壁外任務-2
ーー暁月 蓮ーー
「『強化:脚力』!!」
背後から叫ばれた詠唱の後、俺の脇を黒い影が通り抜けた。
その後ろ姿に恐怖の色などは見えず、先程までの弱々しさが嘘だったかの様だ。
「・・・マジか、初めての遭遇で異物に挑める奴なんて見たことねぇぞ。」
俺はその姿を尻目に腕を下げて、傍観の構えをとった。
ズキズキ痛む肩に手を添えて傷口を押さえる。
・・・いやー、発破を掛けるためとはいえワザと攻撃に当たるのはやり過ぎたかな。完治に1週間はかかりそう。
労災ってことで1週間くらい休みほしいな。
え、いつも休みみたいなもんだろって?
それは言わないお約束。
急加速により接近した白薙に対して異物は戸惑いを見せ、苦し紛れに腕を振り下ろす。
それを見切ったように、衝撃が及ばないギリギリにまで避けて短剣型イクスを横に振るった。
異物の腕に裂傷が入る。
短剣型イクスの固定性能は伸縮と射出だったかな。
射出と言っても刃を飛ばすわけではなく、飛ばすのはイクスを模した魔力の塊になる。
それでも異物の魔装に突き刺さるくらいは出来るが刃が短いので深手は負わせ辛い。
威力が低いのが欠点だな。
異物を見上げる。
レベルとしては2くらいか。
異物が痩せこけているのは軽量化に特化し、音を出さずに獲物を仕留めるためだろう。
高威力の舌を使った攻撃も接近での近距離戦闘では使いづらそうだし、踏み付けも体重の軽さが災いして大した威力はないので避けなくても対応できるくらいだ。
白薙の初戦にしてはちょうど良さそうだ、本来の実力を出せるなら勝てる。
問題は少し動きが荒っぽいところか。なんかキレてる?
ま、異物に恐怖して動けなくなっていたさっきに比べれば余裕だろう。
手伝う必要はなさそうだな。
後は、白薙に任せて適当に折れた木の幹に腰掛ける。
・・・いや〜、さっきは異物を無視して背中を自分から見せるのは少し嫌だったな。気づいてるのに無視するのは結構しんどい、気になって仕方なかったから正直とっとと片付けたかった。
でも白薙の異物への初遭遇だし、ちょうど一体だけという好条件を逃したくはなかった。それなら肩の怪我くらい安いものだろう。
肩から手を離して血だらけになった自分の掌を眺める。
・・・これが限界。
俺には言葉で勇気づける事も、大きな背中を見せる事だった出来ない。
相手に自分でどうにかするしかないって思わせる事しかできないとはな。
今までの俺なら人に付いてくだけでよかった。
ついて行くか、適当に単独行動するか。
でも今は隊長だ。
隊員を導き、守るのが役目。
その役目を全うするのはまだまだ先だろうが、これから学んでいくとしよう。
今は、、、。
異物の攻撃に対して極めて冷静に対応している白薙を見て思わず笑みが漏れる。
少しずつ、見守って行くとしますか。
ーー白薙 エリスーー
・・・さて、どうしますか。
異物の動きは早いが対応できないほどではない。
攻撃の威力も高くなく、魔法とイクスによって強化をすれば真正面から受けても死なずにはすみそうだ。
・・・問題はこちらの火力不足。
私が今装備しているのは短剣型。
手数の多さと取り扱いのし易さに秀でてはいるが両断や貫通は難しい。
異物がこちらに大きな口を開けて迫る。
先程までは動けなくなっていたが、寧ろ今は動けなくなっていた事実に怒りが沸いているので恐怖はない。
「『移動:縮地』」
ーードンッ!
