異世界転移して失踪した私の親友が最強になって帰ってきた件
「!?どこ!?**どこ!」
「ダメだ!!お前も!」
そう言って後ろから羽交い締めされる。
「離して!私が責任を持って探さなきゃ!」
「今更言ったところでどうしようもねぇだろ!」
そう言って私を強引に地面へ転がす。
それでも動こうとする私を私を三人がかりで押さえつける。
「でも探さなきゃ!ハァハァ…**ー!!!」
「…***、**」
そう言うと急に意識が朦朧としてきた。
誰かの声がした後。
ドサッ…
体から力が抜けどこも筋肉が動かない。
「おい!しっかりしろ!おい!」
「転移するよ!掴まって!」
仲間の焦った声が遠くで聞こえて徐々に聞こえなくなる。
(…ごめんなさい…私が…)
意識の奥底でそう思った。
//
「う…ん…っ…」
私は目を覚ました。
そして人生最大の悪夢を思い出し、見た。
いったい何度目か分からないこの夢を。
目からこぼれ出る冷たいものを掌で抑えながら…
ー>私、ラーヤは異世界転移した。
クラスメイトと一緒に。
昼休みの時間に私のクラスの床が突然光り、そのまま“いつも”のテンプレートのように「魔王を倒してほしい…」と国王に言われた。
そして、帰る手段は魔王を倒すしかないと。
だから私たちは訓練に励んだ。
故郷に帰るために。
幸いにも素の戦闘力があったために、強くはなることができた。
一応単独でSランクの魔物を苦なくソロで倒せるぐらいには。
期待が大きくなり周囲の人に期待され上の人間との関わりが増えた一方、
訓練が厳しくなり友達とのコミニュケーションが減っていったが。
つまり孤立してしまった。
訓練を行っていくにつれ、戦闘の能力がないものは自ら異世界に住むことを決意し、訓練を放棄して一般の仕事をしていた。
そして、徐々に訓練のキツさで辞めていく者が増えていった。
最終的には当初の37人の四分の壱程度の七人になった。
そんなことが数年前から一年前までの話
そして一年前、悪夢が起こった。
一緒に転移した友達…唯一の男子友達、ナオがクエスト中に敵の攻撃を受け重傷になりそのまま失踪した。
クエストの場所はよく人が失踪しそのまま帰ってこないことで有名な、
「幻影の森~恐怖を添えて~」
だった。
幻影の森(以下略)は、それほど他の森と変わらない。
二つをを除いては。
幻影の森(以下略)では、数十所に世界のどこかに吹っ飛ぶ小さいエリアがある。
そこの場所にあるエリアに掠ってしまうと、強制的に飛ばされる。
注意していても至るとこにそのエリアがあるため、プロの冒険者でも誤って入ってしまう。
しかも、エリアはいまだに全部見つかっていないため安全なところがわからない。
そのため、この森は依頼受注が少ない。
二つ目。
ただ気を付けて進むことならそこまで、行方不明者が出ることはない。
プロだから。けれど、幻覚を見せるなら話は変わる。
一部の木の葉に幻覚を見せる効果があり少し別の景色を見せることがあり、そのままエリアに掠ってしまう…。
そのせいで消えてしまうため、被害者が多い。
だけど私は、ナオと軽い気持ちでこの森での依頼を受けた。
どうせかからんやろ、と思って。
パーティーで行ってプラスαでナオを呼んだのが間違いだった…
と今でも考えてしまう…いや考える。
その時の私に言ってやりたい、即座その依頼を破棄しなさいと。
そして、ナオをパーティーに加えるなと。
この二つの選択によって一つの命を無駄にしてしまった。
これが、日本なら過失致死に問われてしまうレベルだ。
でもあれは仕方なかったと頭ではわかっている。
なぜなら幻影の森の最深部は一番、失踪されやすい。
すなわち、エリアがいっぱいあるということだ。
そこで彼は消えた。
ヘビーモスと戦闘中に。
ヘビーモスの尻尾の攻撃が背中からナオに直撃。
私を庇って。
たまたま別の魔物が現れてそれに反応してヘビーモスから注意を逸らした瞬間狙われてしまい、
