聖魔の剣
【餓狼団】とのいざこざから発生した謹慎期間を終え、アリエッタとマーリン二人きりのパーティー【紅蓮の月】は召集を受け、冒険者ギルドに集った。
アリエッタの正体は王国の至宝と呼ばれたジュリエッタ姫だか、ここではマーリン以外誰もその正体に気付いていない。
輝くような黄金の髪が特徴のジュリエッタ姫。
この真紅の頭髪の仮面の女アリエッタが、ジュリエッタ本人とは誰も思わないだろう。
ただ余りにも安易なネーミングだとマーリンは思っている。
冒険者ギルドの貴賓用応接室。
先日アリエッタ達が呼ばれた同じ部屋だ。
ただ。
6人人数が増えている。
ギルドマスターのダーシュが口を開く
「皆。良く呼び掛けに応じてくれた。
今回は中級ダンジョンの[第15号ダンジョン]に異変が生じている。
表層の弱い魔物が周辺に漏れだした。
オーバーフローだと思うが……。
詳しい説明の前にお互いに紹介がまだだったな」
ダーシュは6人の者達を向き
「このヤーベで知らぬ者はいないと思うが、今をときめくSランク冒険者パーティー【聖魔の剣】だ。
そして彼がシュヒル。
神速のふたつ名を持つ魔法剣士で[聖魔の剣]のリーダーだ。他のメンバーは彼に紹介してもらおう」
ダーシュの丸投げを受けて、金髪でアンバーの瞳の貴公子的風貌を持つシュヒルが自己紹介から始めた
「ご紹介に預かりました。
ボクはシュヒル。神速の異名も頂いています。
魔法剣士です。
そしてこちらが副リーダーのゴメス。
盾役を担ってます。
ヒューマンですが見てくれ通りドワーフの血も受け継いでいます。手先が器用で武器の修復はお手の物です。
それに魔剣には並々ならぬ情熱を持っているので、是非後程、彼に貴女の剣も鑑定させていただけると有り難い」
背の低い髭面の壮年の男。
アリエッタの魅惑的な体型には目もくれず、その視線は腰のレイピアとサーベルに注がれている。
アリエッタは同意して頷いた
「有り難い。
で。その隣の女性は剣士ライザです。
女性ながら大剣を縦横に振るう様は、男顔負けの力強さが溢れています。
彼女は女性扱いされるのが苦手なので、変に気を使わず気さくに接して下さい」
赤茶のボワッとしたくせ毛で、背が女性にしては大柄だ。
立てば隣のゴメスは肩くらいしかないだろう。
近くに立て掛けてある大剣は使い込まれ、その歴戦の腕前を彷彿される
「その隣は狩人で斥候のファーラ。
美しい人だろう?
見て直ぐ分かると思うが、エルフの血も色濃く出ている。
ハーフエルフになります。
先頭は斥候として彼女に任せれば安心ですね。
弓とナイフの腕も超一流。
見た目20歳にしか見えませんが、このパーティーの最年長で150年生きている物識りです。
その知識の豊富さも武器のひとつになります」
ファーラと呼ばれた耳の尖った女性は、にこりと微笑む。
薄い金髪の長髪で、三つ編みにして後ろに流している。
瞳はグリーン。整った顔立ちの美人で物腰が柔らかだが、佇まいに隙がない。
そして彼女はじっとマーリンを見ていた
「そして彼は黒魔法士のクラムド。
第四円位階魔法の使い手です。
詠唱も普通の半分の時間で済むスキルを持ち合わせており、対個人から大規模魔法まで使えます。
性格は大人しく理知的で、荒事は好みません。
暇さえあれば魔法書を読んでいます。
余談ですが彼は下戸で、雰囲気を壊さない為にいつも酒場では葡萄液を嗜んでいます」
紺色の短髪で同じく紺の瞳の痩せた男が、軽く頭を下げた。人付き合いは苦手そうだが、付き合い方さえ間違わなければ良き友人に成れる雰囲気がある
「最後に白魔法士のサリアンナです。
聖属性強化のスキル持ちで、アンデットは彼女に任せれば大丈夫です。癒しの力も申し分ありません。
まだ16歳と若いですが、ボクの伴侶です。
道中彼女と馴れ馴れしく過ごすこともあると思いますが、新婚ですので大目に見てください」
白いワンピースのようなローブをきている。
銀髪で愛嬌のある顔の可愛らしい女の子だ。
色気は余り無い。
新婚と彼が言った時、何を思ったのか盛大に顔を赤らめキョドった。
アリエッタがみる限り【聖魔の剣】はバランスの取れた良いパーティーだと思う。
まだヒーラーが若いが、他のメンバーのサポートが有れば十分だろう。
戦闘時は狩人のファーラがサポートに付くだろうから、経験豊富な彼女に任せれば大事には至らないだろう。
ギルドマスターのダーシュは「フム]と頷き
「ということだ。
今度は【紅蓮の月】を紹介してほしい。
実は俺も良く分からんのでな」
期待を込めてマーリンに目線を向ける。
マーリンがスッと背筋を伸ばした
「私はマーリン。
伝説の賢者と同じ名前で覚え易いと思う。
私は大賢者マーリンよろしく、魔法全般を扱える。
基本的にアリエッタの師匠で彼女を鍛える為にダンジョンに潜っている。
身元はどちらも訳有りだから、詮索は止してほしい。
先の理由で一時的に他の者と組むことはあるが、パーティーメンバーは増やすつもりはない。
だから勧誘されても断る選択肢しかないので、我々に惚れても諦めてくれ」
きっと最後は冗談のつもりだろうが【聖魔の剣】のメンバーの表情をみる限り、一切伝わっていないようだ。
マーリンは続ける
「そして彼女はアリエッタ。
私の弟子だ。
先も言ったが訳有りで預かっている。
そして人を探しをしていて、もし見つかれば彼女を託すつもりだ。私はそれまでの護衛も兼ねている。
アリエッタは魔剣を使う。
魔法も扱えるが、基本自身の身体強化に使用する。
私の見立てでは、そこの[神速]に匹敵するスピードはあると思う。しかしまだまだ経験が足りない。
出来ればシュヒル君。
ダンジョンに潜る前にアリエッタと手合わせして、彼女にアドバイスをしてくれないか?」
「喜んでお引き受け致しましょう。
それと……実はパーティーにお二方共誘おうと邪心を抱いておりましたが、清く諦める事とします。
しかし、この依頼では信頼に足る仲間として大いに頼るつもりでいます。
もちろん。我々を頼って頂いて構いません」
シュヒルの問い掛けにマーリンはフッと笑い
「良い心掛けです。
そして良いパーティーですね。
ダンジョン攻略が楽しみです」
二つのパーティーの仲に、好感触を得たダーシュは膝をポンッと叩いた
「どうやら今日から枕を高くして寝れそうだ。
それと今食事を用意している。
細かい打ち合わせはその後にゆっくりようぜ!」
ダーシュは立ち上がると両リーダーに握手を求めた。
シュヒルやマーリンも、その手を固く握った。
調査とはいえ、いよいよダンジョン攻略が始まる。




