26.地下へ
微ホラーです。怖がりの自覚があるレベルの方に、夜中はお勧めいたしません。
「……まさか、こんなことになると思った?」
「いいえ、全く」
水飛沫に無音が掻き立てられる中、会話が零れる。
あの後結局、アリスとクオンは作戦の主役となってしまった。二人は囮兼誘導役、他の人間はウル達に任せて噴水の奥__つまり、ドロシーが移動しても視界に入らない位置__に隠れてもらう予定である。いかにエクソシストが狭き門といえど、幽霊にでさえ口出ししたシャイルがああも簡単に引き下がるとは微塵も予想していなかった。
何か裏があるのか?しかし、クオンには彼女のパールグレイの瞳に黒いモノを見出すことができなかった。純粋に宣っていた、幾度考察しようとそれは無駄な邪推に過ぎないような気がして。
「耳が聞こえないと言っても、見えはするようだし……どうしようか」
真っ赤に滴るドロシーを横目、眉間にシワを寄せて唸る。クオン一人ならインシャドウで接近、トライアングル専用武器である銃で撃ち殺せば済む問題だ。しかし、まさかそれを本人の眼前で実行するわけにもいかない。彼女らを排除せず、かつ安全に接近する方法……。
なんて面倒な。
ふと横を窺えば、屈んであちらの様子を窺うアリスは妙に静まっていた。俯いた顔は蒼白で、どうも気分が芳しくなさげだ。
ドロシーの件だけではないはずだ、そう思い当たることを少々見当してみれば。
「……アリスがいない、と言っていたけれど。君の存在にも何かしらの理由があったのか?」
「わかりません……わたし、ただ泣いていただけですから。色々可能性はありますが、どれも確証はないんです」
そう言ってから彼女はふとしたように微笑む。薄い筋の睫毛かが柔らかそうに垂れ、青い瞳を隠した。
「そうですね、だから私は動いてよかった。今事が進展しているのが、何よりの証拠です」
「そういうこと」
二人はにっこり笑い合ってから、また噴水の方に目をやった。赤いものが映し出される瞳にから既に柔和さは拭い去られている。
「単純に突っ切るのは無理。噴水で背後はとれないし、いずれにしろ彼女の注意を引き付ける”囮”が必要になるけれど……」
「あぁ、でしたら!わたしは彼女と同じ幽霊ですから、追いかけっこも可能では?それなら、わたしが単独で行った方がよろしいかと」
そういう彼女は、階段裏から直進した場所にある廊下の奥を凝視している。吸い込まれそうなほどに真っ暗な向こう側、既に人外である彼女にはクオンと同じように見えているのだろう。つまり、闇に身を潜めることも叶わない。
クオンはアリスの提案に応えるのに、少しの時間を要した。
彼女はクオン達と切り離されている間、永遠と待ち望んだ片割れから逃げ続けなければならない。
しかしその一方、現状の打開策としては魅力的だ。彼女は幽霊、逃げに特化した性質も十分持ち合わせている。だが、視たところドロシーはただの怨霊とも思えないのだ。
何かとてつもなく嫌な予感がするのだ。悪魔の直感が通告を躊躇っていたその真実、噴水から溢れ出る鮮血は”異形”の部類ではないかと。
__その場合、もしドロシーが異形に侵されていたら?
アリスに明日はない。
(……だから?)
