表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fake and Liar  作者: うるフェリ
長編シリーズ1:赤い学園編
26/43

16.思考

先週は絶賛体調不良でお休みしていました。明日も投稿しますので、ご安心ください……

 霊障がない。その言葉に、クオンは一抹の不信感を覚えた。エリスの調査能力が著しく低いか、()()()()の話になるのか。

「本当に?全八学年でしょ、この八年間誰も関わってないのは幸運だけど、火のないところに煙は立たないよ」

 クオンの胸中を察したように言うウル。その横で、ジャラとロンドも深く頷いた。しかしエリスも困ったように眉尻を下げ、暖をとるようにカップの縁を擦る。

「そうなんですよ。私も奇怪に思ってはいたものの、ない事には無いですし……」

 その違和感に気づくだけの思考力はあるようだ。彼らの中で僅かにエリスの情報源としての信頼が補正され、そのまま話を続ける。

「噂通りの行方不明者とかはいないのー?さっき近年って言ってたじゃん!」

「近年はちょうど九年前ですね!と言いますか、第一私だけじゃまともな成果も出ませんよー。前だって、噴水に行ってみても兆候すらなかったんですよ!」

「えっ、行ったの?それでよく無事だったね君」

 予想だにしていない台詞に、クオンは最早呆れを感じた。不幸の女神に溺愛されていそうな彼女だが、スピリチュアル関連ではジャラと対極にいるようで、そういったモノと一切縁がないらしい。ロンドと言えば乗り気でない割に怖いもの見たさというのだろうか、興味深そうに話を聞いていたのでエリスと同じ部類だろう。すなわち、この中で使い物になるのはこのヒト三人のみ。

この分だと、僅か二週間で学園崩壊と言うのは夢のまた夢だ。子供だから仕方ないというものだが、それはクオンも同じでライベリー達のような高度な情報収集技術はない。

 先の事を考えれば、人狼であるウルや頼もしい戦力のジャラに頼りきりというわけにもいかないだろう。自分の事は自分で、猿でもわかる簡単な真理。それが不可能な時にだけ周囲の力を借りろ__……。ただ、主体を忘れては元も子もない。未曽有の展開において行かれて、わざわざ彼らに先導してもらうわけにはいかないのだ。

それに、忌々しいながらもトライアングルから与えられたのは、居場所だけでなく、世界の保護という使命。例え未来に一級という価値がなくなってしまっても、それだけは彼ら自身の意志であることに変わりはない。展開が未曽有なら話は簡単だ。ノマドの伝手から、こちらも技術を輸入すればいい。

 よほど悩ましげな顔をしていたのか、ロンドが首を傾げてクオンを覗き込む。その疑わし気な表情に目を瞬いていると、彼は口を開いた。

「まさかだけど……この話に乗ろうなんて気はないよね?あくまで、興味本位で一時の暇潰しって言ってくれない?」

「あ!それいいね!」

 しめたとばかりにその台詞に食いつき、存外と言う目をしたロンドにジャラが肩を組んで捕まえる。これは僥倖だ。

「ね、面白そう!ゴーストとか怖い話好きだから参加希望!」

「エリス、話聞く限り人手足りないんでしょ?僕らも参加していいかな」

 断られる可能性は皆無に等しいが、万一の場合も上手く丸め込むつもりだ。しかしそんな要素すら杞憂と叩き捨てる様に、エリスは前のめりになって満天の夜空のように瞳を輝かせる。白くなびいた髪がまた、躍動感満載だ。

「本当ですか!!私今、聞きましたよ!?言質取りましたからね!!」

「もっちろん!ねぇ早く教えて、他にどんなッ__」

 一体幾つ飴玉を懐に忍ばせているのか、ウルはジャラの口にその宝石を放り込むと、代わって知的な探りを入れる。

「現状はどんな感じ?他にも人はいるの?」

「えぇ、一人……ですね!生物学担当教師のシャイル・ファーゼン先生ですよ、ご存じありませんか?」

「まだ顔合わせてないね」

「あら、それならちょうどいいじゃないですか。私さっきシャイル先生に呼ばれてたんですけど、ついでにあなた達も来ませんか?都合が合えば!」

 今から?確か、予定は全くと言っていいほど無いはず。学園において、生徒とし従事する以外では調査に全ての時間を当てていたので、しばらく連絡が取れなくたって差し支えないだろう。

