汚い赤ちゃん
赤ちゃんを見て汚いと思ったことはない。
涎が出ていても、鼻水がこべりついていても。大小おもらしがあっても。それなのに。
そんな夢だった。
☆☆☆
最初は車に乗っていた気がする。
そこで、一緒に乗っていた誰か達と車から下りた。
駅へ向かうよう。なんだか急いでいて、いつもよりも10分遅い、そんな気がしながら、急ぎ足駆け足で改札を潜ると、回送列車が駅を離れていく様子が見えた。
その列車、実際は『回送』の文字ではなく、別のもう少し長い日本語が書かれてあった。
私はそれでもそれを私を乗せない回送列車だと思って見送り、次の列車を待つために、すいている列を探し始めるのだ。
しかし、ホームはかなり混み合っていて、短い列などない。
走ったせいかかなり足が疲れていたので、座れる場所を探す。探している途中に、赤ちゃんを抱く幼児の兄を見つけた。
私は当然のようにその赤ちゃんを抱き、そのまま空いていた椅子に座る。兄も私に素直にその赤ちゃんを渡したが、時々様子を見に来るようだ。
脚はとてもだるく、座っていたいと思っている。
座席は駅の壁側にあり、座った場所の壁は古い木材で出来ていた。
どうやらその奥には家屋があるらしく、扉のようにも見えた。だけど、その扉を開き中を覗いてはならない。そんな風に感じて視線を赤ちゃんに下ろす。
腕の中には、預かった赤ちゃん。
赤ちゃんの鼻には流れていただろう鼻水が、黄色くこべりついていた。そのこべりつくものの中には、鼻毛が混じっている。
なぜか、私はその赤ちゃんを汚いと思ってしまった。
ときどき私を見つめる細い目も、少しアトピー気味のその肌も。こべりつく鼻水も。
普段はそんな風に思わないのに。鼻水が流れていても、かわいいと思って拭っていたはずなのに。
寝覚めの悪い夢だった。
これが私の深層だったら嫌だなぁ……。でも、鼻毛が鼻水とともに抜けている赤ちゃんも見たことない……。