たくさんのシャチ
最初の方は忘れてしまった。
だけど、アスファルトではない硬いコンクリートの道を歩く私。
物を運んでいるらしい。
手に荷物。向かう先は海。
なぜかそれは知っている。同じように歩いていく女の人も、私と同じ。
ふとお椀をひとつ落としてしまう。
あっ!
黒塗りのお椀。
幅の広いやっぱりコンクリートの橋の上をコロコロと。
受け止めてくれたのは、漁師っぽいお爺さん。
なぜかお椀と交換でベビーラックをくれる。私は重たくなったなぁと思いながら、ベビーラックを担ぎ上げた。
ずんずん歩くと、テトラポットのある船着き場。すぐそこにシャチの群れが、跳ねていた。跳ねるたびに白い水しぶきが起きた。
わぁ、いっぱい。
そんな感想を持ちながら、恐怖も少し。
すると、一緒に歩いていた1人が落っこちて、シャチにくわえられてしまった。
シャチの牙が見えるしがっちりかじられている、さっきまで一緒に歩いていた女性。心配して見ていたら、服が膨張し、するすると、脱皮するように女の人が逃げ出したのだ。
シャチもまだ女性を狙ったままだが、すでに陸の上にある女性。
良かったと、再び歩き出すと、先ほどの女性が旦那さんらしき人に出会い、なぜかシャチの群れの中に飛び込んでしまった。一度はその背に姿を見せた女性だったが、海の波の中、シャチが体を擦るようにして潜ったり沈んだりする。そんな中、彼らの姿は見えないままになった。
今度こそ助からない気がする。
そんなことを思っていたら、一匹のシャチがコンクリートと海の間に挟まって弱っていた。
顔のあたりを海上に出してやっと胸びれを動かせる状態。
それもそのはずで。
シャチの中身は空っぽで、伽藍堂という表現がピッタリな状態なのだ。
こちらも絶対に助からない。
普通の思考の持ち主ならそう思うに違いない状態。
それなのに、私はこの子をあのシャチの群れからあの女性達を助けるために使えないかと考えるのだ。
取り出したのが針と糸。
これなら使えるんじゃない?ともらった太めの座布団のような触り心地の布(もしかしたら肉だったのかな)
その布を残っている骨(木の格子だったかも)に縫い付けて行く。
最初は白い糸で。そして、目立たないようにと赤糸で。
途中誰かと話をした。
誰だったかな?
布を余らせないように、計算しながら切り分けて。
だけど、全部貼り付けたとしても、足りない肉と皮膚の部分。
どうなったのだろう?
そこで夢から覚めた。