そこをナオが庇った。
庇ったナオは私を突き飛ばしてその場に留まり受撃し、攻撃によって吹き飛んだナオはそのまま近くの木にぶつかり地面に倒れた。
ヘビーモスの尻尾の攻撃後のほんのわずかの隙に私は拳を叩き込んでヘビーモスの生命を叩き割った後すぐに駆け寄ったのだが…
地面には多量の血が流れておりすぐに治療が必要でナオがいつも組んでるペアの相方のユーキさん【臨時でナオと一緒に来てもらった】に、治療をお願いする。
その時にナオが手を動かした時に、地面にあった小さい魔法陣に触れてしまい辺りが黄色く発光して治った頃には、周囲にはナオの姿はなかった。
パニックになったその魔法陣に触れようとしたが、その魔法陣はもうそこには無く辺りを探そうとして意識を失いかけた時私の頭の中に、
「心配…すんなよ」
とナオの優しい声が入ってきてなんとか落ち着いたが、それもおそらく幻影のせいでこう聞かされたのだろう。
多分。
その森では見たいもの、聞きたいものを視聴させるため厄介でもある。
しかし、冒険者はそんなものには引っかからない。
そういう風に訓練されてきているから。
…この出来事は夢にまで見る。
それほどまでにショックがでかいのだろう、彼とは“親友”だから。
…ナオは私のクラスの人間ではない。
2年D組である私と2年F組のナオ。
彼は昼休み時に彼の友達であるサツキと話すために私のクラスに来ていた。
その時に巻きこまれて転移してしまった。
来てから数日後に合流した。
それまでは、全く姿を見なかった。
彼ならば私のところに一目散に来そうなのだが…。
しかし、そのあとの訓練は一緒に受けていたためそんなものは忘れていた。
一緒に汗を流し助け合ってきた。
酒に飲まれて彼に介抱してもらったり、訓練で魔力切れを起こして部屋までおぶってもらったり、街に出たときにナンパされて何処かへ連れていかれそうになった時にすっと現れて撃退したり…
(…あれ?私助けてもらってばかりだな…)
彼はこの世界に来てからずっと不安や寂しさ怒りを表に出していなかったが、一度だけ聞いてしまったことがある。
彼の本音を。
たった一言。
「国王…いや、サルが…勝手な行動やめろよ…」
ベランダから赤の月と青の月が浮かぶ夜空を見上げながら、そう吐き捨てた。
ちょうど私の方からは表情が見えずどんな顔していたのかわからなかった。
だから何を思って言ったのか…。
それはわからないけど、彼は不満や自分の意見は言うけども決して人に押し付けたりはしなかった人間だ。
言いづらいが要はいい奴だったということだ。
というかこんな汚ったない言葉を使う不満は一緒にいて聞いたことがない。
それほどのことがあったのだろう…つまり異世界転移のこと、と私は思った。
そして、今に至る。
今でもまだ思ってる。
彼がいつものように、
「よ!」
と言って私の登下校時に並んでくるみたいに気軽で戻って来ると。
そして、私に
「ラーヤ姉今日のお加減はいかが?(笑)」
と言ってきてそれで軽くじゃれ合いながら学校に行くみたいに、来てくれる。
そんな感じに。
いや来いじゃなきゃ許さん。
私は過去に思いを少しでも寄せないと自分が爆発しそうになる。
けれど、その生活は厳しくなってきた。
戦いに恐怖を覚え始めて、徐々に魔物を倒せなくなってきた。
このままだとパーティーメンバーに迷惑をかけてしまうが、仕事のためこの役職は離せない。
葛藤が生じて、
(もう辛いよ…戦うのが…)
そう思っていると…
コンコン。
「ルイさん、もう起きてください。朝ごはんを食べて出発しますよ」
扉越しにパーティーメンバーのアヤが呼ぶ。
アヤは元々の親友だったため、こうして一緒に行動している。
彼女もまた陽キャである。
ナオと同じようにクラスでもカースト上位にいる人間だった。
なぜ、こんなにも私の親友は陽キャなのだろうか?
