私はまだ死にたくない!!
これは大人になってから。
初めてひとり暮らしをした時の。それでもずいぶん前だけど。
☆☆☆
私が布団で眠っていた。
すやすやと。
それなのに、カチャリと玄関扉が開く。
私、起きろ! 誰か来た!
もちろん、私は気づかない。
黒い人影がこっそりこっそり、私に近付き、ピンと張った何かを取り出す。
私を見ていた私はそれがピアノ線だと思っていた。
不思議なのは、そのピアノ線、眠っている私の首を締めたのではなく、胸を貫いたこと。
ピアノ線のはずなのに、突き刺さった時はなかなかな太さになっていた。
眠っている私は即死……のよう。ピクリともしない。
えっ、ちょっと待って!
死ぬの? 死ぬの?
えっ、死にたくないんですけど。
慌てて自分の携帯で119番を押し始め、「はやく、はやく」と死んでいるかもしれない私を焦って見つめている私。数秒経たないうちに救急車の音が聞こえてきて、扉が慌ただしく開かれた。
救急隊員たちがやってきて、担架で運ばれる様子を眺め終わった私は、ほっと一息。
夢はそこで暗転し。
なんだかすっきり目が覚めた。
今思えば、夢の中で死ぬのって吉夢じゃなかったっけ?
……なぜ助けてしまったのだろう……とほんの少し後悔した。
この頃、仕事の繁忙期。それに加えて国勢調査まで押しつけられていたので、めっちゃ疲れていました。
国勢調査、調べなくちゃならないのに、中には「用もないのにうるさい!」と怒鳴る人もいるし……。用事あるんだってば……。
で、頭が回らなくなって、玄関の扉の鍵を閉めずに出掛けてしまったことが問題だったと。
帰ってきて、私用の調査票が、玄関の扉の中にあったことがめっちゃ怖かった。