紅魔の剣
[聖魔の剣]と[紅蓮の月]の合同パーティー。
合同パーティー名は期間限定で[紅魔の剣]となった。
ちょいと洒落で決めた。
朝食を食べ二時間程で異常が報告されている[第15号ダンジョン]へ到着した。
まだ朝の10時になってはいない。
先に[聖魔の剣]メンバーが六人が到着し、少し遅れて[紅蓮の月]の二名が合流した。
合わせて八人の臨時パーティー[紅魔の剣]となったのだ。
リーダーはミスリル装備に身を固める[神速のシュヒル]が務める。副リーダーは[青い氷刃マーリン]が任される事となった。
このダンジョンまでの道すがら魔物を幾匹か討伐した。
元々ダンジョン内を好むコボルトや大蛇系統の魔物が多く溢れ出ていた。
特にコボルトは坑道や古い地下道、ダンジョンを住み家としいて、このように外で出くわすのは稀である。
それはつまりこの[第15号ダンジョン]に異変が起きているのは確実だ。
だからダンジョンに突入する前に、もう一度全員で方針を確認した
「ボクがリーダーを務める事になったシュヒルです。
本当はマーリンさんに任せたかったのですが、見事本人に却下されました。責任ある立場は面倒と断られたけど食い下がり、何とか副リーダーに収まって貰ったところです。
斥候は打ち合わせ通りファーラにお願いします」
「ええ。任せて」
ハーフエルフのファーラは綺麗な顔を、少し強張らせて頷いた。シュヒルはゴメスを向き
「その後ろはゴメスに任せます。
ファーラは何かあれば無理をせずに引き返して下さい。
多少の危機ならゴメスが身体を張って守ってくれるでしょう」
「おう!任せとけ」
ドワーフの血が入ったヒューマンのゴメスが、髭面をクシャっと歪めた。この照れ隠しの顔をしたゴメスは頼り甲斐がある。その後ろを女剣士ライザ。大剣を背負っている。ゴメスを前にすると頭一つ分大きい。
次をシュヒルが担い指示を出す事となった。そして新婚の白魔法士サーラや黒魔法士クラムドを守る役目が[赤い疾風アリエッタ]。
殿にマーリンが続く。
聖魔の剣の今までの戦闘スタイルでは、ファーラが敵を見つけると報告がてら後方に下がり、サーラとクラムドの魔法士コンビを護衛していた。けれど今回はアリエッタとマーリンがその任に当たるので、ファーラも戦闘に参加しながらサポートできる
「え~っと。皆さん分かってはいると思うが、今回は攻略までは求めていません。もし手に負えないようなら速やかに引き返しギルドに報告します。
だから決して無理をしないように。以前このダンジョンは攻略しましたが、今回はその事は忘れましょう。
未踏破ダンジョンとして、新鮮な気持ちで挑みましょう!」
シュヒルの号令に皆、思い思いの返事をし決意を新たにした。崖の壁面にポッカリと口を開けた入口。
奥は暗くうかがいしれない。
この[第15号ダンジョン]。通称[初心者泣かせ]の中級ダンジョンだった。
初心者泣かせというのは攻略に慣れてきた若いパーティーが、同じような甘い気持ちでこのダンジョンに挑むと痛い目をみるところから名付けられた。
それまでの初級ダンジョンでは敵もあまり群れることもなく、気を抜かずコツコツ頑張れば攻略出来た。群れるのはゴブリン程度で、上位種のホブゴブリンがいなければ統率されることも無く、てんでバラバラに攻撃してけるので攻略は楽だった。
だがコボルトを犬のような顔をしたゴブリンと侮ると痛い目をみる。コボルトは背丈も大人のヒューマンの半分位しか無いし、ゴブリンとそう変わらないので同じ感覚で戦うと面食らってしまう。
コボルトは連携しながら戦うのだ。
坑道を掘り進めるので道具を使う知能もあるし、何より危なくなったら直ぐに逃走を図り仲間を呼んで来る。
逃げたコボルトを追いかけて単独になり、群れに遭遇して命を失う冒険者も多い。
丁度初心者や半人前のパーティーが、中級ダンジョンの洗礼を受ける感じだろう。
それでもコボルト単体は弱いし、革の鎧でも着ていればダメージを負わない。弓などの飛び道具は使えないし、近接武器も石を棒に巻き付けた斧のような物が殆んどだから、冷静に対処すれば倒すのは容易だ。
それに自分達より強いと分かれば、積極的に攻撃もしてこない。
コボルトに相対するなら、こちらは決して単独に成らずにパーティーを維持するのが前提となる。
だが……やはりSランクパーティー[聖魔の剣]からすればコボルトは雑魚に過ぎない。群れてもファーラが一人で全滅させることも可能だろう。
裏を返せば、それだけこの新たな危険を宿した[初心者泣かせ]のダンジョンが今はヤバいという事になる。