ふとクオンは我に返る。
そうだ、目的はこの学園の崩壊。遂行する為なら、クオンは何だってするつもりだった。幽霊は過去に一度、その手から命を放してしまった存在だ。今更消えたところで彼らには適当に話せば納得してくれるだろうし、本来壊れたモノがもう一度壊れることはない。
クオンは悟られぬよう歪んだ口元をきつく引き締め、目の中に憂いを落とした。
過去に縋る亡霊などどうでもいい、利用させてもらおう。
「いや、ちょっと危険すぎない?君結局、校内で迷ってたじゃん」
正直なことを言うと、クオンとて百年来の先輩に道を訊かれるとは思っていなかった。確かに建築士でもなし、道を抜ければ頭は混乱するかもしれないが、諦めて人間のようにほっつき歩くのでは適任とは言い難い。それが彼女の命を優先するのなら、だが。
彼女はクオンの懸念をやんわり遮るように、なおも続ける。
「多少なら続く場所も把握しておりますし、昔遊んでいた抜け道や裏道も多く知っています。万一捕まったとして、それは既に死んだ者の魂が消滅するだけです」
そう、それでいい。人想いのアリスなら否定に喰いつくと思った。だがしかし、ここで逃がす気はない。もう少々付き合ってもらおうか。
「……違うとは気づいている?君は幽霊として”生”を受けている、だからもう一度死ぬことになるよ。多分、ドロシーも壊れてしまうはず」
綱渡りの向こう側には、きっと綺麗な世界が広がっている。下を見れば真っ赤な暗闇が流れていて、時々虚ろな顔とぬらりと血を纏った腕が伸びてくるのだ。
渡るか。
堕ちるか?
「それでも行きます。彼女は私の肉親です」
その返答に、クオンはうっすらと目を細める。さぁ、今度は笑おう。
「……仕方ない。アリス、皆が移動し終わったら逃げて。ジャラは幽体を見つけることができるから、生きることだけ考えて。それと__」
ポケットから、ジャラから預かった十字架のペンダントを取り出す。指に引っ掛けて、そのままアリスに差し出した。
「持てるかな?」
できるだけ優しく、少し低い声で安心させるように。我ながら小手先の芝居に安堵した。
十字架や宗教云々が人外に通用するわけも無い。見てくれだけでも暗示として効果を発揮するはずだ。実際はそれが建前で、本心は物理的な問題で透過性が高いのか任意かはクオンの関知するところではなかったから、興味本位だった。
アリスは一瞬、困惑したようにクオンを見やった。直ぐに何らかを察して腕を持ち上げ、「持てます……」と驚きに目を丸める。
「よし、どれで大丈夫。幸運を祈るよ」
それらしいことを言って手を離すと、紐は重力に従ってだらりと垂れた。アリスの返事を聞く前に階段裏の奥に回り、カツカツと足音を響かせる人間達の様子を窺う。
噴水に腰かけているドロシーは変わりなく、夢現のように口を半開いて虚空を見つめている。そこからも血はとめどなく溢れており、何故咳き込まないのかと不思議になるほどだった。
その向こう、更に柱の奥からジャラの視線を感じ受け止める。途端彼はすっかり笑顔になり、可愛らしく小さく手を振ってくれた。一瞬だけ唇を曲げてまた裏に引っ込み、あらゆる打算を脳裏に渦巻かせる。
クオンはドロシーの始末が済めば周囲の安全確認も任されていた。彼らはエクソシストを護衛か何かと勘違いしていないだろうか。誰も見ていないのをいいことに、クオンは眉間を擦りながら呆れの溜息を吐く。
(安全確認……と言っても、何ができるかな。あの噴水の真相も定かじゃないし、もし異形なら僕の手に負えない。どうしてもノマドに頼ることになる……)
異形との邂逅、それだけは避けたい。飢える獅子の前に、生まれたての小鹿を差し出すようなものだ。
ふと足音が完全に止まり、広間には雨のような噴水の音だけがべしゃべしゃと響き渡る。ややあって再度彼らの方を覗き込んでみれば、満面の笑みのジャラがピースサインを肘から大きく振り回していた。その目はほんのり水色に輝いていて、まるで晴天のようだ。
