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デッドオアデッド ~若気の至り~

作者: ルク穴禁

俺達が子供の頃やってたサバゲーはルールがバグってた。普通なら一発当たれば脱落となる。そして敵を全員脱落させるか、敵陣のフラッグを取るなり、それで勝敗は着く。


俺達がやってたサバゲーは何発当たっても脱落にならない。保護マスクや保護メガネをしてない奴も結構いたが、囲まれて蜂の巣にされたとしても脱落にならない。撃たれまくって「もうやめてー」と申告すると相手チームのジャッジで捕虜となり、将棋の駒のように相手チームの一員としてゲームに参加させられる。相手チーム全員を捕虜にすれば勝ちとなる。1チーム10~20人で朝に開始して夕方決着が着くという長丁場の日もあった。勝利して夕焼けを見ながら帰宅する日は格別だった。


参加者の殆どは18歳以下が買えない電動ガンを装備していた。下は保育園児、上は高校生と。俺も18歳以下でも売ってくれるダーティな店でエアガンを手に入れてた。俺は中1で30丁ほど集めてた。ゲームをやる時はだいたい、メーンアームにM16とファマスの二刀流電動ガン。サイドアームにデザートイーグルのガスブローバック。お年玉は全てエアガン代に消えた。


ステージは神社や森、町中。大女優主演映画のロケ地にもなった廃校も俺達にとってはステージの1つに過ぎなかった。今考えると相当迷惑なガキの集まりだったな、BB弾を撒き散らかす。


俺はBB弾にはこだわりがあった。近所のホビーショップには大きく分けて4種類のBB弾が売っていた。黒弾、白弾、緑弾、オレンジ弾と。BB弾は弾が重くなるほど値が高くなる。黒弾は一番安くて、粗悪な感じだった。弾にバリが多く、ジャム(弾詰まり)の原因になる。白弾は一番使い勝手が良く、多くのプレーヤーが使っていた。緑弾はちょっと特殊で、地面に落ちて数日経つと土に還るという。割高だったから、ガキんちょの俺達には不評だった。オレンジ弾は別名イクラ弾と呼ばれ、白弾より軽いものの安くて品質が良かったから若手(小学生)には人気だった。俺はM16にイクラ弾、ファマスに白弾を使う。弾幕と狙撃の使い分けだ。


エアガンには、電動、手動、ガス式などがあったが、勝敗に大きく関わるのがポップアップという機構だ。ポップアップとはエアガンのバレルの中に、野球でいうストレートと同じ回転をかける機能があり、BB弾の射程距離を上げる、当時の最先端のシステムだ。俺のM16とファマスにはないものだから、俺は、ファマスはそのままにして、M16のバレルを金属専用のノコギリで短く切り詰めて、ドラムマガジンに変え、特攻(ぶっこみ)スタイルを確立させた。M16の改造に1ヶ月の時間を要した。


俺は、敵のポップアップ電動ガンの弾幕を掻い潜り、接近戦で蜂の巣にする機動力タイプへと変わった。敵を蜂の巣にするとアドレナリンがドバドバ出る。俺は中2でエースコンバットとなり、高校生のプレーヤーから一目置かれる存在となった。


だが、楽しい時間は長く続かなかった。あるゲーム中、高校生のプレーヤーが小学生のプレーヤーの眼に撃ったBB弾を当ててしまい、病院に運ばれるという事故が起きた。プレーヤー全員は親に怒られ、全てのエアガンは親に没収となり、俺達の楽しいサバゲーは終わりを迎えた。


ーー事故から4年後、次のアドレナリンドバドバのステージは峠道を選んだ。俺は、中古のR32スカイラインGTRを180万円で買って、FR化してドリフトを始めた。R32スカイラインGTRは四輪駆動システムのヒューズを抜くだけでFRになる。楽しくドリフトをするために改造費は300万円を超えた。ブーストアップ、エアクリーナー、マフラー、エキマニ、サスペンション、LSD、タワーバー、7点ロールケージ、バケットシート、ステアリング、ワイドトレッドスペーサー等々。


峠道まで遠い。夕焼けを見たらそろそろ出発だとワクワクしたものだ。峠道でドリフトをするのは絶対に夜だけ。ヘッドライトの灯りで、コーナーで対向車が来てるか確認するためだ。


ドリフトを始める人の多くはマンガの頭文字Dから入るが、俺はWRCを観てやってみたいと思った。だから四駆のR32スカイラインGTRを買った。簡単にFRになってくれるのは後から知ったのだけど。


なぜストリートレーサーがいるのかというと、夜の峠には独特の魅力があるからだ。タダだし。サーキットの走行会に参加するには1万円前後要る。ルールも厳しい。天候も路面状況も選べない。サーキットでは、4点以上のハーネスやヘルメット、レーシンググローブなど必要な物が多い。気軽にとはいかない。その点、峠道では緩い独特のルールが存在するだけだ。交通量が少ない峠道といえど一般車は通る。一般車優先が常識だ。


実際の峠道のドリフトでは、マンガみたいにバトルなんてない。追走はあるけど。


ドリフトを公道でやると安全運転義務違反に引っかかるそうだ。俺はゴールド免許を貫いてるけど。たまにニュースやなんかでドリフトは危ないと、メディアが頑張ってネガティブキャンペーンをやるが、ドリフトやって死ぬ奴は殆どいない。登山は毎年国内で300人ほどが死亡、行方不明になっている。どっちが危険だよ!? どう考えても法律おかしいよね。ドリフトで事故るのは悪で、登山で死ぬのは名誉の殉職かぁ? 某アイドル事務所のお家騒動みたいに、メディアは手のひら返しの歪んだ正義感に自己陶酔してる。ドリフトを否定するなら登山で名誉の殉職してろ。海水浴や川遊びでも毎年死人が出てる。


ドリフトはモータースポーツの基礎だ。フォーミュラカーでもコーナーで目には見えないドリフトしている。ちゃんと練習すれば事故は防げる。改めて、ドリフトはちゃんと練習すれば安全な遊びだ。


若気の至り。


ーーおしまいーー

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― 新着の感想 ―
[一言] 小学生の頃、道端に落ちているBB弾を見ては「カラフルだな〜」と思っていたのですが、まさか色によってそれぞれの特性があったとは……初めて知りました。 緑色をよく見たのですが、環境によかったんで…
[良い点] 企画から参りました。 登山。 安易に登ってはいけませんね。あれは遭難すると、救助する人たちに多くの迷惑をかけますので。 本編。 若気の至り。 誰にも一つや二つありますね。
[一言] ∀・)エッセイでこの企画に参加するとはおもしろい。しかもサバゲ―。それが夕焼けにかかってくるという。なんというコアな青春でしょう(笑)
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