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黒獣大八連隊


今から103年前、

一つの大災害が起こった。


その災害は止めることが叶わなければ世界が終わる可能性があったことから『終焉災害』と世に語り継がれている。


その災害は多くの大陸を破壊しただけでなく、『異物』と呼ばれる化物を世界に産み落とした。

そのため、人々の多くは生きる居場所を失い、生き残るために世界を放浪したのだった。


その災害から2年後、

タークル大陸という、残った中で最大の大陸に人々は国を興した。

その中でも最大の3ヶ国である、ナキリス帝国、ジオルド皇国、リグルス連合国は共に手を取り合い。

異物を退けながら、人類の生存圏を獲得したのだった。


それから52年後、

資源の低下や、土地の不足により3ヶ国の関係は悪化。

それまであった協力関係は崩れ去り、今現在では常に睨み合った状態に陥っていた。




ーー『ナキリス帝国』ーー




「・・・えー、というわけで、『暁月 蓮』お前を『黒獣大八連隊』『黒犬部隊』の隊長に任命する。頑張ってくれ。」



「・・・へ?」



ナキリス帝国・・・タークル大陸の東側に存在する三大国家の一つ、ナキリス帝国は異物による被害が大きく、軍事力に最も力を入れている国家である。



その帝国の花形とも言える二大部隊の一つ、『黒獣大八連隊』略して『黒獣』。


隊の一つ一つに獣の名が冠され、帝国の剣と呼ばれている軍隊。

黒獣は主に壁外の調査と異物への対処を任されていた。



俺こと暁月 蓮は、その黒獣の統括部隊である、『黒獅子部隊』の隊長『風霧 颯太』に呼び出されていた。 



「えっと、すみません、もう一度お聞きしていいですか?」



そう言うと黒と赤の軍服に身を包んだ、年若く茶髪で目が鋭いイケメンは露骨にため息を吐く。



「・・・はぁ、だから黒犬部隊の隊長をやれって言ってんだよ。」


「もう一回。」


「次言ったら殴る。隊長やれ。」



短気だなー。もう少し心の余裕を持とうよ。

まぁ、俺の答えは決まっている。



「嫌です!」



殴られました。ぐーはなくない?

もう強制じゃん。なら最初からそう言おうよ。 あれ、言ってた?



「ったく、何度も言ったが今までお前が隊長も副隊長もやらずに一隊士でいることがおかしかったんだよ。だから今日からは隊長だ。」


「・・・はぁ、これまた急でっしゃね。」


「・・・前から言ってたからな? あと、その適当な敬語をやめろ。」



あ、いいんだ。



一応上官だから敬語で話してたけど、上官命令だからいいか。

てか、前から言われてたっけ?

全然記憶にないな。


だが、俺はふと別のことに疑問を感じた。



「・・・って、黒犬?そんなのあったっけ?」



話を聞いてる最中はスッと受け入れてたけどそう言えばそんな部隊名はきいたことがないな。

俺の少ない記憶を手繰り寄せても全然思い出せない。


そんな俺の様子に風霧は呆れた視線をこちらに向けた。



「お前なぁ、黒獣大八連隊の隊員なんだから、どんな部隊があるか把握しとけよ。」


「わりっち。」


「はっ倒すぞ。」



タメ口でいいっていったじゃん。



「黒犬部隊は前任の隊長が亡くなってからずっと空白だったんだ。黒犬部隊は連隊全体を支援できる、オールラウンダーな部隊だから隊長の選出も難しいんだよ。」



なるほどつまり俺が何でもできる完璧超人だから白羽の矢が立ってしまったのか。



「・・・お前、いろんな隊に便利屋みたいにこき使われてたから、あんまり変わらないかなって。」


「泣くよ?」



違うんだよ。確かに普段からフラフラして暇そうだねって追われたことは何回かあるけどさ。

そしたらみんな暇ならついてこいって言って、いつも死にそうな目にあってるんだよ?

一回いじめだと思って告発しようか悩んだからね?