その疑問はふと浮かんだが、考えていると絶対にアヤに入られて寝起きをみられるためすぐに返事をする。
女子としての威厳がすぐに崩れ去るから、である。
「…わかった、すぐに支度する」
「はーい」
そう言って足音が遠ざかる。
その音を確認してから布団をめくる。
ベットから立ち上がり、ゆっくりと窓の方へ歩く。
手を伸ばしカーテンを開けて、開けると同時に入った鋭い日差しに目をつむる。
しばらくして目が慣れたころに下を見ると、繁盛している市場が見下ろせる。
顔を上げて遠くを見るとカリオペ山がはっきりと見える。
そして、自分の顔を軽く叩き、軽く息を吸う。
(やらなきゃ…)
一つの雲が浮かんだ空を見上げながら、自らに気合を入れて準備し下に降りた。
//
食堂に行くとテラス席で三人が待っていた。
アヤと、ユーキとサツキだ。
「サツキさん!また卵取りましたね!それ私のなんですよ!」
「…いいじゃねかあんたのと一緒のものを食いたかったんだから」
「答えになってない!」
ピシッとサツキさんに向かって指を指すアヤ。
対するサツキさんは卵焼きを頬張りながらアヤを口説く。
その姿をみてさらに赤くなりながらピーチクパーチク言うアヤ。
…朝っぱらから騒ぎすぎや…
その姿をみてユーキは笑っている。
いや、とめろや。
何傍観してるん?
呆れながら仲裁しに入り口から席へと向かう。
席のすぐ近くに来て私は、
「…またサツキさんやったの?」
「そうですよ!今日は一個のみならず三つも!」
「そこに置いてある方が悪いな!うちじゃ自分の皿以外に置かれてるものは自由に食べてた!しかもあんたの食いたかった!」
「あなたの家は大家族だからでしょ!私は4人家族!6人家族と一緒にするな!そしてさらっと照れるようなことを言うな!」
「はいはい、そこまで」
ぱんぱんと手を叩き二人の言い争いをストップさせる。
「何回目ですか?これで。もうめんどいので正直二人ともやめる」
「うっす「はーい」」
「そしてユーキさんはみてないで止めましょうね(怒)」
笑顔のままユーキさんに言うと、無言でコクコクと頷いた。
「よろしい、さっさと食べて行こう」
そう言い、空いてい席に座りチラッとサツキさんを見る。
サツキさんはアヤの彼氏だ。
アヤの彼氏のためいろいろと聞かれることが多く、あまり人なれしてない私でもさすがに話せるようになっていた。
サツキさんは決して女子に対して失礼を働かない人として女子には大人気(裏)だった。
加えて顔もいいときちゃ惚れますわなぁ…。
(クラスでもどちらかというと静かだったためにあまり‘’表‘’では話が出なかった。
先にアヤが惚れてそこから猛烈のアタックをしたと聞いている。いや、見ていた。
なんでも…タイミングを見つけては一緒にいたからなぁー、しかも適度に。
いつもいたら、ウザガられるからという理由で。
加えていろいろと…ストレートにデートに誘って惚れさせることをして動揺させようかと誘ったら、返り討ちにさせられた。
と聞いたことがある。
デートで、紳士的な対応されてしかも道に迷ったり人にぶつかりそうになった時にさりげなく手を引いてくれたり…(手を最初から繋がされてドッキドキだった!と興奮気味に話してた)と聞いていて、噂通りの人だなと感じた。
その話聞いていたらふつうは、アヤの方が告白するのでは?
と思っていたのだが、九回目のデートの時に帰り際の洒落たカフェで告白したのはサツキさんの方。
彼曰く、
「外堀を富士山なみに埋められまして…」
と、苦笑しながら言っていた。
どうやらアヤは徹底的に落としたらしい。
周りを含めて。
コワイ。
…でもフツーに女子はそういうもんか…。
そしてユーキさんはあの後も行動を共にしている。
なんでも、
「親友はおそらくこうしないとあっちに行った時許さないので」
と、真剣な表情で語っていた。
彼も気を使ってくれているのだろう…。
【いやナオの性格なら、認めたくないが絶対にエスコートや補助を頼むだろう】こう思っているの内緒だ。
でも私は、暗い思考の沼から抜け出せそうに無い…
こんなにも周りが支えてくれてるのに…
「ルイ?ご飯食べないの?」
「食べる!」
アヤに怪訝そうにうついむいていた顔を覗き込まれて、慌てて顔を上げた。
そしてすぐに目の前のご飯に手をつけた。
皆には、迷惑をかけるわけにはいかない、そう思って。
//
「ごめん!そっちに獲物行った!」
「了解!」
そう言うと、ユーキさんは答えて殺り損ねた獲物に突っ込みあっという間に短剣で絶命させた。
「どうも!」
「だいジョーブ」
