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白花

ーー



「・・・はぁ。」



あの迷子事件から2日後、


俺は今日も書類確認に追われていた。

もはや生気などない、無心で文章を眺めサインをする。


なんでこういうところだけアナログなんだよ。

全て電子化して音声で読み上げてくれ、多分寝るけど。



「もう少しで落ち着くと思いますので耐えて下さい。」



クロちゃんは相変わらず黙々と事務作業をしてくれていた。

俺と違って文句の一つも漏らさないし、気を抜いたりもしていない。


休憩してる?見た事ないんだけど。


俺もあの日から休憩なしで(てか、見張られてて出来ない。)確認作業を行なっている。

完全にあの時でクロちゃんからの信用を失ったみたいだなw


もう、しばらくは宿舎と事務所を行ったり来たりしている気がするなー、

俺の仕事ってなんだっけ?


いつも死んだような目をしてると言われるが、今日は特に酷いだろう。



「・・・はぁ、今日の午後は休んでいいですよ。」



すると、そんな俺をみかねてクロちゃんは筆を置きながらそう告げた。

や、優しい。飴と鞭が完璧じゃない? 泣きそうなんだけど。



「い、いいの?」


「ある程度は片付いてきましたからね。あとは少しずつ進めれば数日中には終わるでしょう。」


「パフェ食べに行っても?」


「休みですからもちろん構いませんよ。ですが、明日も仕事ですのであまりハメを外しすぎないようにしてくださいね。」



なんなのこの人、厳しい中に優しさあるとかツンデレじゃん。

まぁ、限界を迎えるギリギリまで落として、餌で再び浮上させられた感もあるけど。


でも、せっかくいいって言われたんだ!

さっさと切り上げて出来なかったことをやりまくってやる!


善は急げ、俺は荷物をまとめ上げて直ぐに立ち上がった。



「じゃ!お土産買ってくるからね!」


「期待しないで待っておきますよ。」



そのまま電光石火の勢いで事務所を後にした。




ーー




今日は第八区の中央街を歩くことにした。


中央街にはレストランや娯楽施設、服屋などさまざまな商業施設が集まっていてとても賑やかな空気をしている。


中でも家族連れやカップルが多く、俺みたいな冴えない男は少し浮くな。

ちなみに今の服装は、流石に軍服だと悪目立ちするので上着を適当に変えて、街に溶け込めるスタイル。


目的は特にないがこう言う賑やかなところを適当にフラフラするのも気分転換になって最適なのだ。



「うーん、前から行こうと思ってた喫茶店に行きたいけど、この時間じゃ流石に混んでるよなー。」



端末に記録させて置いたメモを探り、良さそうな喫茶店を探す。


すると、前から喧騒が聞こえてきた。



・・・また厄介ごと? なんで俺が外出するたびに(泣)



人垣を覗くと中心で男3人と白花の隊服を着た女性が言い合っていた。

って、白髪じゃん。



「だから!変な勧誘じゃねぇって言ってんだろ!」


「でしたら、どう言った内容だったのですか? 説明をお願いします。おかしな内容でなければ説明できるでしょう。」


「話しかけようとしただけだって言ってんだろうが!」


「ですから、彼女にどうして話しかけようと思ったのか。」


「いや、だ、だから、それは。」



・・・ただナンパしてただけなんじゃない?