・・・サボってたのがバレそうだからやめたけど。



「まぁ、命令ならできるだけ頑張るけど。・・・隊員って誰が配属されてるの?」



そして浮かんだ1番の疑問を首を傾げながら聞く、

黒犬部隊は空白だったはずなので隊員は1人もいなかったはずだ。



「あぁ。いないぞ。」


「ふむふむ・・・は?」


「いや、いないから。」


「隊長の意味知ってる? 隊員いないのに俺は一体誰の長なの? あ、なるほど左遷か。ならクビにしてくれよ。第五区で喫茶店でも始めるからさ。ちなみにおすすめはイチゴパフェね。」


「勝手にこれからの計画を立てるな。左遷じゃない。今はまだいないだけだ。言ったろ? 黒犬部隊は選出が難しいんだ。どの隊でも活躍できるオールラウンダーな奴なんかそうそういない。だから今慎重に探している所なんだよ。だからお前からもめぼしい奴がいたら推薦してくれると助かる。」



そんな風霧の提案を俺は鼻で笑った。



「俺にそんな見る目があると思う?」


「・・・頼むから頑張ってくれ。」



風霧は腰掛けている椅子に深く座り、疲れたように目元を押さえている。

疲れてるなら休めばいいのに、代わりに俺が休んでおこうか?



「・・・まぁ、とりあえず今日は報告だけだ。明日からは業務に入ってもらう。」


「え、説明不足じゃない?何すればいいかわからないけど。」


「端末をよくチェックしておけ。頼みたい業務を送る。事務仕事はしばらく文官をつけるから彼に頼んでくれ。いいな?」



全く良くないけどね。

初めて隊を任されるし、隊員はいない。

不安しかないんだけど?

今まで誰かについて行って言われた事だけやってきたから、動き方が分からない。



・・・ま、なんとかなるか!



「おっけー。」


「・・・しばらくはまともな仕事が出来ないと思うが、早めに人材を送る。それまでは他の隊からの頼まれごととかこなしていて欲しい。」



あ、業務にならないってバレてるね。

俺は自信満々に敬礼をして風霧に真剣な眼差しを送った。



「っは!」


「・・・お前がその目をしてる時は碌なことがないんだよな。」



ひでぇな。

人が真面目にやろうとしてるのにね。


そして、俺は黒獅子部隊の執務室を後にし、端末に送られてきた黒犬部隊の支部に向かうのだった。




ーー




第一区。


ナキリス帝国は九つの区画に分かれていて、黒獣はそれぞれの区画に一部隊配備されている。


だが、黒獣は基本壁外任務が多いため事務仕事と訓練のための支部と言っていいだろう。


黒獅子部隊は九つある区画の中で、一番中央区に近い第一区にあるが、今から向かう黒犬部隊の支部は第八区に存在していた。


距離的にはそんなに離れていないのだが、大国家なため区画一つ一つが結構広い、そのため区画は列車で繋がっていて多くの住人は列車を利用して他の区画へと行き来している。


あ、ちなみに九つ区画があるって言ったけど名前は第零区から第八区になっている。


第零区は皇帝と皇帝の親族やお偉いさん方が生活する居住区と黒獣大八連隊の本部が第零区には存在した。


滅多に行くことはないけどね。

平隊士が本部に行く用なんてないからな。


そして、俺は第一区から黒犬部隊のある第八区へと向かう列車に乗りこんだ。

今は昼時なこともあってか、列車内はそこまで混んでおらず、普通に席に座ることができた。


そりゃそうか、普通の人は今働いてる時間だしね。



ーー『一昨日から行方不明になっていた女性が今朝遺体で発見されました。今現在捜査が進められ、犯人の特定に動いています。第八区にお住まいの方は不審な人物を見かけましたら近づかず、通報のほどよろしくお願いします。』ーー



列車内のアナウンスでニュースが流れている。


って、第八区かよ。


よりによって今日から異動になった区画で物騒な事件が起きてるとかついてないなぁ。


まぁ、黒獣の仕事は主に異物への対処だから、俺が関わることはないと思うけどね。


そのままニュースを流し聞きしていると、第八区の駅へと着いた。

列車から降り、そのまま黒犬部隊の支部へと徒歩で向かう。

支部は駅からそこまで離れていないので割と早くに着いた。


黒いビルが5階建てになっており、敷地内には訓練施設や宿舎などが存在し、とても生活しやすい様に設計されている。

そのため敷地は広く、襲撃に耐えられるように高い塀が周りを囲んでいた。


俺は入り口に端末をかざしロックを外す。

事務所は確か二階にあったはずなので端末に送ってもらった見取り図を頼りに事務所へと向かった。

中は、左右に四つのデスクが並んでいて、窓際に隊長の机が部屋全体を見回せるように置いてある。



なんだ、窓際隊長ってか?