「……アリス、すぐ戻るよ」
「はい」
その静かな言葉が零れ落ちた途端、彼女は躊躇なく地面を蹴り飛ばし、赤いスカートを翻して走った。そのまま誘うように蛇行を繰り返し、ふと焦りを顔に浮かべ廊下の向こうへ一瞬で消え去る。その後を追うように、真っ赤な液体を撒き散らしながらドロシーが行く。その髪からは熟れた柘榴の果肉がこぼれるように、赤いものを滴らせていた。
ぎらりと刃を光らせる包丁。黒いモノがへばりついていて、クオンの背に悪寒が走る直前彼女も暗い闇の中へ溶け込んでしまった。
「……行ったか」
地下へ潜入するまでは、戻らないでくれ。
△▼ △▼ △▼ △▼ △▼
「……よし、行こー!」
しばらくして、ジャラの底抜けに明るい声がかかる。人間達は柱から預けていた背を離し、突っ立っていたせいか鈍った体に血を巡らせる。
「本当にもう大丈夫なのよね?」
「うん!だいじょーぶ、ほら行こーよぉ!」
まるで駄々をこねるようにマリンの手を引っ張り、ジャラは我先にと噴水の方へ駆け出して行った。そのあとから容赦なく連行されたマリンは、望まぬファーストペンギンを享受する羽目になってしまったのだが。
「……エリス」
「はい?」
「……おい」
「テメェ人の名前くれぇ言えねぇのか。ほら、手繋ぐぞエリス!転んじまったら大変だ」
「はい!わかりました!」
「じゃ僕らも行こうか、ウル」
「そうだね」
ウルは何気なく全員の所在を確認すると、自らも最後についていった。クオンは上手くやってくれたようだし、いくら待機だけだとしても一切の油断を許してはならない。ウルは人狼である自分に、可能な限り慎重さと正確さを求める。
今、この世界で最も自由で深い存在は、己なのだから。
『逡ー蠖「繧医ゅo縺九▲縺ヲ繧九〒縺励g縺』
「……!」
突然のことだ。
ざらついた声の尾を引くようにジジッと頭の中にノイズが走った。
一瞬視界が点滅し、ウルの顔は瞬く間に青白くなっていく。歩みを止めることはなかったが、首筋をぞろりと冷や汗が垂れた。
そうか、君はもうソコにいるのか。__僕の、すぐ近くにいる。
「……わかってるよ、勿論ね」
腹の底から這うように、あるいは撫でるような感覚を押し留める様に息を吐く。誰にも、空気にさえも理解できないほど小さな声で返事を返す。大丈夫。全部、全部、
順調に進められるから。
△▼ △▼ △▼ △▼ △▼
幽かな月明かりに照らされて、雪のような埃がゆっくりと舞い降りる。静かな空間に響く靴音が煩く、うなじがぞわりと嫌な寒気を拾った。神経過敏になっているのだ。現状足手まといが多い中、それくらいがちょうど良いのかもしれないが。
彼らは噴水を囲み、厳かとも言い難い気まずい空気の流れを肌に感じ取っていた。先ほど見た光景を一度起こす方法を、闇の中手探りも同然で調べているのだが__「うわっ」といった声が相次ぐ。
それもそうだ、まさか血塗れになって寮に帰る訳にもいかない。そういうわけでシャイルが他の手を借りて必死に探しているのだ。
「つめてぇ……クッソ寒いし血腥いし。おいルーク手伝いやがれ」
「断る」
「チッ!」
大儀そうに濡れた前髪を掻き上げ、改めて噴水を見やる。
噴水は豪勢な装飾が掲げられて大きく彼女の頭は優に越している。その分吐き気を催す真っ赤な液体もシャイルに降りかかってくるので、真っ青な顔が鮮血とまだらになる前に幾度か拭ってみたが、もはや意味を成さない。捲り上げたズボンだって黒いからいいものの、裾が濡れてしまった。後処理を考えるとどうにも煩わしい。
足元に纏わりつく生温い液体から目を背け、鯨の象られた彫刻を凝視する。それでも気持ちの悪い感覚が、生温かくも冷えた温度が肌に触れてその存在を強烈に示した。足を動かすのも悍ましい。