そう言うとまた別のとこに突っ込んで行って依頼されたものを倒した。
今戦っているのはグレーボーアという魔物。
最近増えすぎて農作物を荒らしているから倒して欲しいという巷じゃ有名な農家さんからの依頼だった。
普段は山にいるから、おそらく数が増えてしまい人里へ降りてきてしまったので、山の中にいるボーアを叩けば山の中に戻るだろうという依頼主からの提案で、山に潜っている。
けれども…
「数が多い!」
攻撃に一区切りがついたところで、天に向かって叫んだ。
その様子を見てユーキさんは苦笑気味である。
私が倒しただけでも39匹だ。
そのほか3人は少なくとも20匹は倒している。
つまり計算では100匹以上がこの山にいる。
しかし、いくら倒してもボンボン湧いて出てくるみたいに私たちのところにやってくる。
しかもこのグレーボーア、通常の個体より幾分か強いため倒すのも少しだけ時間が増えるし労力がその分増えるため、疲労も蓄積されてきてちょっと休憩したい。
と、思っていたのだがさすがに休ませてはくれず…
「っと!」
横から突っ込んできたボーアに長剣を振るう。
すると断末魔を上げながらそこに倒れる。
その隙に別のボーアが正面から突っ込んでくるが踵落としで地面に縫い付ける。
他のボーアの対応しながら呟いてしまう。
「油断も隙もない…」
囲まれてしまったが、外側をユーキさんが徐々に数を減らしているため協力作業で減らしていく。
どんどん数が減りあと数匹になった。
面倒なため一気に私が突っ込み殴って終らせる。
屍を後ろに放り投げてでかいものを見上げる。
…私の後ろにはグレーボーアの屍の山が出来てしまった。
それを見た私とユーキさんは顔を見合わせて苦笑いした。
と、そこへ…
「ルイ!近くに洞窟があってそこからボーアたちが出てきてるみたい!」
並んで伝えてくる。
先に行って偵察していたアヤが帰ってきて私とユーキさんに伝える。
「おっけー、そこ叩こう」
「わかった!サツキにも伝える…にしても」
そう言ってボーアの山を見て、そのあと私とユーキさんの顔を交互に見て顔を青くして
「こんなのほほんとした雰囲気の人間が…こんなに倒すのは怖っ!」
そう言って木の上に飛び乗って別の場所で、おそらくボーアを倒し終わり休憩しているであろうサツキのもとへ向かったあ。
相変わらず身軽だなぁ…
アヤは体育の成績は万年5。
学年でも男子によゆーで勝てちゃうぐらいの運動神経を持ち合わせている。
ひとたび体育祭に出ればスターだ。
リレーではビリから一位にまで駆け上がったり、棒引きでは一人で5人に勝ったりと可笑しい。
それで、女子のなかでも神様として崇められてる。
ただ、運動神経に関してアヤは
「学年でもスポーツうまい人には勝てるけど、ナオの能力には勝てん…」
と、落ち込みながら言っていた。
確か、あの時はクラス対抗リレーで走順が偶然重なり勝負することになり、勝っているアヤと負けているナオにはそこそこの差があったのだがストレートで一気に抜き去り、そのままF組は一位になったのだったな。
そのあとの二人だけのゲームでの打ち上げでそう語っていたの覚えている。
強かったもんな、ナオ。
……(´Д⊂グスン…。
「さて一気に片付けるか…」
思いを切り替えねば。
ボーアの山を持っている魔法で焼き払い、灰と化したことを確認したらユーキさんと一緒に先ほど聞いた洞窟へと向かう。
道中何匹かボーアを見かけたがこちらを襲ってこなかったため、そのままにした。
そして行って洞窟に着くと洞窟の前にある中広場みたいなスペースと洞窟は、ボーアの影が見当たらなかった。
「?あれ」
アヤの情報だとここから出ているとのことだったが。
確かめようと洞窟の中に一歩踏み出したときとんでもない悪寒が背中に流れて咄嗟にその場から全力で離れ、中広場の外れまでくる。
慌てて私についてきたユーキさんは
「どうしたのルイ」
「ここから離れて!まずい感じがする!」
「…わかったアヤたちにも伝えてくる」
私がユーキの言葉に被せて言うと一瞬怪訝そうな顔をしたがすぐになおり立ち上がって洞窟とは逆方向にかけて行った。
去り際に私に向かって、
「何があるかわからんが、必ず五体満足で」
そう言って去って行った。
…立っていた場所からは離れて別のとこにいるものの悪寒が止まらない。
むしろ倍増している。
まるでナニかが近づいてる感じ。
するとさっきまで立っていた場所になにかがどすんと地面を揺らして落ちてきた。
辺りに砂ぼこりが舞い姿が見えなくなる。
けれど少しだけシルエットが見える。
人…?