部屋の中は殺風景で、あるのは棚に元々入っている資料数点のみ。

しばらく使われていなかったので、情報漏洩を防ぐためにしっかりと部屋の中を片付けてあるっぽいね。

とりあえず隊長席に荷物を置き、椅子に腰掛ける。

すると、椅子のクッションから埃が舞い上がった。



「・・・うん、まずは掃除だね。」



・・・書類片付けてたなら部屋も掃除しといてよ。



俺の支部での初仕事は清掃業務から始まったのだった。




ーー




三日後。



pipipipipipiーーーピッ。


端末にセットしたアラームで目を覚ます。


「・・・あり? もうこんな時間?」


端末の時計を見ると時刻は午前10時をさしていた。

一瞬信じられなかったので、外を見ようと窓を見たのだが、完全遮断型の遮光カーテンを付けているせいで明かりが入らず、夜なのか昼なのかわからない。

そのため太陽がどこら辺にあるのか分からなかった。


「・・・まぁ、今日は午前休ってことでー、・・・寝よ。」


そして俺はそのまま、まだ温い布団に再び潜り目を閉じるのだった。



ーー



「・・・くぁ〜〜〜。」



昼の通勤路を欠伸をしながら歩く。

まぁ、言っても敷地内だから歩いてすぐなんだけどね。


俺は現在、届いたばかりの赤と黒を基調とした軍服に身を包んでいた。

左腕には黒犬の腕章が付いていて、厨二心をくすぐるデザインをしている。


大人だけどね。今年で22歳になりました。


癖がある黒髪を撫でながら死んだような目でビルへと入った。


何もない一階を通過して2階の事務所に入る。



「おはよ〜〜。」


「・・・おはようございます。気持ちのいい朝ですね。」



返事を期待してなかったのだが、中に入ると嫌味が飛んでくる。

丸メガネをかけてクマを目の下に拵えた、黒獅子部隊の制服に身を包んでいる男性がこちらに目を向けず書類作業をしたまま返事を返してくれた。



「おはよう。いやー、今日もいい朝だねクロちゃん。」


「今は昼です。あとその呼び方はやめてくださいと昨日言いましたよね?」



彼は、『狗廊 人志』黒獅子部隊で文官をしているエリート隊員、そんな彼は期限付きで黒犬部隊の書類業務をやってくれている。



「・・・いくらやることが無いと言ってもだらけていい理由はありません。規則正しい生活をしてください。・・・隊長に報告しますよ?」


「ごめんなさい。これからはちゃんと起きます。」



脅しをかけられた。風霧にチクられて減給されたら目も当てられない。


元々少ないのに!!


