表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fake and Liar  作者: うるフェリ
長編シリーズ1:赤い学園編
40/43

13裏話.繝代Λ繧オ繧、繝�

少々ロンドのお話。

 

「繝代Λ繧オ繧、繝�縺ソ縺溘>縺�縲�」


 __それは、どっちが。


 優劣も、陰陽も、哀楽も、欠けた方には与えられた。

 五体満足な僕は、空虚が胸を撫で下ろすばかりだった。


 温かい家族、本物の居場所、幸せな笑顔、心ある充足した目の細め方。でもそれは、貴方に向けられていたんだ。僕もそうだった。

 欠陥ばかりの脆弱な貴方と、程よく器用な僕。どうして世界には弱者の為にハッピーエンドが作られてしまったのだろう。普通であるばかりに、不幸が用意された存在。不幸であるばかりに、平和が用意された存在。そんな醜く(おぞ)ましい比較ばかりで、僕はそういう為人だったのかと今更に悟った。


 心が醜悪だと駄目なのか?どれだけ努力しても、谺�髯・蜩√�縺上○縺ォと囁く悪魔の声が脳裏を過る。努力は裏切らないけれど、報われることはなかった。どれだけ積み上げて地の底から這いあがっても、あの人達が貴方に向ける目を僕に見せることはなかった。そればっかりが悔しかったわけじゃなくて、本当はただ一緒にいられたらなと淡い希望を抱くばかりだった。幼い頃からそうだった。だから、眼前の”幸せ”を知っていても、感じたことはない。

 そんな境遇が僕を()()に仕立て上げた。願うことなど、何にもない。


 それすらどうでもよかった。本当は、何て言ってみても後に続く言葉が見つからない。

 もっと頭の出来が悪ければ、盲目的な悪に成れただろう。人間が空虚を虚しく感じるようにできていなければ、もっと上手く笑えたはずだろう。もっと人格が歪んでいれば、もっと貴方の為に成れたはずなのに。


 均衡がとれている故の機能不全家族。幸せが虚しさを造り上げ、悪循環の罪に沈めた。


 貴方は考えたことがあるだろうか。

 思考の枠から外れてしまうほど、机上の空論を繰り返し唇を噛むこの胸の塊。その正体はきっと、真っ黒で目を背けたくなるもののはずだった。

 そのはずだったんだよ。なのにさぁ、貴方が繊細過ぎるせいで、僕は!!


 憎むことができない。理由もないこの虚しさのやり場が無くて、ねぇ。


 ねぇ、助けてくれる?自由がないせいで箱庭で生きてきた貴方。自由なせいで誰の目にも触れられなかった僕。

 努力しなかったのに、愛されている貴方。努力の意味もないのに、滑稽なまでに藻掻く僕。何が悪い。誰のせいだ。何で、何で、何で。

 理由がないんだよ。

 ……何処にも、理由なんてなかった。


「……何処にも、理由なんかないんですよ。僕は社会的になっただけだから、その分良いことも悪いことも」


『良い子とも悪い子とも』


「__ロンドは、本当にそれでいいのかい?」


 まるで天使みたいな貴方は、聡明だった。社会なんか見たことも歩いたことも無いくせに、()()()()()は妙に正確なピースで緻密な設計だった。

「本当に、それを望んだ?」

 そんなはずがない。

「ええ。言ったでしょう、良いこともたくさんありますから。その内貴方をパリに連れて行ってあげますよ」

「あっはは、それは楽しみだ……!長生きする理由がまた増えてしまったね」

 その笑顔自体は弱々しいもののはずだったのに、目だけが輝いているのだ。綺麗だった。未来を信じていた。


『そんな頑張らな縺昴s縺ェ鬆大シオ繧峨↑縺上※縺�>』

「ええ、そうですよ。僕よりは生きてもらわないと」


 嘘を吐いているのはどちらの僕?

 貴方は寂しそうに微笑む。関係ないとわかっているのに、何故か酷く傷心した。貴方の寿命の心配なのかすら怪しい。貴方が死ぬ未来が用意されている安堵に対する怒りか、言葉選びの後悔か。


「ロンドは優しい子だね。器用で、要領がよくて、家族想いだ。それを実行できる君が、私には羨ましく思えてしまう」

「……随分、あっけからんと言いますね?そのくらい当たり前じゃないですか」

「違う。ロンド、君が私を恨めしく思っているのも同じだと言いたいんだ。それに対する気持ちも、今の言葉と同じというわけさ」


 貴方は褪せた長い金髪を風になびかせ、車椅子を窓の方に向ける。

 僕の心臓は冷たく波打っていた。

「……いいんだ。世の中は不条理だらけで、どうしてか上手くいかないし全てが釣り合わない。私が普通であれば。私もロンドも報われたろうに……でも、それを言えば結婚した彼らが悪いことになる。すると、結局はバタフライエフェクトの鎖状となってしまうだろう?もう当たり障りのない生き方をするしかないのさ、誰でも。ロンド、君はまだ自由だ。制限された自由の中で生きるのはやめて、いつか本当の自由で楽しく生きてくれよ。私の分までなんて言わないよ。君は、君らしく君を作って……ね、素敵だろう?」

 純白のレースシャツは開け放たれた窓から見える碧空に照らされて、重厚な光を放っていた。金髪の色を反射し、肩に滑ろうとして落ちてしまう。

 その瞳は、月明かりの夜みたいだった。

「……わからない」


 自由。


「……ごめん、兄さん。僕は誰かに従っていないと、きっと生きていけないんだよ」


 この世界が怖いから。


「……貴方になれたら、よかったんだ」


 生が二人を別つ時。兄弟として命が宿ってしまったそれは、単なる呪いのようだった。比較するものを作るべきじゃなかった。

 どちらか、一人であるべきだったんだ。

 苦し紛れでそう呟き、兄に背を向ける。彼の表情なんて見たくなかった。微笑んでいても、悲しそうでも、なんでも見たくない。苦しい。どうして、こんなにも、黒いモノを吐くような感覚が消えない。


 どうして、(貴方)は生まれてしまった。


 この空虚な心の名前を誰か、教えてくれ……。


 ___兄様の病名を、教えてくれ。

 どうして、そんなにも、赤いものを吐いてしまうの?


 どうして、お母様とお父様は、パリへ兄様を連れて行ってしまったの。

 治るかな。今度の医者も役立たずだったら?本気で、貴方が治るように願っている。それでもその思いが本物かは定かじゃない。全部空虚なんだ。意味がなく、空っぽで、自分の意思も無いような存在。


「ははッ……」


 そうか。僕はまるで……__。


「寄生虫みたいだな」

 それは、どっちが。















空虚に名前なんてないのなら、どこまでもそっくりな僕達は。

貴方に病名は、あるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