違う、人間じゃない。
頭に角が二本おでこから生えている。
徐々に砂ぼこりが収まり全体が見えてきた。
すぐに目についた右腕にある一つの入れ墨…
魔族の証だ。
【作者から
この世界線での魔族は腕に大きな刺青が入ってる設定です】
しかもとびっきりまずい、魔王軍団幹部序列トップの。
「…全く人使いが荒い主だぜ……単騎で一つの街を滅ぼせって…アホちゃうか」
頭をポリポリと搔きながらぶつぶつと言う…ゲータ=コレット・テイラー。
彼の噂は悪いものしか聞かない。
単騎で国を落とし込むやつ…どんな攻撃もはじいてしまう体…感情のない声と目…
そこからつけられた異名は
暗氷の狂気。
【突然ですが作者からの注意。
途中で脱線しますお気を付けください。】
…ただ、彼からは関西人の雰囲気しか感じない…。
きっと何処かで噂に尾びれがついたのだろう。
か、これは仮の姿…いわゆる仮面とか猫をかぶっている状態か…
「…そこに隠れてるん誰ぇやぁ」
的確にこちらの方を向いて言う…この場合なんて言うのだろうか?
コレットさん?ゲータ?テイラーさん?コレット・テイラーさん?
ちょっと気になって茂みから姿を出して
「私なんですけども、何て呼びます?名前がぐっちゃぐっちゃで…」
と、手を挙げて聞く私。
「お、おう…せやなぁ、仲間からはコレたんって言われてるのぉー…って、あんた人間やないかい!」
関西人みたいなノリツッコミを披露してくれるコレたん。
流石でございます。
「どうして!ここに人間がおんねん!人払いするためにボーアを大量に発生させたのに!」
私の方を指さして威圧をにじませる、コレたん。
「…それが仇となって依頼が発注されたんですよ」
「なんやと!」
わたしの言葉にショックを受けたのかその場で膝から崩れ落ちるコレたん。
…五分後。
【作者から
ここからまともになります
いろいろ申し訳ございませんでした】
「…と、とりあえず!俺の姿見られたからには死んでもらわんとなぁ」
そう言って私に口角のみつり上げ、向き合うコレット。
途端に闘志を私に放った。
思わず後ろに下がってしまう程だった。
闘志をあてられて足が震える。
…勝てない。
そう思うほどの威圧感を持っていた。
けれどそう簡単に下がれない。
後ろには村と親友がいる、なんとしてもここで足止めしてこの場から逃げてもらわなければ…
覚悟を決め一歩踏み出して、
「…そう簡単にはやられません、ここは引いてくれます?」
剣を抜刀しながらコレットに言う。
「残念ながらそれは無茶なことやな、なんせワイの主からの指示やから、なぁ!」
そう言っていい終わらないうちに瞬間移動した速さで私に突進してきた。
咄嗟に剣の柄で相手の拳を受け止めた。
「ほう、反応するか…」
コレットがにやりと笑い獣の目をした。
「残念ながらこれでもかなり私強いからね!」
そう言うと、私を剣をコレットに押して体勢を崩す。
少し体が後ろに傾くコレット。
その僅かな隙に右足で蹴りを下からわき腹に叩き込む。
が蹴った感触は伝わってくるが微動だにしない。
どうやら効いてないようだ。
効いていないことにすこし動揺した。
がそれにより隙が生まれてしまい、コレットは
「軽いぞ」
そう言って私の足を手で薙ぎ払う。
「キャッ!」
声を上げて私は吹っ飛んだ。
そして、右手にあった大木に体がぶつかり叩きつけられる。
その衝撃で鎧に罅が入り粉々に砕ける。
(噓でしょ…?)