とりあえず隊長席に座る。

クロちゃんが、選別してくれた最終確認が必要な書類に目を通し、しばらく書類業務に没頭した。



数時間後、、、。



・・・パフェ食べに行きたい。



ふとした瞬間、そんな天啓が俺の頭によぎった。


だけど休憩しない?って言ったら本気で怒られそうなので無言で黙々と作業をする。だけど流石に2時間も続けたら集中力が切れてきた。



「・・・休憩してもよろしいでしょうか?」



俺が恐る恐るクロちゃんの顔色を窺いながら問いかける。

すると、クロちゃんは時計を確認してから俺の机の上に視線を送り、再び書類に視線を戻した。



「ふむ、2時間は経ちましたからね。いいでしょう、それでは10分ほど・・・。」


「よっしゃ!じゃあパフェ食べてくるね!ちゃんとお土産買ってくるからねー。」



必要な荷物をまとめて、速攻で事務所から逃げるように出て行った。

後には唖然としたクロちゃんが残る。



「・・・はぁ、全くあの方は。」



ため息を吐いてクロちゃんはまた仕事に戻るのだった。




ーー




「チョコベリーパフェ一つください。」


「はーい。750ジールです。」


噴水広場に停まっていた露店販売の車からパフェを一つもらう。

カフェでコーヒーと共に食べるのもいいのだが、こういう移動販売しているのはレアモノがある可能性があるので結構好きなのだ。



ま、今回はなかったけど。



ちなみに、ジールはナキリス帝国で普及しているポイント通貨のこと、端末をかざして会計を済ませる。


ざっと周りを見渡し、空いてるベンチを見つけそこに腰掛けた。


ビニールから容器を取り出し蓋を開けて一口頬張る。


「んーーま。」


そのまま一口、もう一口と少しずつ食べ進めて行っていると。



「うわぁーーーーーん!」



・・・目の前で泣いている女の子が現れた。



金髪をシュシュで縛った小さい幼女。

なんでこれ見よがしに俺の前で泣いてるのだろう。


え、助けろと? むしろこの状況の俺を助けて。


ベンチでパフェをパクつく男と目の前で泣く幼女。


うーん、どうしよ?

とりあえずもう一口食べるか。



「うわぁーーーん!」


「・・・大丈夫ですか?」



そうやってガン無視を決め込んでいる俺と違い幼女にある1人の女性が声をかける。

その女性は真っ白な髪を腰まで伸ばしており、とても整った綺麗な顔立ちをしていた。


服装は白と青の軍服に身を包んみ、帽子を深く被ってる。



・・・『白花』か。



白花とは、黒獣大八連隊と並ぶナキリス帝国の盾と呼ばれるもう一つの軍隊、『白花大八連隊』の略で、主に国家防衛や外交に力を入れている。



そんな彼女を俺はパフェを食べながら眺める。

幼女に視線を合わせて何があったのかを尋ねているようだ。

だが、その表情は感情を感じさせず、少しの冷たさを感じさせた。



「迷子ですか?」



彼女を見て幼女は少し後退り、また泣き出した。



「うわぁーーーん!」


「え、何故ですか!? 迷子かどうか聞いただけですよ!? な、泣き止んでください!何もしませんから!」



ダメだこりゃ、俺は重い腰を上げてベンチから立ち上がった。

そして、俺も幼女の近くで目線を合わせ、優しく微笑みかける。



「こんにちは、飴ちゃん食べる?」


「え、誰ですか?」



何故か先に白髪に反応された。

お前には聞いてないわい。

ポケットから苺味の飴を取り出して前に出す。泣いてる時は甘いモノでしょ。


すると、幼女は俺の顔と飴を交互に見て、躊躇いながら飴を手に取った。

俺はもう一度優しく微笑み、ベンチを指差す。



「疲れたでしょ?少し休もう。アイスもあるよ。」



クロちゃんのだけどね。


幼女は小さく頷き俺に着いてきた。

いやー、幼女を飴で釣って連れてこうとする俺。うん、捕まるな。


ベンチに2人で腰掛け幼女にアイスを渡した。

幼女はアイスを食べると顔を輝かせ、嬉しそうに食べ進める。

そうだよな、やっぱり甘いものは最高だよな、1日の疲れが吹っ飛ぶ気がするもん。


そんなことを考えながら、俺は前方に顔を上げた。


すると、目の前には腕を組んで仁王立ちをしている白髪が立っているのがみてとれる。


表情はよくわからないけど、睨まれてる?



「・・・黒獣の方がこんなところで何をしているのですか?」



そう言って彼女は若干の敵意を持ちながらこちらへと質問を投げかけてきた。

そんな彼女の質問に俺はしっかりと今のありのままを返す。



「・・・え、アイス食べてただけだよ?」



・・・何か?



