお椀も、おにぎりも、すっかり空になった。
カイルは満足そうに背もたれに体をあずけて、天井を見上げていた。
リナは食器を片付けつつ、ふとカイルの横顔を盗み見る。
「……ねえ、カイル。」
「ん?」
「……怖くないの?」
カイルは目を細めて、首をかしげる。
「何が?」
リナはほんの少しだけ言葉を選んだ。
「……もし、失敗したり……誰にも必要とされなくなったりしたら……」
研究小屋の隅には、失敗作の破片や、爆発した装置の残骸が山のように転がっている。
それを見ていると、胸がきゅっと苦しくなる。
カイルは少しだけ沈黙して、それから——
「……怖いよ。」
あっけなく、でも優しい声で答えた。
「そりゃ、怖いさ。おれは魔法なんか使えないし、みんなが欲しがる便利は全部おれの肩に乗ってる。失敗したら……誰も信用してくれなくなるかもな。」
そう言って、彼は自嘲するように笑った。
「でもさ……」
視線をリナに戻す。
「おまえが笑ってくれるから、怖いのも……ちょっとだけマシになる。」
リナの胸が、ふわりと熱くなる。
「……バカだね、カイルは。」
「だろ?」
カイルは肩をすくめ、そして、そっとリナの頭を軽く小突いた。
「だからおれが立ち止まってたら、殴ってでも叱れよ、な?」
「……うん。」
二人の間に、ぽつりぽつりと月明かりが射す。
失敗だらけの小さな研究小屋の中。
でもその真ん中には、誰にも奪えない、あたたかな絆だけが残っていた。
数日後の昼下がり。
村の広場には、興味津々な村人たちが半信半疑の顔で集まっていた。
「……また爆発しないだろうな……」
「カイルのことだからなぁ……」
子どもたちはワクワク、大人たちはやや後ろに距離を取っている。
カイルはそんな村人たちの前に立ち、胸を張っていた。
隣には、にこにこしながら鍋を抱えるリナ。
「えー、諸君! 今回は爆発しない! 安全! むしろ感動必至の新発明、その名も——!」
カイルが胸を叩く。
「『火なし鍋・試作三号』だッ!!」
村人たちはどよめき、恐る恐る近づいてくる。
「どうやって煮るんだ? 薪も火もいらんのか?」
「見てろよ……リナ、スイッチを。」
リナがにっこり笑って、鍋の底に埋め込まれた小さなレバーをカチリと倒す。
……すると。
ゴォォォ……と静かに石が共鳴する音がして、鍋の内側からじんわりと熱が広がり始めた。
「おぉ……! 鍋の底が赤く……火がないのに……!」
「これ……勝手に煮えてるのか……!?」
数分後、ぐつぐつと煮えるシチューの香りが、広場にふんわりと漂った。
「くんくん……ああ、いい匂い……」
「こりゃあ……薪を割らなくていいのか?」
「火事の心配もなしだぜ!」
村人たちの表情が、一気に明るくなる。
カイルは得意満面で腕を組んだ。
「どうだ! これが文明の力だ! おれ様の勝利だ!!」
「えっへん……って、カイル、鼻高すぎ。ふふ。」
リナはカイルの背中をぽんぽん叩いて笑う。
村のおばあさんが恐る恐るスプーンを差し入れ、一口。
「……あらまぁ……火で煮たのと変わらん……あったかくて……美味しいよぉ……!」
その言葉に、広場がぱあっと沸いた。
「カイル!! こりゃすごいぞ!」
「おれの家にも一つ作ってくれ!」
「ついでにお茶も沸かせるのか!?」
村人たちがカイルを取り囲み、あちこちから頼みごとが飛んでくる。
カイルは照れ臭そうに頭をかきながら、そばで笑うリナと目を合わせた。
——こうして、火なし鍋は村の希望の光になったのだった。