急加速を行い、異物の懐に潜り込んで胴体部分に刃を飛ばし、ダメージを与える。
【クホァアアア!】
着実にダメージは与えられている。
・・・後一歩なんですけどね。
こちらを見失ったためか、異物はその場で適当に暴れだした。
周りの地形はどんどん破壊されていき、土煙が舞い立つ。
ほんの少しの余裕が出来たのでチラリと隊長をみると、木の幹に座って欠伸していた。
・・・クスッ
本当にあの人は緊張感がない。
こんなに必死な自分が馬鹿みたいに感じる。
だが、お陰で無駄に入っていた力が抜け、視野が広がった。
異物の皮膚は薄く、軽量化に特化しているので重量は少ない。
それなら骨の密度だってそこまで高くないだろう、それなら、、、。
再び縮地を使い異物に肉薄。
こちらに気づいた異物が引っ掻いてくるのを無視して、攻撃はせずに通り過ぎる。
そして私はそのまま木の幹に足をかけ中腹まで駆け上がったのち、横に飛んで異物の横腹に拳を添える。
「『強化:掌底×破壊:風刃』!」
腕の周りに展開された風の刃。
イクスの基本性能によって増幅された刃が巨大に、鋭く、渦巻く。
それを直接異物に叩きつける!
【グォオオオ!!】
赤い鮮血が飛び散りながら異物の腹部の肉が抉られ、内側が見えた。
少しグロい。
私はそのまま重力に身を任せて落下して行く。
異物はそんな私を食い殺そうと牙を向けてくるが、それに対して私は不敵な笑みを浮かべた。
「・・・残念、終わりですよ。」
ーーピッ!
ーーードガァアアアアン!!!
魔装が剥がれた内側からであれば爆弾などの攻撃手段は非常に有効だ。
壁外で大き音を出すのは御法度らしいけど、隊長が爆弾を持ち込む事に対して咎めなかったので大丈夫だと判断した。
・・・もしたくさん来たら逃げよう。
爆風の衝撃でこちらも後ろに吹き飛ばされるが、覚悟した衝撃が訪れることはなかった。
「お疲れ様、初戦にしてはよくやったよ。」
隊長がクッションになって受け止めてくれたようだ。
そのいつも通りの気安い笑みにとても安心する。
異物は腹部を抉られるように爆散されたので、体積を大きく失い、バランスを保てず倒れ伏した。
ーーズズゥウウウン
響くような地響きと共に異物はピクリとも動かなくなった。
それと同時に私も力が抜ける。
魔法の効果が切れたのもあるが一番はどっと緊張が抜けたことだろう。
本来ならこんな外で気を抜くなんてあってはならないが隊長の腕に包まれるとすごい落ち着く。
見た目からは想像つかないがしっかりと筋肉がついていてがっしりしているのがわかった。
「・・・少し休むか?」
真上から優しい声音でそう尋ねられた。
見上げると眠たげな半目が優しく細められ、温かい笑みを浮かべている。
化かし合いのない落ち着く笑み、このような暖かさに触れたのは祖父以来かもしれない。
・・・私はその笑みを見つめ返せず目を逸らした。
恥ずかしさなのかよく分からないが顔が熱を持ち、鼓動が早まる。
戦闘の余韻で体がまだ落ち着いていないのだろうか?
「おーい、聞いてるか? 動けないならこのまま運ぶぞ。流石に大きな音を立てたから他の奴らが来そうだ。」
隊長は2時の方向を見据え、目を細めている。
私も釣られてそちらを見るが、特に違和感などは感じなかった。
おそらく見えてる景色が違うのだろう。
「す、すみません。大丈夫です、歩けます。」
ずっと抱えてもらうのも気恥ずかしいので降ろしてもらい横に並び立つ。
「・・・よし、だいぶ落ち着いてるな。じゃ、行くか、面倒な仕事をとっとと終わらせに。」
私の様子を確認した後、隊長は上着のポケットに両手を突っ込み、前を歩きだす。
その後を私は弾む足取りでついて行くのだった。
ーー暁月 蓮ーー
・・・いや、まさか本当に爆弾使うとは思わなかったわ。
確かにくる前に爆薬の話をして、「実は使えるかもと思い持ってきてます。」とか言われた時はマジで焦った。
まぁ、所詮壁付近だしそこまで強い異物も出てこないと思うから使うことはないっしょ。って、軽く判断した俺を殴りたい。
でも、火力不足を補うにはあれが一番効率良かったのも事実だからあの判断を否定する事もできないんだよなー。
・・・チラリと後ろを向くと何故か跳ねるように後をついてくる白薙が嬉しそうにしている。
その顔を見ると毒気が抜かれ、何も言えなくなる。
ま、今回は異物に立ち向かえただけじゃなく、倒す事もできたなんて初任務としては上々すぎる。
・・・まだ完遂してないけどね。
俺たちの任務は観測機の調査だからな。
仕事内容に異物の討伐は含まれていない。
特別手当は出るだろうけど、完全に蛇足だ。
「・・・あの、隊長。肩、大丈夫ですか?」
「ん?」
・・・肩?