白薙の後ろには庇われたのか女性が1人立っていた。

彼女は困惑したような顔をしている。

おそらく男たちが話しかける前に白髪が遮ったのだろう。



「では、とりあえず詰所まで・・・。」


「は、はぁ!? なんでだよ!? ち、違う!本当にそういうのじゃ無いんだ!た、ただ少し話でもどうかと・・・。」


「そうやって誘い込むのですか。悪辣ですね。」


「ふざけんなてめぇ! あまり適当言うんじゃねぇぞ!」



男は話を聞かない白薙にキレたのか、右腕を振り上げて殴りかかった。


あ〜あ。


白薙は冷静に一歩後ろに体を退いて避ける。

そして、そのままから空振った男の腕を掴みながら男の背中に回して地面に倒した。

他の男達は怒鳴っていた男が殴りかかった瞬間すでに逃げ出していた、すごいね、その危機察知能力。



「・・・ぐっ! いってぇ。」



白薙はとても冷たい目で男を見下ろしている。

第三者で眺めてる俺ですら少し寒気が走るね。



「現行犯ですね。もう言い逃れはできませんよ。では詰所まで・・・。」



・・・はぁ。



俺は人の群衆の中から気配を殺してそっと背後から白薙に近づいた。



ペシッ



「・・・え?」



俺はそのまま白薙に近づき頭を軽く叩く。

彼女は急な衝撃に驚いたのか目を白黒させながらこちらへと振り向いた。

そこには呆れた表情をした俺。



「・・・いや、もう少し話聞いてあげようよ。最初から相手が悪者だと決めつけてたら人相が悪い奴は皆犯罪者だぞ?」



彼女は頭を叩いたのが俺だと気づいて、軽く睨まれたが大人しく男の拘束を解いた。



・・・? 


