6裏話.第三者(1)
RED
「大丈夫だつってんの、いい加減にしろお前マジで」
「馬鹿じゃないの?いや馬鹿ね。アンタ人間なんだから、人外の影響は体に毒よ」
「んだとクソが、マジでだりぃ……なーんで羽ってこんな執拗なんだよ、神の遣いが盗聴機能携えてていいのか」
「そんなのアタシが知るわけないでしょ」
「私は別にお前に聞いてねーし」
「骨折るわよ」
「嘘嘘冗談!待ってわりぃって」
目が本気だったので慌てて笑みを作ると、彼は呆れたように溜息を吐いた。慣れた手つきで彼女の手首に包帯を巻き、大した怪我でもねぇのに、と言う言葉に肩を竦める。
「ヒトっていうのはね、常に万一の世界に生きてんのよ。アンタはまだ甘いわ」
「人間には二発と言われ、お前には三発と言われ……もう懲り懲りなんだけどなぁ」
軍にいた頃は知り合いに二発撃てと教わった。銃は万一だ、と口癖のように何度も言っていたのをまだ覚えている。しかし目の前の彼には三発だと断言されてしまった。それなら人外こそ万一よ、と軽くあしらわれた時は衝撃的で、内心興味も引かれたと思う。その結果が今だ。
「いいよなぁ、人外さんはよ。傷口なんて一瞬で回復ってか」
「そうでもしないと死ぬからね。アンタだって、アタシがヒトじゃなけりゃ今頃死んでるわよ」
「はいはい、毎度どーも」
一応感謝はしている。そこまで礼儀知らずでもなし、ただ女よりも美人な顔面には少し腹が立つのも事実だ。肌は白くて絹のようだし、獣のようにはねた髪も深紅に輝いている。背は高いし指の形も整っているし、そのくせぱっと見男なのだ。しかも彼は人外で、性別がない種族。
更に言えば性格も非常に良い。ファンでもないのに上げだしたらキリがない。
もう腹が立って仕方がない。憤慨ものである。
「お前見てるとマジでむかつくわ……」
「あらそう、お疲れ様」
BLACK