 快く頷こうとしたところで、今までジャラに牽制されていたロンドが渋るように唸った。

「う~ん……君達はともかく、僕はオトマーに勉強教えてもらう予約取ってたんだよ。挨拶したらすぐ抜けるけれど、また後で二人に話聞くことにするよ」

「えぇ、僕はぁ!?ねぇ僕だって全部覚えてるよ!」

「だって寮が違うじゃないか、もし同じだったら聞けたけど」

「あ、そっか。じゃあいいや」

 珍しく納得したらしいく、大人しく退いたジャラにほっと胸をなでおろす。と思えばゴーストって美味しいのか気にならない?とエリスに食いかかっていった。彼女と言えば、その視点はなかったと僅かにも興味あり気だ。

 まず大前提として、ゴーストと言えど元は人間である。突拍子もない方向に話が進む前に、ウルが察して言う。

「シャイル先生は教員室に?」

「あ~、あまりそこにはいませんよ。あの人、固定位置がないんですよ。忙しくもないのに忙しく動き回り、酷いときなんか一時間だだっ広い校内を駆け回って探しましたからね!今日は図書館にいるらしいですけど……」

 小さく淡い溜息を吐き、頬を軽く擦る。冷え性だろうか。次は紅茶より、体を温める物の方がいいかもしれない。特にこれからの季節、イギリスは燦燦(さんさん)と降り積もる雪により銀世界へと見違える。

 時計を見やると、夕食の時間帯まであと1時間半ほどだった。少し急ぐべきか。

「そっか、それはいいね。もう行こうか?」

「そうだね、夕食までうかうかしていられないし……エリス、先生はいつもどのあたりに?」

 机の端に立てかけてあったお盆を取り出し、ウルとクオンで回収していく。磁器アンティークカップは重量があり、つやと共に高級感を物語っていた。損傷すれば大変なので、エリスには運ばせないように気を配っておかなければ。

 にこやかな礼と共に立ち上がったエリスは、周囲をくるりと見渡した。

「ここにはいないみたいなので、多分地理か……哲学にいると思いますよ!あと、先生は肩に蝶のタトゥーがはいっているので、すぐ見つかりますよ!いれば」

「肩に?じゃあタンクトップってことか」

「その通りです!冬なんて、見てるコッチが寒くなってきますよ」

 随分と丈夫なようだ。

ひとまず受付口でお盆を渡し、戻る道でウルに尋ねる。

「先生については何か有用な情報あったかな。一介の教師だった気がするけど」

 ウルはその言葉に首を傾げ、馴染みが無いのか眼鏡を掛けなおす。微かにパステルカラーに光を反射するレンズは、その優しい瞳とよく似合っていた。

「確か、元軍人だったね。上司と揉め事になって辞職したとか」

「へぇ、情感溢れるエピソード。経歴あったのに勿体無い……何したんだろう」

 辞職と言うことは、彼女が自分の意志で辞めたということ。まだ改善の余地があったかもしれないにしろ、余程の譲れない事態が発生したのだろう。ノイズに頼めば喜んで調べてくれるだろうが、興味本位で手間を掛けさせるのも嫌だった。それは単なる我儘だ。

「空軍だったって話だけれど、教師になったのも不思議だね。きっと、それは個人的な話になるのかもしれないけど……」

 あくまで夜凪のように静かな声で呟き、微笑を浮かべる。どこか無関心な、冷たいような側面が見えたのは気のせいだろうか。そういえば彼は先ほどから半分上の空で、しかし声を掛ければいつも通り落ち着いた様子で応えてくれる。