こんなに素直にいうこと聞くとは思えなかったけどまぁいいか。



「んじゃ、白薙はその女性から話を聞いといて俺はこっちの男性から話聞いとくから。」


「何故あなたに命令されないとならないのですか?」



全然素直じゃなかったわw


白薙にとても不服そうな視線をこちらに向けられた。

俺はその視線を受けて渋々リュックから隊服を取り出し羽織る。



「「・・・ッ!」」



すると、白薙の背後から男と女性が息を呑む音が聞こえる。



「・・・だからなんです?」



白薙は俺が黒獣だと知っているので特に動揺は驚きはない。

でも俺がみて欲しいのは別の所だ。

俺は肩の腕章をトントンと指差して注目させる。


その黒い犬の紋章に三本線がついた腕章を。



「え?・・・黒犬部隊なんですね。」


「隊長な。」



そう言うとやっと気づいたのか白薙は目を見開く。


隊長の腕章は上と下に線が三本あり、副隊長は二本、隊員は一本と階級が分かりやすく判別できる様になっていた。



・・・シーンッ。



すると、俺の発言と階級に気づいた周囲の住民達が静まり返り空気が凍った様に静寂が訪れる。



俺はその空気に思わずため息をついた。



黒獣大八連隊は壁外での異物討伐等を行なっているため市民からは畏怖の対象になっている。

人外の力を持つ強大な異物に対し生身で相対する黒獣大八連隊、特に隊長は化け物と裏で言われてることも多い。

俺に今から話を聞かれる男も酷く冷や汗をかいて動揺していた。



・・・別にそんなに警戒しなくても取って食ったりしないのにな。



「あなたが・・・隊長?」


「見えない?」


「はい、とても。」



そう言った彼女に周りは驚き固唾を飲む。

化け物と呼ばれる黒獣の隊長に白花の一隊士が平然と失礼な言動を返したことに心配になったのだろう。



だが、俺は何も気にした感じのない彼女にむしろ少しの好感を抱いた。

俺は苦笑いをしながら頬をかく。



「俺もそう思うよ。」




ーー




「・・・え、罰ゲーム?」


「は、はい、そうなんです。友達とジャンケンして負けたら女性に声をかけるって話になりまして。それで、話しかけようとしたら白花の隊士さんに止められました。」



・・・あー、だから言い淀んでたのね。



確かに相手に対して失礼だし、同じ女性の白薙からも怒りを買いそうだからな。下手に正直に言うのも憚られるだろう。

でもそれなら後ろの連中と話でも合わせてただのナンパだって言えば良かったのに。



・・・あ、白薙が話聞かないから無理か。



まぁ、でもバレなければ罰ゲームだったとは気づかれないけど、ここまで大事になっちゃうとね。



「なるほどね、まぁ、それは相手に対して失礼だね。」


「は、はい、俺も悪ノリが過ぎたと思ってます。」



それにしても、隊長の腕章便利だな。

相手が低姿勢になり、めちゃくちゃしっかりと質問に答えてくれる。


これならすぐ終わりそうだ。


てか、白薙に相手女性から事情を聞くように言ったけど、これじゃ相手は何もわかってないだろうね。歩いてたら急に自分の後ろで男が補導されただけだからな。


すると、向こうから白薙が歩いてきたので俺も近づく。



「よくわからないみたいです。」


「・・・だろうね。まだ、話しかける前だったからね。」



てか、話しかけられて女性が困ってそうだったら助けようよ。補導するのが早すぎるから。



「まぁ、いいや、取り敢えず解決するか。」



2人を合わせて男を謝らせる。

罰ゲームの相手に勝手に決められた女性に謝り、男は軽く叱られていたが話しているところを見ると和解できそうだな。



「んじゃ、俺たちは席を外しますか。」



この感じならもう大丈夫だろう。



別に男性も反省してるっぽいし、女性だってこれ以上騒ぎを大きくしたくなさそうだ。

みた感じショッピングの途中みたいだしな。

ならもうこれ以上俺たちが関わっても仕方ない。

事件として処理すると仕事も増えるし、こんなに和解ムードでこれ以上掻き乱す必要はないな。



「ですが、もしかしたら油断させて誘き出すのかもしれませんよ。」


「もしそうだったら俺の見る目がなかったって事で。」



それだけ言って俺は振り返って歩き始める。

白薙は後ろを何度も振り返りながらも後ろについてきたのだった。




ーー




隊服をしまいながら、この前休憩した噴水広場に来た。


今回はパフェの移動販売はなかったが代わりにホットドックの移動販売があったのでそこで二つ買ってベンチに座って、先に座らせといた白薙に一つ手渡した。



「ほい、いる? いらないなら俺が二つ食うけど。」


「・・・いただきます。」



彼女は俺の隣に腰掛け小さくホットドックを食べ始めた。

俺も昼を食べていなかったので無言で食べ続ける、お昼としては足りないが小腹を満たす程度にはちょうどいい。


先に食べ終わったので、一緒に購入しておいたジュースを飲みながら端末をいじる。

黒獣全体へのお知らせが沢山あるが、ほとんど仕事してない今の俺には関係ないな。



「・・・と言うか、仮にあなたが黒犬部隊の隊長でも私には関係なくないですか?」



端末を眺めているとふと横から声をかけられた。

横目で見ると、食べ終わったゴミを綺麗にまとめてこちらを見上げている。



「うん、ないね。隊も違えば連隊も違うしね。だからやけに素直に聞くなって驚いたよ。」


「・・・いえ、一度あなたに負けてますからね。」



そこで俺は首を傾げた。



・・・負けた? 


勝負した記憶、会った記憶もあの時の一度しかないのだが。



「・・・ハァ。あの後は大変だったのですよ。他の隊員の方が親御さんを連れてきてくれた迄は良かったですが、目が覚めてあなたがいないと気づいたティナちゃんがまた泣き出してしまって。・・・ティナちゃんの母親が宥めてくださりなんとかその場が治りましたけど子供1人あやせないと自信がなくなりますね。」



あー、そう言うこと、てかそんなに懐かれてたの?



ただ、飴ちゃんとアイスあげただけなんだけどなー。


そう思って遠くを見てると白薙さんに冷めた横目で見られた。



「迷子の間、心の拠り所だった相手が居なくなっていたら寂しいでしょう。」



・・・こいつ、そこは鋭いの?



あんなに頭でっかちで人の感情の機微に疎そうな癖に。



「いや、でも俺がその場にいても拗れたでしょ。」



そう言うと彼女は露骨に不機嫌になる。

ただそれは俺に対してと言うより別の要因のようだ。



「本当ですよ。親御さんにあなたが保護してくれてたって言ったら、後から来た隊員が、「今更落ちたイメージを上げようと必死なんだろ」とか、「もしかしたら誘拐しようとしてたのかも」とか「子供を保護して親御さんからお金を取ろうとしたかもしれませんよ。」とか、現場を見てすらいない癖にあなたが黒獣と言うだけで散々な物言いでしたからね。おかげでティナちゃんが怒っちゃいましたから。」



うわー、その空気の中に絶対居たくなかったな。

白花と黒獣の溝は深いって前に風霧が言ってたけど結構深刻っぽいね。



「そもそも最初に話しかけていたのは私だと言うのにそんな事耳に入っていなかったように言うので私も不愉快でした。お陰でティナちゃんに私が謝ることになりましたからね。」



・・・こいつは俺が黒獣に所属していることを気にしてなさそうだな。



まぁ、最初に会った時からそんな感じはしてたけど、白花の隊員が普通にトゲを感じさせないで会話してくれるのは珍しく感じる。



「白薙は気にしないんだな。」


「何をですか?」


「俺が黒獣なこと。」



それだけ言うと彼女はどうでも良さそうに返事を返してくれた。



「関係ないですからね。あなた方黒獣部隊の方々は壁の外、私達白花部隊は壁の中、役割が違うだけで国を守っているのは同じです。と言うか、いがみ合っていないで協力するべきだと私は思っていますので。」



