21.明くる日
明日も更新します(懺悔)
一連の後、クオン達は翌日の放課後を待つことにした。改めてアリスと向き合い、各々の今後を整理するための時間の確保、またエリス達の睡魔が限界だったからだ。結局睡眠不足で彼らは夢現の受講となったが、対してマリンとクオン達は元気だった。何気なく聞いてみると、彼女は紅茶を片手に冷ややかな目で言う。
「別に。消灯時間、少しだけ勉強時間に回してるだけよ」
「昨夜君が出たのもそういうわけか」
「ええそうね、いい迷惑だったわ」
淡白な調子だった。少なくとも、クオン達を良くは思っていないらしい。状況を鑑みてそれも当たり前かと苦笑し、軽い挨拶と共にその場を離れた。
午後、最後の授業を控えたクオンは無気力に机の中身を引っ張り出す。重なった教科書やファイル、ノートの数々に妙な郷愁を感じた。髪を揺らす乾いた秋の風がそう思わせるのだろう。
次は、あー……何だっけか。
「眠そうだね、クオン」
不意に背後から声がかかって斜め右の席に振り返れば、机に頬杖をつくウルの姿があった。肘の横には化学の教科書が出ている。
「ありがと。まぁ、確かにそろそろ睡眠日だっけ」
「……君達月一で寝るんだよね。当日はずっと徹夜みたいな状態だとか」
「そう。来週大丈夫かな、ライベリーとか頭痛酷いらしいからさぁ~……変に武器持つことになったらぶん回しかねないんだよな」
「んふふ、あり得る。そうならない内に潰さないとねぇ」
にっこりと悪戯っ子のように笑う彼のその目に釣られて扉に視線をやる。すると、突如グループの一つから委員長の声が響き渡った。
「オトマー・アイゼンロート!どうしたんです、もう来ないかと」
「悪ぃかよ」
その声に機嫌を損ねたのか胡乱気に彼を見やり、いかにも面倒くさそうに眉をひそめる。それ以上は教室も沈黙に包まれ、オトマーは机に突っ伏しているロンドの横に座った。そして一瞬時計を見て、ロンドの頭を軽くはたく。ただ髪の毛がサラサラと重力に従っただけで、肝心の部分はピクリともしない。
「……おい、コイツどうしたんだ?今日アラームなかっただろ」
「昨日先生に付き合わされてさ。帰ったの多分、夜中の0時とかだったでしょ?」
尋ねられてクオンが言うと、彼は軽い笑いと共に肩を竦める。
「そうなのか。スマン、熟睡してた」
「嘘だぁ、紙の音聞こえたよ」
「あぁ、それ多分本が勝手に動いてる」
「だから早起きして制御してるんだ?」
「そうそう、ってかうるさくて起こされんだよ。お前も一冊どうだ?」
「いやアンタ達、起こしてあげなさいよ」
二人が駄弁っていると、見かねたようにマリンが声をかける。その前の席では、エリスが仔山羊のように真っ白な髪を浮き沈みさせて眠っていた。彼女が持っていた革張りの本でその背中を突くと、エリスは勢いよく顔を上げる。
「うわぁッ⁉な、なんです?」
慌ててあたりを見回し、呆然とするオトマーとクオンと目が合う。すると騒ぎが夢の中にまで届いたのか、横にいたロンドも青色の瞳を開いた。確かに、エリスの透き通った高い声はよく通る気がする。
「あ……ちょっとマリン、人を目覚まし時計にしないでください!もっと優しく起こしてくれないんですか!」
「アンタねぇ、授業中に居眠りしてるくせして偉そうなこと言わないの。さっさと化学出しなさい」
「はぁい……」
大人しく項垂れたエリスを横目に、ロンドは隣に振り向く。
「……オレは起こしたぞ」
「最後まで頼むよ」
少々体調不良でした……すみません




