1990年2月18日
忘れもしないあの日。
熊本のSF作家K先生が紀伊國屋書店でヤミナベ・ポリスのミイラ男のサイン会を開いた。
当時高校を卒業したばかりの私は紺色のデニムの上下を着て、初めてK先生にお目にかかった。
K先生は缶ビールをちびちびやっていて、私がお辞儀すると、へえー、とおっしゃった。当時石油会社の社長をされていたのかな?従業員らしい女の人が、嘘〜、みたいな反応で、どんな立場かバレバレだった。
当日、上通り同仁堂5FでK先生とSFマガジンの今岡編集長さんがトークライブと小説気分講座を開くことになっていた。
早めに同仁堂に行くと、エレベーターに同乗者がもう1人。小中高ずっと同じ学校だった木星人の松田くんだった。「なんで!?」とお互いに叫んだ。「小説書きたいの?」「うん」そこに同志が確かにいた。
しかし……。
トークライブは主に青年が集まり、妙に殺気だっていて、K先生は冷や汗をかきつつも戸惑っておられた。
なんていうか、俺が、私が、SF作家になるんだ!K先生の話を聞き逃すまいぞ!という殺気だったと思う。
あの時あの場所にいた人間はどのくらい夢を叶えたことだろう?