そう断言する彼女を見て俺は自然と笑みが溢れた。



「・・・? なにを笑っているのですか?」


「別に。・・・俺もそう思うよ。」




ーー




「・・・え?隊員が1人もいないのですか? それって隊長って言っていいのですか?」


「露骨に刺さることを言ってくるね。てか、隊員のいない部隊に隊長として配属するってどうよ?」


「公開処刑かと。・・・と言うかそれって左遷では?」



あ、やっぱりそう思う?



その後、俺はこのままダラダラしてようと思い、のんびり座っているのだが、何故か白薙も付き合ってくれてる。

お陰で話し相手には困らないから暇はしないけど、コイツって実は暇なのか?



「・・・いや、まぁ前から確かに空白だったらしいけど普通は隊員を揃えてから隊長に任命するよね?」


「それはそうでしょう。と言うか黒犬部隊って初めて見ましたね。」



しばらくなかったからしいからね。

あと、基本的に壁外任務だしそれに他の隊のフォローが主だから目立つことはないだろう。



「と言うか暁月さん。あなた『イクス』は持ち歩いてないのですか。」



そう言って白薙はなんの装備も持っていない俺に疑問を投げかけた。



イクスというのは、対異物兵器・・・アンチ・アノマリー・ウェポンの通称である。なんでそう呼ばれているのかは知らない。

連隊に所属している隊員は基本的にイクスを持ち歩くことが許可されていた。


イクスは異物に対抗できる唯一の手段で、とても強力な性能を秘めている。



「なんであんな物騒なもん持ち歩かなきゃなんだよ。今は休憩時間だよ?」


「・・・緊急の呼び出しとか、事件に巻き込まれるかもしれませんよ。」


「『導石』は持ち歩いてるから平気でしょ。」



俺は自分の腕に付けているバンクルを見せつける様に彼女の前にプラプラさせた。


導石とは、魔法を使うための触媒となる特殊な石のことである。


そう、この世界には魔法というものが存在している。


魔法には種類があり、『強化』、『破壊』、『付与』、『移動』、『隔絶』の五種類が今現在確認されている魔法の全てだ。


特に適正とかはなく、導石と魔力さえあれば魔法は誰でも使えるらしい。

だが、魔力量は個人でバラバラ、使いすぎると頭痛と倦怠感が酷くなっていくのでそんなに使いたくはない。

白薙も耳にピアスとして導石をつけている。白髪に隠れて輝く白銀のピアスがとてもよく似合っていた。



ちなみに導石を埋め込んだ装飾品の事を『導具』とも呼ぶ。



「導石で何とかなりますか?」


「ならない様な出来事に巻き込まれたら、助けが来るまで粘る。」


「・・・人任せですね。」


「自分が出来ないことは人に任せるのが俺のモットーだから。」



俺がそう得意げに言っていると彼女はいつもの無表情をさらに感情を感じさせなくなる。



「任せられませんよ。・・・他の人なんて信用できません。」



・・・ん? なんか地雷踏みかけた? 


踏み抜いとこ。



「え、なんで? 任せた方が楽じゃん。」


「何もない人には分かりません。」



しっかり踏み抜いたら思いっきり睨まれて、そう宣言された。

ついでに俺に何も無いって罵倒付きにレベルアップもしてたし。


俺はその罵倒をヘラヘラした表情で受け流す。



「怖い顔すんなよ。友達できないぞ?」



俺がそういうと彼女が突然突っ伏してしまった。

さっきまでこちらを威圧してたのに急に落ち込んでビビる。



・・・その体勢辛く無い?



