7裏話.天の梯子
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「…………」
長い沈黙が続く。その静けさが言葉以上の力を持つことは、長年生きていていやがうえにも実感するものだ。
暗く、ほんのり青い地下水路。宮殿のようにも見えるが、錆びた鉄柵は所々朽ちている。壁の装飾もすっかり風化しており、柵の向こうで溜まっている黒い水に時々波紋が広がっていた。
ぴちょん ぴちょん ぴちゃ
おりんのように緩やかに消えていく水滴。オルゴールのように絶え間なく聞こえていた。足音なんてない。
「……違う。徒労だった……もう帰ろう」
「帰る?早いよ」
目が笑っていない。片方は、口元すら笑っていない。無感情な目で二人は見つめ合うと、先に足を止めた方が根負けしてまた進む。
「紛れ込んでる。ココにはいないだけで、痕跡ならあるかもしれない」
「知らない……。抜けがない。可能性は低い」
石造りの床を踏みしめる。床は濡れていた。雨上がりの石畳のように、何処から射しているかもわからない光を反射している。水面もそうだった。
何故こんなことまでしているのだろう。邪魔だ。どうしようもなく鬱陶しい蠅は、早く消すべきだ。必要以外の無駄。それが嫌いだった。面倒くさくて、何処か気怠くて。
足元に揺蕩う水は、見ていると何だか脳味噌が掻き混ぜられるように感じた。飽和するように溢れ、砕け、考えるのをやめる。そうすると楽だった。
青以外の無彩色の空間を歩き続ける。ここに灯はない。照らす必要がないから。
ふと通路の奥から目を逸らし、僅かな興味を求めて水面を見やる。少し手前の方に、極々小さな赤い反射が見えた。
「……あ」
声を出して立ち止まる。横で暢気そうに歩いていた彼も釣られて、いや共鳴するように立ち止まった。
「誰ですかぁ、ココは立ち入り禁止だよ。悪い仔だな~……」
真っ赤な目が一つ見えた。片方は隠れているのか、無いのか。
「見っけ。天使の梯子」
その言葉に反射的に武器を振るった。石灰のような白い鎖鎌。しかし、投げた先に手応えはない。
「天井は何処まで伸びてんだ?入光方向は。海の下なんて、センスがあるな」
その言葉が終わる直後、赤い目が動いた。そのまま幽霊のように姿を失い、声もなくなった。わんわんと木霊すおりんの名残が脳内に響いていた。
「……ルーフ様に、報告しよう」
「うん。そうしようか」
ぴちょん ぴちょん ぴちゃ
「 梯子なら、精々その天命を果たしなさい 」
こんばんは、うるフェリことうるです。炭酸水とラムネが好きな人狼です。
今回の裏話はいかがだったでしょうか。僕は常に頭が飽和しているので、二人の気持ちはよくわかります。皆さん睡眠はとれていますか?寝ぇやちゃんと。
さて突然ですが、今週はとある事情により更新をお休みさせていただきます。
しかし、裏話二話目を投稿いたしますのでご安心ください。
また僕は遅刻はしますが、時間が長引けば「あ~、クオリティアゲアゲしてるんだろうなぁ」と思っていてください。比例式でも作ってみてください。
一括謝罪いたします、すみません。
今回もFake and Liarをお読みいただきありがとうございました。