あ、そう言えば怪我してたわ。
軽く止血して包帯を巻いておいたのでそこまで気にしてなかった。
意識を向けると、ズキズキ痛むから気にしないでほしいけど、、、。
だが流石に申し訳なさでいっぱいいっぱいな彼女の視線を受けてしまえば、罪悪感がひどく、無視はできない。
「表面を少し削られたくらいだからそこまで酷くはないよ。」
かすり傷って結構痛いけどね。
「すみません、私のせいで。」
さっきまで元気そうだったのに今はシュンとしてしまった。
感情が豊かですね。
「壁外なら怪我はつきものだしな、不覚を取った俺が悪いんだから気にすんなよ。」
「・・・え? でも隊長、その肩の傷ワザと受けましたよね?」
・・・あり? バレてる?
思わず俺は立ち止まり、冷や汗を垂らしながら後ろを振り向く。
え、バレてんの?
「い、いやー、そんなことないよー。・・・ちなみにどうしてそう思ったのかな?」
「異物の攻撃に対して初めの方は軽く対応していましたよね。で、その後、異物の手数が増えたりスピードが上がったりした訳でもないのに負傷するのは不自然かなと。」
・・・よく見てらっしゃる。
確かに初めの方は俺1人で処理しようかなって思っていた。
でも、その後に白薙が立ち上がる踏み台にしてやろうって思い直し、ワザと攻撃を喰らう事にしたのだ。
だが、その最初の動きとの違いで違和感を持たれていたらしい。
「流石に混乱していたので気付いたのは戦闘が終わってからですが、よくよく考えるとおかしいなって思ってました。」
「・・・。」
・・・何だろう。
ここまでネタバラシされると途端に恥ずかしくなるね、、、。
「・・・ですが! 次からは遅れをとりません。あの程度余裕で倒せるようになって見せます!」
そう言って白薙は意気込んでいた。
てっきり落ち込むかと思ったけど、案外やる気に満ち溢れているみたい。
なるほど、そう考えたかー。
・・・いいね。 落ち込まれるより、前向きに進んでくれた方がこちらとしても助かる。
それにしてもレベル2をあの程度か、、、。
レベル2なんて入隊してそれなりに経験を積んでもままならない相手なんだけど。
でも確かに、戦闘中の動きを見る限り、ちゃんと落ち着いてればもっと余裕を持って倒せていただろう。
それだけで彼女の基礎戦闘能力の高さが窺える。
・・・伊達に飛び級で副隊長に選ばれたわけじゃないな。
それに一度で異物への恐怖を払拭できるのも驚きだ。
異物への恐怖心は第二の試練とも呼ばれ、ここで辞めたり、壁外へ出ることが出来なくなる連中が多いのに。
本当に風霧の審美眼には恐れ入るね。
「期待してるよ、白薙。」
「はい!・・・あの、隊長一つお願いがあるんですがよろしいですか?」
「ん? なに?」
急に改まってどうしたんだろう。
なんか帽子を深く被ってモジモジしてる。
・・・トイレか?
「・・・な、名前で呼んでくれませんか? えっと、夏希もエミィさんも名前で呼んでくださるのに、隊長だけ苗字なのも、、、ほ、ほら隊長は私の上官に当たるじゃないです。」
・・・え、そんだけ?
ま、確かにな。
俺は隊長だし、白薙にとっては上司に当たる。
距離を詰めずらいだろうし、信頼関係を築くにはいいんじゃないかな?