「そういえば、ドロシーも噴水に触れてたよね?その痕って無いですか?」
遠巻きに噴水を眺めていたロンドが言うと、シャイルもひらひらと手を振って応えた。
「あぁ、私もそれを探してんだけどな……どこらだったか覚えてる?」
「さぁ……」
あっという間に脳裏にあの光景が広がり、得も言われぬ恐怖が甦る。あんなのにもし見つかれば自分は足が竦んで動けないかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。
__引き下がるタイミングはいくらでもあったはずだ。
後ろめたさが、余計に口をこじ開ける。
「ドロシーは先生より小さいですし、もっと視線を下に落としてみては?ちょうどマリンと同じくらいだと思いますよ」
途端シャイルはこちらに満面の笑みを向けた。
「確かに!マリンは、え~っと……」
目測で測っているのか、マリンを睨みながら空中を撫でるような動作をし、ぴたっと自分の肩辺りに手が当たる。
「先生、ワタシそんなに低くないです。もっと、そう、そこ!首の付け根くらい!」
「あれ、こんな高いか?まぁいっか」
「なっ……!」
軽くショックを受けたようだが、エリス達に吹きだされるとまた不服そうにシャイルを睨みつけた。
そこで、ガコッと石の削れる音がする。
「開いた‼見つけたぞ!」
嬉々というよりか、驚いた様子で後退る。どうやら鯨と波の間に、妙な隙間があったとか。それがスイッチになっていたらしい。
シャイルが縁にへたり込んで上着で脚を拭っている内に、噴水は重い音を響かせて大口を開けて彼らを誘っていた。
「……風の音」
真っ黒で灯り一つない奥の方から、吸い込むような風が吹いていた。今にもこちらへ手が伸びてきそうな不気味な闇に、クオンは無機質な眼差しを落とす。
噴水が開くと、血溜まりの中からぽつぽつと足場が浮かび上がって簡易的な橋ができた。それも赤い水を滴らせているが、文句を言う気力は誰にもなかったらしい。
「空気の……通り……」
そう呟くと、妙に前のめりな様子でルークが橋に足を掛けた。
「い、行くんですか⁉本当にこんな所、危ないかもしれないし……」
切羽詰まってローブの端を引っ張ったエリスを無視し、彼は足場を身軽に渡って行く。するりと華奢な手から黒い布地が逃げると、彼女は不安げに腕を降ろした。
「ね、ねぇクオンさん?何があるかわからないですし」
「うん、そうだね。でもこの為に来たのはわかるでしょ?」
彼が入り口に近づくほど涙目になって、エリスはクオンの肩の服をつまむ。そんな微力な訴えはどこ吹く風と言わんばかりに笑顔で躱され、有無を言わせぬ覇気にエリスは俯いてしまった。クオンはジャラに目配せし、またルークの方を見やる。
「エリス、大丈夫だよ!ほら、みんないるからね」
「で、でも……そうですけれど」
ルークは入り口に辿り着くと、壁に手を当てて奥を覗き込む。やがてこちらに振り向いて、首を横に振った。
「見えない……ランタンも、全く……」
「無力ですか」
ウルの問いにルークはまた首を振り、中を指差して続けた。
「……奥に、灯りが……見えるぞ」
「灯り!先生、何か見えます?進めそうですか」
彼は素直にももう一度奥を見やり、目を細めるも徒労に終わる。しかし「進める」とだけ言うと、自ら黒洞々たる階段を降りて行ってしまった。シャイルは焦ったように身を乗り出し、声を荒げて足場を越える。
「おいルーク‼テメェ何してんだ、ガキ共の保身を__」
「アリスは」
ヒュッとシャイルが息を呑む。入り口の壁を掴む腕が震えていた。
「……餓鬼じゃないか」
口出ししたのは自分だとわかっていても、嘲るような声に頭に血が上った。シャイルはそれ以上否定できず、しかし肯定もせず、彼らに振り返った。灰色の目には怒気が含まれている。