思わず驚く。
固い素材であるミスリルが原材料である鎧が、コレットの薙ぎ払いを直撃せずとも衝撃だけで壊れてしまう。
あの強い素材が。
衝撃と払いによるコンボで、体に大ダメージが入った。
おそらく足は数か所は折れている。
脇腹の一本の骨は粉砕した感覚がある。
はっきり言ってこのまま戦うのは不可能だ。
私はあきらめて自分に呪いをかける準備をする。
一撃必殺で自爆型の。
私が木にぶつかった後ピクリとも動かないのを見て、
「おいおい、終わりかい?そんなに弱っちぃ世界にここは成り下がっちまったか?」
コレットが、私の方に歩きながら言ってくる。
「…どうだろうな……」
そう言って自らにかける呪いを完成させてよろよろと剣に手をかけた。
そしてコレットの方へと剣を構えた。
その姿を認めたコレットは目を見開くが、すぐに笑い
「そうこなっくちゃ、な!」
そしてすぐにコレットが化け物みたいなスピードで接近して拳を放つ。
とっさにそれに対応して首を捻って回避する。
その時に剣を捨てコレットが放った拳をつかみ、勢いのまま背負い投げを繰り出す。
投げ飛ばされるコレットだが、空中で投げ飛ばしている手を掴んで逆に投げ飛ばされる。
どさっと、地面に背中から無防備に落ちる。
思わずうめき声をあげる。
痛みにより地面と平行になりうずくまる。
もっと骨が折れた…
少量の血をゲホゲホと吐きながら思った。
油断はしたくないと思い何とか顔だけをコレットの方へ向ける。
「なんや、もう終わりか?」
子供のおもちゃが壊れたみたいな表情をして見下ろしながら言った。
そして私はその姿から悟った。
…私は最初から遊ばれたのね。
ゆっくりと近づいてくるコレットを見ながら。
動けない私のそばに来て、
「とりあえず…死ね」
地獄のそこから聞こえる声で言って足を振り上げる。
…死ぬのか…それも悪くないね、それほどのことを私はした。
殺人に問われないけど殺人になること。
なんで生きてるのかそれがおかしいんだ。
そう考えた。
いや、そうずっと心の奥底で考えた。
ようやく、自分の罪で苛まれることはなくなると思うと意識が朦朧として全身の痛みが引いてきた。
そして、わずかに微笑みながらゆっくりと目を閉じた。
来るであろう衝撃に備えて。
そして、勢いよく振り下ろされる気配がした。
どうせ自爆型の呪いが発動すると考えて。
…
…。
その時、近くでスタっと軽い何かが落ちる気配がした。
そして、ボコッと音がした後コレットのうめき声とともに気配が吹っ飛んだ。
代わりになぜか暖かくて懐かしい気配を感じた。
ゆっくりと目を開けるとそこには人が立っていた。
群青色の半袖のシャツに黒の長ズボンを履き、肌の見える部分には包帯が巻かれていて顔にも当然巻かれていた。
まるでミイラが服を着ているかのように。
私を護るようにコレットに向かい合い、立っていた。
対するコレットはおそらく吹っ飛ばされ岩に激突し服と体がボロボロになっていて、ミイラのような人を睨みつける。
「てめぇ…誰だ!」
そうコレットが吠えるように叫ぶが、
「…」
ミイラは無言を貫き通し、そのままゆっくりと左手を前に掲げて
多分こいこいと、手招きした。
おそらくだけど煽ってるんじゃないだろうか…
その行動を見たコレットが怒りで顔を真っ赤にして先ほどとは比べ物にならない速度で、ミイラに突進した。対するミイラも即座にコレットを上回る速度で突っ込んだ。
そこから先は全く分からなかった。
攻撃速度があまりにも早かったからだ。
ただ、言えるのは二人ともわたしより圧倒的に強いこと。
そして、ミイラは魔族を上回る強さを持つこと。
その証拠に二人が衝突して数秒した後にコレットの角がへし折られ、地に伏せたのだから。
コレットは軽く痙攣しながらも、立ち上がる様子がない。
それをしっかりと目視した後、こちらの方にミイラは歩いてきた。
後ろに漫画か!と突っ込みたくなる、ゴゴゴゴゴゴゴと見えるぐらいの謎の威圧感があるが不思議と怖くはなかった。
おそらく、先ほど私を護るようにして立っていたからだ。
なら、味方に違いないと私は確信していた。
くわえてなぜか懐かしい気配を感じるのも理由の一つである。
ミイラは横たわっている私のそばに腰を下ろすと、私の腹に手をかざして
「!…!」
なにかを唱えた。
すると手に白い光が集まりだして、それはすぐに傷ついた全身を覆って痛みを引かせる。
その光はぽかぽかと暖かく布団にくるまれているかのような心地よさだった。
今までの疲れが全部吹っ飛ぶ勢い。
心地よさに目を閉じて疲れをいやしていると、徐々に布団が消えていく。
「ああ…」
思わず声を漏らしてしまう。
暖かい布団が完全に体から消えて目を開け首を動かし全身を見渡すと、傷は治っておりかすり傷一つもなかった。
血の跡も消えて少しばかりダメージの入った服を着ていただけだった。
名付けて…ダメージ戦闘服ってか?