・・・知らんけど。
下から若干顔を赤くしながら見つめられる。
そんなに緊張することでもないのに、、、。
「そう? じゃあ、行こうかエリス。」
「・・・! はい!」
本人はとても嬉しそうだ。お手軽ですね。
俺もその嬉しそうな表情を見て思わず笑みがこぼれる。
壁外なのにお互い緊張感がないことだな。
・・・こんなのもいいか。
ーー
それから少し歩き、ようやく目的地である観測機付近へと到着した。
フェンスで囲まれており、電子ロックのかけられたゲートに端末を当ててロックを解除する。
空気の抜けると共に開いた扉へと2人で入り、真ん中にある筒状の先端からアンテナが伸びた観測機に近づいた。
大きさはアンテナを含めて2メートル程の大きさがあり結構大きい。
「・・・これで周囲の地形情報が入手できるのですか。」
白薙が観測機を興味深げに見上げている。
そうだね、びっくりだよね。
これは技術班が作り上げた広範囲観測機で、円柱状のポールを地面に刺すと上にアンテナが展開され、半径3kmの広い範囲データを入手することができる。
常時地形情報を更新する為に定期的にメンテナンスが必要ではあるりそのため、定期的に人が点検に来るので、苔むしていたりはせず結構綺麗に保たれていた。
持ってきた荷物の中から、メンテナンス用の端末を取り出し、専用コードと接続して異常箇所があるかをサーチしておく。
その間はどうしても手持ち無沙汰になるので点検に訪れる人用に配置されていたキャンプチェアに腰掛けた。
腰につけていたポーチからエネルギーバー(チョコ味)を取り出して食べながら端末を覗き込む。
まだ始まってから3%しか進んでないな。
立ちっぱなしで観測機周りをグルグルしているエリスに声をかけた。
「立ってて疲れない? 座れば?」
「・・・えっと、見張りは大丈夫でしょうか?」
・・・あー、確かにさっきの異物は突如として隣に現れたからな。
ああいう風な隠密行動をとる異物は発見がしづらい。
でもそれは、肉眼で探した時の話だ。
「へーきへーき。サーチ機能付けたから周囲に熱源が確認されれば通知が来るよ。」
「・・・え?」
エリスが間の抜けた声を上げた。
それはそうでしょうね、そんな機能があるなら最初から使っとけって話だし、今まではどうしてつけてなかったんだって疑問に思うだらう。
「サーチは観測機が形状把握した場所でしか作用しないからな。今回は把握してある範囲内ではあったけど、初めての壁外だし折角ならって思ってて、、、だから怒らないで。」
俺は恐る恐るエリスの顔色を伺う。
だって、敵がどこにいるのか分かるのに怖い思いさせたから。
罪悪感は酷かったんだよ?
・・・決してサーチの存在を忘れてたわけじゃないんだからね。
すると、エリスに何を言ってるんだって目で見られた。
「・・・いえ、そこは別に気にしてませんよ。確かに実地で訓練が出来ることなんて珍しいですから正しい判断だと思います。・・・と言うより、それくらいで怒りませんよ。結果生きてますし、重傷を負いそうになったら隊長が助けてくれていたでしょうから。」
そりゃもちろん。
初めての壁外任務に俺がついてて死人が出るとか夢見が悪いとかそんなもんじゃないからね。
夜は安眠するのが心情の俺としては余計な悩みは作りたくないのだ。
「・・・情け無いのは私です。隊長に警戒しろって言われてたのに注意力が散漫になってました。要反省ですね。」
「んー、まぁ壁沿いで異物が少なかったのは事実だからねー。でも外だといつ何が起こるかわからないから常に警戒はしといた方がいいよ。」
急に地面がなくなったり逆さまになったりするから、、、。
あれはマジで最悪だった。
思わず遠い目で綺麗な空を眺める。
「・・・隊長って遠くの異物にいち早く気付いてましたよね。あれってサーチ使ってたんですか?」
「使ってないね。あれはただの危機察知能力だよ。エリスも何回か壁外任務に出れば自然と身につくから。」
嫌でもね。
きっといつかは連泊で遠出する時が来るからさ。
そしたら感知できるできないじゃなくてしないと死ぬからマジで。
もういつの間にか意識しなくても敵の位置がわかるようになっちゃったもん。
・・・これが職業病ってやつか。ッフ、俺もいつの間にか社畜になっちまったみたいだな(社畜に謝れ)
「コツとかあります?」
「違和感を見逃さないことじゃない? 新しい場所とかだと違和感に気づきづらいけど、慣れてくると目新しい場所でも不自然な動きが目につくようになるよ。」
「・・・つまり慣れと。」
「そゆこと。」
参考にならなくて悪いね。
でもそんなもんだから、結局大切なのは経験値。知らなければ何も出来ない。
つまり、俺が事務仕事できないのも仕方ないってことで、、、。
すると、接続して置いた点検用の端末が点灯しチェックが終わったことを表した。
「・・・お。 思ったより早かったな。」
いつもだったらゲームの充電とか完了してもしばらく放ったらかしにしとくのだが、流石に壁外で長居する気はないのでさっさと仕事しよう。
重い腰を持ち上げて端末を覗き込む。
『ソナー信号 正常』
『レーザースキャナ、三次元マッピング 正常』
『送信機 正常』
『受信機 正常』
・・・んー? 何が誤作動してたんだろ。
『熱源探知 無効』
「は?」
・・・無効?
