13裏話.繝代Λ繧オ繧、繝�
少々ロンドのお話。
「繝代Λ繧オ繧、繝�縺ソ縺溘>縺�縲�」
__それは、どっちが。
優劣も、陰陽も、哀楽も、欠けた方には与えられた。
五体満足な僕は、空虚が胸を撫で下ろすばかりだった。
温かい家族、本物の居場所、幸せな笑顔、心ある充足した目の細め方。でもそれは、貴方に向けられていたんだ。僕もそうだった。
欠陥ばかりの脆弱な貴方と、程よく器用な僕。どうして世界には弱者の為にハッピーエンドが作られてしまったのだろう。普通であるばかりに、不幸が用意された存在。不幸であるばかりに、平和が用意された存在。そんな醜く悍ましい比較ばかりで、僕はそういう為人だったのかと今更に悟った。
心が醜悪だと駄目なのか?どれだけ努力しても、谺�髯・蜩√�縺上○縺ォと囁く悪魔の声が脳裏を過る。努力は裏切らないけれど、報われることはなかった。どれだけ積み上げて地の底から這いあがっても、あの人達が貴方に向ける目を僕に見せることはなかった。そればっかりが悔しかったわけじゃなくて、本当はただ一緒にいられたらなと淡い希望を抱くばかりだった。幼い頃からそうだった。だから、眼前の”幸せ”を知っていても、感じたことはない。
そんな境遇が僕を偶像に仕立て上げた。願うことなど、何にもない。
それすらどうでもよかった。本当は、何て言ってみても後に続く言葉が見つからない。
もっと頭の出来が悪ければ、盲目的な悪に成れただろう。人間が空虚を虚しく感じるようにできていなければ、もっと上手く笑えたはずだろう。もっと人格が歪んでいれば、もっと貴方の為に成れたはずなのに。
均衡がとれている故の機能不全家族。幸せが虚しさを造り上げ、悪循環の罪に沈めた。
貴方は考えたことがあるだろうか。
思考の枠から外れてしまうほど、机上の空論を繰り返し唇を噛むこの胸の塊。その正体はきっと、真っ黒で目を背けたくなるもののはずだった。
そのはずだったんだよ。なのにさぁ、貴方が繊細過ぎるせいで、僕は!!
憎むことができない。理由もないこの虚しさのやり場が無くて、ねぇ。
ねぇ、助けてくれる?自由がないせいで箱庭で生きてきた貴方。自由なせいで誰の目にも触れられなかった僕。
努力しなかったのに、愛されている貴方。努力の意味もないのに、滑稽なまでに藻掻く僕。何が悪い。誰のせいだ。何で、何で、何で。
理由がないんだよ。
……何処にも、理由なんてなかった。
「……何処にも、理由なんかないんですよ。僕は社会的になっただけだから、その分良いことも悪いことも」
『良い子とも悪い子とも』
「__ロンドは、本当にそれでいいのかい?」
まるで天使みたいな貴方は、聡明だった。社会なんか見たことも歩いたことも無いくせに、机上の空論は妙に正確なピースで緻密な設計だった。
「本当に、それを望んだ?」
そんなはずがない。
「ええ。言ったでしょう、良いこともたくさんありますから。その内貴方をパリに連れて行ってあげますよ」
「あっはは、それは楽しみだ……!長生きする理由がまた増えてしまったね」
その笑顔自体は弱々しいもののはずだったのに、目だけが輝いているのだ。綺麗だった。未来を信じていた。
『そんな頑張らな縺昴s縺ェ鬆大シオ繧峨↑縺上※縺�>』
「ええ、そうですよ。僕よりは生きてもらわないと」
嘘を吐いているのはどちらの僕?
貴方は寂しそうに微笑む。関係ないとわかっているのに、何故か酷く傷心した。貴方の寿命の心配なのかすら怪しい。貴方が死ぬ未来が用意されている安堵に対する怒りか、言葉選びの後悔か。
「ロンドは優しい子だね。器用で、要領がよくて、家族想いだ。それを実行できる君が、私には羨ましく思えてしまう」
「……随分、あっけからんと言いますね?そのくらい当たり前じゃないですか」
「違う。ロンド、君が私を恨めしく思っているのも同じだと言いたいんだ。それに対する気持ちも、今の言葉と同じというわけさ」
貴方は褪せた長い金髪を風になびかせ、車椅子を窓の方に向ける。
僕の心臓は冷たく波打っていた。
「……いいんだ。世の中は不条理だらけで、どうしてか上手くいかないし全てが釣り合わない。私が普通であれば。私もロンドも報われたろうに……でも、それを言えば結婚した彼らが悪いことになる。すると、結局はバタフライエフェクトの鎖状となってしまうだろう?もう当たり障りのない生き方をするしかないのさ、誰でも。ロンド、君はまだ自由だ。制限された自由の中で生きるのはやめて、いつか本当の自由で楽しく生きてくれよ。私の分までなんて言わないよ。君は、君らしく君を作って……ね、素敵だろう?」
純白のレースシャツは開け放たれた窓から見える碧空に照らされて、重厚な光を放っていた。金髪の色を反射し、肩に滑ろうとして落ちてしまう。
その瞳は、月明かりの夜みたいだった。
「……わからない」
自由。
「……ごめん、兄さん。僕は誰かに従っていないと、きっと生きていけないんだよ」
この世界が怖いから。
「……貴方になれたら、よかったんだ」
生が二人を別つ時。兄弟として命が宿ってしまったそれは、単なる呪いのようだった。比較するものを作るべきじゃなかった。
どちらか、一人であるべきだったんだ。
苦し紛れでそう呟き、兄に背を向ける。彼の表情なんて見たくなかった。微笑んでいても、悲しそうでも、なんでも見たくない。苦しい。どうして、こんなにも、黒いモノを吐くような感覚が消えない。
どうして、僕は生まれてしまった。
この空虚な心の名前を誰か、教えてくれ……。
___兄様の病名を、教えてくれ。
どうして、そんなにも、赤いものを吐いてしまうの?
どうして、お母様とお父様は、パリへ兄様を連れて行ってしまったの。
治るかな。今度の医者も役立たずだったら?本気で、貴方が治るように願っている。それでもその思いが本物かは定かじゃない。全部空虚なんだ。意味がなく、空っぽで、自分の意思も無いような存在。
「ははッ……」
そうか。僕はまるで……__。
「寄生虫みたいだな」
それは、どっちが。
空虚に名前なんてないのなら、どこまでもそっくりな僕達は。
貴方に病名は、あるのだろうか。