「・・・友達いないの?」


「ち、違います。いらないだけです。」



若干引き攣った様な笑みを浮かべて誤魔化すがその表情を見れば一発で状況がわかるね。


これは悲しい方だな。



「だからさ、別に笑わなくてもいいけどもっと感情豊かに人の相手をしようよ。白薙は美人だけど無表情だと怖い印象があるんじゃ無い?」


「口説いてます?」


「微塵も。」



俺は笑顔が輝く様な明るい子がタイプだから。



「・・・感情を顔に出すと面倒なことが増えるのですよ。それなら無表情の方が楽です。」


「なんで?」


「顔に出すと勘違いする方が多かったからです。」



その返答に今度は俺の表情が引き攣った。


うわ、めんどくさ。

なるほど、美人は美人で大変なんだね。


これ以上続ける気は無いのか、彼女は頭を振った後に露骨に話題を変えた。



「そういえば、この間の・・・。」




ーー




しばらく白薙と適当に会話をしているとだんだん日が暮れてきた。

そろそろ家に帰ってダラダラしたいし切り上げ時だな。



「んじゃ、そろそろ帰るかな。明日も仕事だし、・・・全くしたく無いけど。」


「・・・。」



・・・?



なぜか、白薙が無言になっている。

なんでだ? さっきまで普通に会話してたのに。俺が仕事にイヤイヤなのにムカついたのかな?


まぁ、それはそれでいっか。

気にせず俺は立ち上がり、白薙に手を振りながら公園を後にしようとする。



「じゃあな。」


「・・・あ、あの。」



したのだが、何故か白薙に呼び止められた。

彼女は自分が何故呼び止めたのか分からないのか、なんかあたふたしている。



「ん?」


「こ、今度いつここに来ますか?」



思わぬ質問に俺は驚いた。


え、それ気にする?



「んー、別にここでいつも休憩してるわけじゃ無いしな。まぁ、時々はくると思うよ。」


「・・・そうですか。」


「うん、じゃあね。」



俺は何故か落ち込んだ白薙を置いて宿舎に帰るのだった。



ーー



「ん?」



その帰り、ちょっとした街灯のない路地を歩いていると。

周囲に人の気配を感じた。

それだけなら別に酔っ払いとかの可能性もあるのだが、連中からは敵意を感じられる。



「・・・。」



壁の裏に1人、近くの屋根に1人、真後ろに1人の計3人か。


そのまま歩いていると、後ろについていた男がそっと近づいてきた。



・・・取り敢えず牽制を込めて俺から声をかけるか。



「どしたの、ナンパ?」


「・・・やはり気づいているか、まぁ、隊長ならそうだろう。だが、お前はここで終わりだ。」


「・・・あっそ。返事返す前に攻撃すれば良かったのに。」


「は!?」



俺は脚に強化の魔法を発動。

そのまま後ろ向きで相手に近づき、腹に肘打ちする。


あんなベラベラ喋っちゃって、顔の位置がバレバレだろ。


横の壁に隠れていた男が塀を乗り越え、上から武器を振り下ろす。

俺はその攻撃を前に転がりながら躱し、体勢を整えた。

すると屋根から飛び降りてきた奴が腕に強化の魔法を纏わせ、こちらに殴りかかる。



「練りがあめぇよ!」



隔絶の魔法で頭上に障壁を貼り、相手の攻撃を防ぎながら前に突っ込む。



「っち!」



相手は振り下ろした武器を起動する。



(げ!あれイクスじゃん!)



これで敵が一般人じゃないことは確定した。

イクスに光条の線が集まり収束・・・する前に肉薄する。



「・・・っはや!?」



驚きで一瞬体が固まった相手の懐へと入り、

持ち手の部分を手で押し下げながら、そのまま左足で相手の頭に蹴りを入れた。



ーードサッ



これで襲撃者の男を2人無力化した。

そして振り向き残りの1人を確認する。



「で、まだやるか?白花。」



そう、相手は白花の隊士だった。

黒いローブに身を隠していたが最初に会話を始めた時点で黒獣ではない。

異物戦闘に慣れ切ったやつはしない行為だからな。イクスを取り出した時点で二択なのにさらに絞らせてくれて助かるな。



「・・・ちっ!使えないゴミどもだな!」



男は腕を振り下ろす。すると周囲に灰色の煙幕が撒かれる。



「いやいや。」



煙幕撒いてすれ違おうとした男に腹パンを入れて気絶させた。


仲間を取り返そうとしたみたいだけど、それは俺が格下の時にやる行為だろ。


この場に倒れ伏した3人を眺める。



「・・・はぁ、めんどいな。」



連中は兵器を持ち出したことで厳格な処分を受けるだろう。

誰に命じられたか知らないが馬鹿なことをしたものだ。

俺は今からその馬鹿を連れて事情聴取とかやることが増えてしまった。


億劫な気分になりながら俺は端末を取り出したのだった。



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