こりゃ、売れんな。
私は地面に手をつき体を起こしミイラに礼を言おうとすると、ミイラはすくっと立って私に手を差し出す。
一瞬手を取るか迷ったが手を取って立ち上がろう…
と、しようとしたが手を取った瞬間に引っ張られてミイラの腕の中に閉じ込められた。
??????
戸惑い、硬直する私。
「ん~?」
思わず声をこぼす。
すると、ミイラは私をゆっくりと開放してミイラの正面に立たせると顔の包帯を取り始めた。
徐々に包帯が取れて…こない。
途中で取るところが絡まり、もがいていた。
表情はわからないがアタフタとしていることは伝わったのですぐに包帯を取るのを手伝う。
包帯が取れていくにつれ見たことのある輪郭が見えてくる。
ミイラは最後の包帯の膜になると、私の手を優しくつかみ顔から離す。
そして、包帯を手で力任せに一気に引きちぎり表れた姿はとても懐かしく、同時に愛おしさを感じさえられた。
夢だと思っていた。
ずっとこんなことは想像していたが起こるとは思ってなかった。
だから…
「ナ、オ!」
言葉に詰まる私。
驚きのあまり腰が抜けて座ってしまう私。
その様子を見ていたずらが成功した子供みたいに笑って
「よっ!お嬢元気だった?」
と言った。
今までの感情とうれしさによって涙腺ダムが崩壊して一気に溢れ出てきた。
すると、どうだろう。
ナオがあたふたしてきた。
「お、おう…何かすまんな。だから泣くなや」
そう言ってすぐに、私のそばに屈みこんで背中をさすってくれる。
それによってほんとにナオが生きてると実感して、ダムの崩壊速度が急加速してさらにナオを焦らせたのはいい気味だった。
そしていつの間にかナオの腕にいた私は、ナオの胸に顔を押し付けながらぽすかと叩きながら言った。
「この一年間何してたの」
そう言うとナオは軽く笑い、
「隣の国で最強になってた」
そう言って、だからお嬢を護れたのだと教えてくれた。
にわかには信じられないがほんとだろう。
今私が生きてるのが証拠だ。
でも…
…なんか腹立つ。
そう思うのも無理もないだろう。
こっちは責任感じて死にそうだったのに、こんなにも軽く現れたら怒る気も失せる。
そうするとこの気持ちはどうやって発散すればいいのかわからない。
そう思っていると、
「…詳しいことはさ、また話そーぜ?俺、今やらなきゃいけんことがあるから」
ポンポンと背中を優しくたたき私がうなずくのを確認すると私から離れてコレットの方へ向かい、担ぎ上げて近くの茂みに消えた。
…時々、ギャー!と悲鳴が聞こえ、爆発音が鳴り響くのは気のせいだろうか?
いや、多分気のせいじゃない。
すごーく不安な気持ちになり思わずコレットに対して手を合わせてしまった。
彼は怒らすともう…恐怖なためおそらく地雷を踏みぬいたのだろう。
雷という次元を明らかに超えているレベルで。
ナオを待っている間に、持っているスクロールで帰還という二文字を絢に送った。
するとすぐに了解との返事が来て私はスクロールを閉じる。
ちなみにこの携帯スクロールは二文字しか送れないため非常時以外はあまり役に立たない。
であるため、仲間とはぐれたとき以外は基本使わない。
しかも使い捨てだし高いからね。
懐が痛むわけです。
数分したのち、角がさっぱり消えたコレットがナオもとい尚輝の横を歩く。
なぜか、柔らかい空気感がするのは気のせいであろうか?
……ま、尚輝らしいや。
フッと笑い立ち上がって尚輝の腕の中に突っ込んだ。
☆
そこから色々あった。
久しぶりに尚輝に会ったパーティーメンバーは驚きでキレてガチ喧嘩になった。
特にユーキさんが。
親友だからというのもあるだろうしペアで動いていたからな。
なにか事情があるのだろう。
そして、なんやかんやあって臨時で入っていた二人…ユーキさんと尚輝は正式にパーティーに入って世界を駆けていき元の世界に戻るのだが…
その時にもうひと悶着起こる…。