「おい、お前らはもう帰れ。これ以上は大人がやる、付き合わせて悪かったな」
「先生。アリスを迎えに行くのに僕らは必要なはずです。ジャラは霊体の察知に優れているし、ウルは銃を扱える。勿論それなりの理由があってのことですが」
ウルがいつもの表情で懐から黒く光る銃口を覗かせると、驚愕の眼差しが集中する。彼女は苦虫を噛み潰したような表情を隠すように入り口に向き直り、「勝手にしろ」と吐き捨てて階段を降りた。
クオン達が躊躇なく足場を行くと、靴音が連続的に響いて遠ざかっていく。一体何が起きたのか理解できず、子供三人は身を寄せ合って固まっていた。
その瞬間、噴水から水音以外の固く重厚な音がする。嫌な予感は見事的中し、噴水はその口を閉じようとし始めた。エリスは置いて行かれる恐怖か二人の腕を引き寄せ、その身を震わせて尋ねた。
「い、行く……⁉閉まっちゃう!」
「戻った方がいい。僕らにできることはないよ……!」
「で、でも!ドロシーが徘徊してる中階段上って廊下曲がりまくって、最後はあんた一人で戻るのよ⁉できるの⁉」
「そ、それは……でも」
ズズ……と迫るタイムリミットに、三人は決意を固めて縁に上った。そしてマリンが足場に足を置いた途端、噴水は突然大音量で何倍速にもしたオルゴールを流しながら、勢いよく入り口を閉じた。
「うわぁッ⁉」
「ひゃっ……⁉」
「や、やだっ!何、何なのぉお‼」
マリンがよろめくとエリスがその手を掴み、ロンドが二人を支えようとするも、支えきれず地面に落ちてしまう。
静けさを暴力的に破り鼓膜をつんざいたオルゴールも、正常ではなく時々ノイズ音が混ざっている。
何か来るかもしれない、この大音量は一体何を意味するのか。背中に感じる気配が虚構とわかっていても恐ろしく、三人は恐怖のどん底に突き落とされた。比較的体の大きいロンドに二人が隠れようとするのを見て、彼は目を強張らせながらも震える筋肉に力を入れる。怯えてても意味はない、今は庇護者と隔絶されてしまった上、ランタンも無い真っ暗闇だ。今の音が何らかの信号だった場合、ドロシーも戻って来るだろう。
__ココは危険だ……!
二人を庇うように背中に回していた腕を、今度は彼女達の手に回す。
「逃げよう。職員室なら誰かいるかもしれない!立って、早く!」
憶えている限り、一番近い道はドロシーの行った方向だ。内心毒を吐きながらも何とか二人を立たせ、逃げる様に走った。
走るという行為が逃げるという言葉に結び付き、それは背後の恐怖を感じさせる。虚妄に過ぎないのに、益々もつれる足が震えた。
あぁ、怖い。何と無力なのだろう。
視界が不明瞭な中、マリンがポケットに手を突っ込んでスマホを取り出し、懐中電灯を点ける。震えるのは横隔膜か?声が無様なくらいおぼつかない。
「ここ、れで見えるでしょ、ね⁉あん、たに任せるからっ走って!」
怖い怖い怖い、もう嫌だ。後悔がどっと押し寄せて目頭が熱くなってきた。あぁどうしよう。
「わかった……!エリス、マリン、大丈夫だから!職員室もそう遠くない!大丈夫!」
それはきっと、自分に言い聞かせていた。
△▼ △▼ △▼ △▼ △▼
「……肉親か」
クオンは小さく呟く。
力の抜けた無表情で自らの手を見つめる。青白い皮膚に透けた、青と紫の線。
人外に血の繋がる存在すなわち肉親はいないのだ。親、兄弟、姉妹、双子、子、親戚いずれも存在しない。
この体に通う血潮擬きは、誰とも似通っていない。
だから、いくら流れようがどうでもいい。治るから。
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次回、シリアスホラー回です。
幼少期からホラー大好きっ子だったので、恐らくそれなりに怖いと思われます。
裏話で明るい話も同時投稿しますので、ご安心くださいね。