そんなことを考えていると、勢いよく手を振るロンドが目に入った。

「クオン、ウル!ありがと、片付けてくれて」

「どういたしまして。それじゃ行こうか、確か上の階だったよね

「はい、地理が五階、哲学関連は最上階ですね」

 螺旋階段を登り、指紋一つ見当たらない手すりに指先を滑らせ、視線を階下へ落とす。人気が無いのか人は全くと言っていいほどおらず、寒々しいレンガを暖色の電灯だけが照らしだしていた。それだけで、不気味にも思える雰囲気をやんわり押し返しているのだからフィルターのようなものか。

「……ねぇクオン」

 後ろから、ジャラに声を掛けられて振り向く。あどけなさと子供特有の丸い頬に、水色のガラス玉。濁っているようにも見えるし、この上なく透き通っている水面にも見える。そんな彼は、クオンが思っても見なかった質問をした。

「クオンはさ、ウルのことどう思う?人狼だもん」

「え?まぁ……確かにそうだけど、人狼の前にウルじゃん。お人好し過ぎるのもどうかと思うけどね」

 そんなだから食材としてストーカーされるのだ、という言葉を飲み込む。どうして今更そんなことを聞くのかはよくわからないが、ただ言葉の抑揚に突っかかりを感じた。単に人狼という異質が超過した存在に対し彼ら悪魔がどう思っているのか気になるのか、それとも。

「……僕らはノマド達と違うし、隔たりがあるのも確実だけど。それが主義にどうこう言う権利もないでしょ?」

 変に感情的になるのも、倫理観にかけた答を述べるのも好きじゃない。それなら、ハナから突っぱねてやった方がいいのだ。

「ふーん……何かクオンらしー」

「拗ねないでよ」

 二人で密かに笑っていると、それに気づいたロンドは不思議に思って目を瞬かせる。クオンはほとんど愛想笑い、というか世間体向きの笑みを張りつけていたので、笑っているのは滅多に見なかった。流石バイオレット寮に入るだけあるもの、やはりジャラは凄い。

 五階に到着し、五人は本棚に対し垂直に進んでいった。

「ん~、いないなぁ」

「広いね、スペースが結構……」

 そう思ったところで、見覚えのある黒いローブを見つける。デニムのように生地がしっかりしている、しかし安物だろうか。衣服に頓着しない人なのだろう。

 いや、先程まで職員室にいなかったか?

「あっ、ルーク先生じゃないですか!せんせーい!」

 途端、駆けだしたエリスが白いローブの裾を踏んづけ、危うく転びそうになったところで手首を引っ張る。彼女といると心臓が持たない。まぁそんなものないが、呆れが顔に出ていたのかエリスは頭を下げて謝罪を繰り返す。

「ご、ごめんなさい!つい……」

 苦笑して誤魔化し、先を促した。顔見知り程度の彼らより、付き合いの長そうな彼女を向かわせた方がいいだろう。見たところ彼女もルークに懐いているようだし、少なくともジャラやロンドよりいいはず。

「ルーク先生は何か関わってるの?」

「はい、たまに手伝ってくれるんですよ!いつもシャイル先生と何か話してますし、近くにいらっしゃるはず……」

「へぇ、そうなんだ」

 喉の持病とは聞いていたが、彼らにも何かありそうなものだ。ただ仲がいいだけなら楽なのだが。とは言え探りを入れる前に、少しでも信頼を得なければならない。一旦思考を切り替え、こちらに背を向けて本を広げる彼に近づく。

「せんせーい!こんにちは!」

 背後からエリスが明るく声をかけると、黒い糸のような髪が見えた。目は一瞬新参三人へ向き、続いてエリスを見下ろす。

「あぁ……早速知り合ったか。……何」

「シャイル先生見ませんでした?仲間入りの報告です!」

 彼は信じられないといった風に目を見開き、やがて不審そうに眉をひそめる。確かに、心境は察せざるを得ない。クオンでも同じ態度をとるだろう。

「……アイツなら、あぁ……いた」

「本当ですか!何処にですか?」

「いや、そうじゃ……なくて」

 徐々にトーンが下がるとともに、視線が彼らの後ろへ投げられた。

「よーうエリス!どうした?あ、さっき頼んだやつ?てかお前なんだ、今日はまた騒がしーなぁオイ」

「痛っ、いたッ!ちょっと先生、やめてくださいって何度も言ったじゃないですか!」

 突然彼らの背後から腕が伸び、エリスの頭を乱雑に撫でまわした。せっかく直した髪が、またぐちゃぐちゃだ。彼女はこちらに気づくと、薄い灰色の瞳を四人へ向ける。まるで大理石のようだ。