「え、仕事は?」


「休憩。」



始めてしばらく経ってるけどね。

終わる時間はクロちゃんに伝えてないから問題ない。


チラッと白髪が幼女を見た、すると幼女は泣き出しはしなかったが震えて俺の袖を握りしめる。



「な、なんでですか?」



幼女にここまで怖がられているのを見ると可哀想だな。

本人は結構衝撃を受けたらしい、全く表情かわってないけど。



「・・・いや、そんな真顔じゃビビるよ。もう少し笑いかけようよ。」



そう、彼女は幼女に話しかける時も今もずっと笑わず無表情であった。

美人だから絵にはなるが、その分威圧感と冷たさが感じられ、少し怖い。



「・・・笑う? 何故笑う必要があるのですか?」



そんな返答を聞き、俺は頭を抱えた。


まじかこいつ、絶望的に迷子の助けに向いてないな。

俺はめんどくさくなって幼女に話しかなることにした。



「名前教えてもらってもいい? 俺は 暁月 蓮 ・・・君は?」


「・・・ティナ。」


「そっか、ティナちゃんか、いい名前だね。ところでティナちゃんはどうしてあそこで泣いてたの?」


「・・・お母さんがいない。」


「そっか、じゃあ少しここでおしゃべりしてようか。お母さんもすぐにここに来るよ。」


「・・・うん!」



幼女は最初より明るくなり再びアイスを食べ出した。

その頬張る様に俺は少し和んだ。



「何故笑う必要があるのですか?」


「お前まだ居たの!?」



先ほどよりも近い距離でさっきされた質問を再び投げかけられた。



「それはいますよ。そもそも街の住人の悩みを解決するのは白花の仕事ですから。」


「・・・泣かしてたけどね。」


「・・・。」



あ、今度は白髪が泣きそう。

俺はポケットを弄り、もう一つ飴を取り出して白髪の前に出した。



「・・・飴食べる?」


「・・・貰います。」



貰うんかい。

なんか迷子を2人相手にしてる気分なんだけど。



「・・・それで、どうするのですか?」


「んー、探しに行くとすれ違う可能性があるから動きたくは無いな。てか、あんたお母さん探しに行ってあげてくれない?」


「白薙です。」



なにが? 白鷺?



「名前、白薙 エリスです。」



急な自己紹介だな。



「そうか、俺は暁月 蓮、よろしく。んじゃ白薙さん、取り敢えずお母さんが近くの詰め所に行ってないか連絡取れる? 俺はティナちゃんからお母さんのこと聞いとくから。」



もう早く帰りたくなってきた。

早くお母さんを見つけてあげて支部に戻ろう。


ティナちゃんからお母さんの特徴を聞き出し、白薙に伝える。

白花の詰所に連絡が取れたのか何事か話し込んいるようだ。


俺はその光景を肘をつきながら眺めていると、急に左半身に体重がかかった。



「スゥー、スゥー、スゥー。」



ティナちゃんが泣き疲れたのと歩き疲れたので限界を迎えたらしい。

俺に寄りかかって寝息を立て始めた。



「全く、気楽でいいな。」



苦笑しながら頭を撫でてあげる。

ティナちゃんは気持ちよさそうに寝ている。



「・・・連絡取れました。丁度詰所に来てたみたいです。」


「そか、んじゃ俺は退散するかな。」


「・・・え? ティナちゃんはどうするのですか?」


「連絡取れたんだろ? んじゃ、交代してくれよ。白薙さんは気にして無いかもしれないけど、基本的に白花の奴らは俺たち(黒獣)を目の敵にしてるからな。・・・ティナちゃんが起きた時にケンカしてたら可哀想だから。」



そう、白花と黒獣は基本仲が悪い。


黒獣は白花を温室育ちのボンボンと呼び、白花は黒獣を獣臭い野蛮人と呼んでいる。

黒獣は戦闘が主なので気性が荒い奴らが多い、なのであながち間違ってはいない。白花はプライドが高く、内地で働く自分たちをエリートだと思っている。

確かに実力は高いし交渉ごとも上手いが、戦闘に関しては黒獣に軍配が上がるだろうけどね。


俺はティナちゃんが起きないようにそっとベンチに寝かせて、立ち上がり、公園の出口へと向かった。



「じゃ、あとは任せた。」



俺がそう言いながら手を振ると、白薙はあまり変わらない表情を若干苦々しくしていた。



「・・・はい、任されました。私1人ではうまくできませんでしたので感謝します。では、また。」



そう言って俺と白薙は別れて、俺は帰路に着いたのだった。




ーー




「お帰りなさい。では、あなたが抜けていた分の書類がこちらになります。急ぎの案件ですので、今日中に! 仕上げてくださいね。」



そして俺は帰って瞬間目の前に積まれた書類を見て頭を抱えることとなった。



「では、私は帰ります。さようなら。」


「じゃ、じゃあね。」



そして俺は、これが最後の別れにならないように必死に書類を確認したのだった。



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