異常とかじゃなくて無効にされてんの?
故障とかじゃないんだ。
しかもよりによって熱源探知。
異物を発見する際に一番必要な機能じゃんか。
「止められてるのですか?」
いつの間にか横に来ていたエリスが画面を覗き込む。
「みたいだな。・・・おかしいな、知識のない連中が弄れないようにプログラムコードを変えないと無効にでき無いはずなんだけど、、、。」
つまりコードを弄れるやつがここに来たってことか、通りで壁近くにレベル2の異物が現れるわけだ。
「付け直さないのですか?」
「いやいや、コードなんかわかるかよ。わかるならもういじってるわ。」
プログラミングは基礎しか知らん。
一時期、自作でゲームを作ってやろうと勉強してすぐに辞めたからね。
「少しお借りしていいですか。」
「・・・え?」
横で少しコードを眺めていたエリスがそう尋ねてきたので、「弄れるの?」って疑問を浮かべながら端末を渡した。
エリスは別段いつも通りにカタカタとキーボードを打った後、こちらへと返してくる。
『熱源探知 正常』
・・・へ?
「弄れんの?」
「基礎程度ですけどね。」
俺とは基準となる基礎が初めから違うっぽいね。
カッケェー。
「・・・やっぱり観測機に異常があると言うよりはコードをいじられて無効にされてましたね。」
「つまり、劣化による故障でも異物でもなかったってことか。・・・嫌な報告になりそうだなー。」
まぁでも難しいことを考えるのは俺じゃなくて風霧だからいっか。
またあいつの心労が増えそうで笑う。
「周辺を調べてみますか?」
「んー、徒労で終わりそうだからいいよ。多分あとで調査班を送られると思うしそいつらに任せよう。」
調査とかは専門知識がある奴らに任せた方がいいでしょ。
どうせ俺が調べても見落とすと思うし。
「てことで帰ろう。異常の原因も報告できそうだし、解決もしたからむしら褒められるんじゃ無い?」
「褒められる気はしませんが、帰ることは賛成です。・・・正直少し疲れました。」
初めての壁外だもんね。
俺も肩痛いしもう帰りたい。
そうとなれば善は急げ、俺は持ってきた荷物をさっさと回収しバックに詰めて背負い直した。
「よし、行くか。」
「行く時より圧倒的に準備速度が早い、、、。」
それはだって行く時は憂鬱だけど、帰ればやることないからね。
帰ってダラダラできるならさっさと準備ぐらいするよ。
若干エリスに呆れた目を向けられるが、彼女も早く帰れることには文句がないのでさっさと準備を終わらせた。
「そうだ、帰ったら黒獣入隊祝いと初任務達成祝いで飯でも行くか。人も適当に誘って。」
「ありがとうございます。ふふ、楽しみですね。」
その微笑みは温かい。
前迄はそう言った飲み会みたいなものは一切参加してなかったらしいが今回は仲間内だけでやろうと思ってるし、面倒なノリもさせないから気楽に参加してほしいな。
・・・てか、俺が一番そう言うノリが嫌いだしね。
ま、強制されないなら楽しくていいけど。
さて、帰るまでが仕事だし、帰ってから考えるとしますか。