「あ、お前ら転校生の?なんだよー、エリスはやんねぇぞ?」

 ニヨニヨとしながら髪を直す上からまた見出し、愉快気に笑う。その一方、エリスはだいぶ迷惑そうに頬を膨らませていた。

「もう、失礼ですよ!双子の話に興味持ってくれた貴重な人材なんですから!」

「はぁ!?マジかよ、お前やっと仲間を見つけたのか」

「……馬鹿な奴ら……ハッ」

 二人の後ろからルークと思わしき嘲笑が聞こえたが、シャイルが頭をぶん殴り短い呻き声に変わった。

「にしても、随分と物好きだなーお前ら。何々、見える系?スピリチュアルなステータス配分でも神様に恵んでもらった?」

 快活に喋る彼女の髪はカラスの羽のように黒く、長いが後頭部は剃っていた。赤いヘアピンがよく似合っており、灰色の瞳、黒いタンクトップにズボン、黒いブーツ……確かに黒い。細かな装飾のアクセサリーが、電灯に照らされて無機質に輝いている。赤が基調だが、銀に光る大量のピアスはどことなくライベリーと似たような趣味だ。

なるほど、パンク系か。

「こんにちは、シャイル先生。学園のホームページに載っていたくらいですし、そりゃあ気になるじゃないですか」

「そうですよ!先生、アレ誰が書いたんです?おかげで僕まで連れてこられましたよ!!」

 小規模の爆発を目の当たりにしたシャイルは、口元の笑みを深めると後ろで本を読む黒いフードを掴んで揺さぶった。扱いがとことん雑だが、ロンドの言う通り彼はお人好しのようだ。いや、手で叩き落としたくらいには癪だったらしいが。

「それ?コイツが今年の書いてんぞ」

「お前が……頼んだんだろうが……」

「やーっぱり先生じゃないですか!何余計な情報を」

 第二波の予感に、シャイルは手のジェスチャーでロンドを牽制した。

「いやだってさぁ、こういう風に釣れんじゃん?でけえ魚が」

「学園を釣り場にしないでください」

 まるで他人事のような口振りに続け、ロンドの言葉も気にせず彼女は妖し気に目を細める。

「それに今、人手が足りねぇんだった。ちょうどいい、お前ら調査手伝え」

 品定めでもするような眼差しに、彼女を僅かに冷めた目で睨む。それを悟られはしなかったが、横で和やかに微笑んでいるウルと不思議そうな顔のジャラ、未だに根に持って眉をひそめるロンドはまさに三者三様だった。

「調査ですか?具体的には?」

 ウルが訊くと、彼女は快く答える。

「今回はアリスの件だな。泣いてんのも可哀そうだし、気になるし接触試みようぜ~って感じ?」

 一瞬、クオンには彼女が何を言っているのか理解できなかった。人間が、ゴーストを……人外を救うだと?

馬鹿みたいだ。

ロンド・ホーソーン:身長164㎝ 好物:紅茶ダージリン 苦手:トマト

エリス・ラヴィ―ナ:身長158㎝ 好物:シャイルの怪しい色したケーキ 苦手:マシュマロ

オトマー・アイゼンロート:身長162㎝ 好物:ミントタブレット 苦手:冷たいもの

シャイル・ファーゼン:身長170㎝ 好物:シュクメルリ 苦手:銀(金属)

ルーク・アバヌシア:身長187㎝ 好物:水飴 苦手:半径1m以内への立ち入り、発声


他にも出る可能性がありますね。原本では上記の彼らの詳細は作っていませんでした、即興です。

半分嘘ですごめんなさい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