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紅蓮の舞


Aクラスパーティー【餓狼団】は、Cクラスパーティー【紅蓮の月】へ言い掛かりを付け、ダンジョン帰りの疲弊した所を襲った。

だが結果は散々足るもの……。

たった一人、疾風のアリエッタによってリーダーを含め前衛の戦士二人を失った。


【餓狼団】残りメンバーは四人。

盾。斥候。白魔法士。黒魔法士。


魔法士の二人は接近されれば終わりだ。


盾役の男はラウンドシールドを構えスキルを発動した。一定の範囲内のパーティーの防御力が上がるスキルだ。

だが、焼け石に水な感は否めない。


アリエッタはリーダーを(はふ)った後は、ゆっくりと歩いてく。そして急加速した!

盾役の男が叫ぶ


「次のリーダーは俺が務める!

アリエッタがくるぞ!

攻撃魔法の詠唱を急げ!」


盾の男は言い終わると剣を抜き放った。

前衛の戦士が生きていたら、めったに剣など使わない。


しかし盾だけでは防御しかできない。

戦士二人が消えたからこそ、攻撃もしなければならなくなったのだ


「あの女!化物か?」


見たことない圧倒的な速さで向かってくる。

アリエッタがレイピアを走りながら突きだす


「させるか!」


男は盾を相手の攻撃に合わせて前に出す。

剣先が盾に当たった瞬間にカウンターが発動する。

その機を逃さずに剣で追い討ちを掛ける予定だ!


だが……女の攻撃はなく……


──消えた!


視界からアリエッタの姿が無くなった。

ふわっと盾の奥から女が跳ねた。


盾の男は真上を見上げている。

アリエッタの顔が目の前にある。


ムーンサルトの最中。

逆さのアリエッタの足は天空を指す。


天頂で向かい合う二人。

ほんの瞬きするほどの()


仮面越しに二人の視線は交錯する


女の真紅の髪が宙に舞い靡く



──綺麗だ……



それが男が最期に見た光景……



男の両目に激痛が走る!


アリエッタは宙に舞ながら予備の細身のサーベルを抜き放ち、レイピアと合わせて男の両目を深く突いた。


アリエッタが落下を終え地に足を着いた時には、盾を構えた男の命は消えていた


「ヤツはもうダメだ!構うな!放て!」


背の低い斥候役の男が叫ぶ!

合わせて詠唱を終えた黒魔法士の上空に光の魔方陣が三つ展開される


「全てを焼き付くせ!

(スリー)(サークル)位階魔法!

ファイアーバースト!!!」


放たれた魔法はアリエッタを中心に広範囲な爆炎を発生させた!

更にはそれに合わせて斥候の男も複数ナイフを投擲した。炎を目くらませにした。麻痺毒が塗られ、かすっただけで身体の自由は奪われるだろう。


爆炎より逃げられなくする為の措置だ。


肉の焼ける匂いがする。


爆炎は更に範囲を広げると、勢いが弱まり収縮をはじめた。


「バケモノめ!」


斥候の男は後ろ向きに跳び、炎から距離を離す!

だが炎を切り裂いて現れた両刀持ちの赤い女は、炎を纏って追い縋り、男の胸に深々とレイピアを突き立てた!


男は絶命し、仰向けに倒れていく……


アリエッタはレイピアを素早く抜き去ると、最早死を待つだけとなった無力な魔法士二人へと狙いを定めた


「参ったぁあ!降参だ!何でも云うこと聞く!命だけはぁあ!」


黒魔法士が手に持ったロッドをあらぬ方向へぶん投げる。

魔法士の魔力の溜まりや詠唱を早くし魔法の威力を高めるロッドを放棄ししたと云うことは、攻撃魔法特化の黒魔法士にとっては死に等しく相手に全面降伏する証。


白魔法士も何も出来ぬまま、降伏の意味を込めて杖を落とした。


黒魔法士は更に地面に這いつくばり許しを乞う


「俺達が悪かった!許してくれ!この通りだ!」


アリエッタは地に伏せる黒魔法士の前で仁王立ちをした


「顔をあげて……」


黒魔法士は指示に従い顔を上げる


「げひゃ!!!」


醜い悲鳴を上げて、黒魔法士は仰向けに昏倒する。

男の顎を思い切り蹴ったのだ。


アリエッタは素早く男の両太腿と両腕に剣を突き立てる。

完全に無力化した


「命は助けてやる。だが。言葉を発したらその口を剣で突く。分かったな?」


黒魔法士はコクコクと涙目で頷く。

アリエッタは唖然と立ち尽くす白魔法士の傍に寄ると、容赦無くその両方の太腿に剣先を埋める。

一度抉ってから引き抜く。


白魔法士は悲鳴を上げて倒れ込む


「終わったようだな」


アリエッタの元へ歩きながら、マーリンは声をかけた


「アリエッタ。初めて人を(あや)めた感想は?」


「どうということも無く……。ただ強いて云えば『虚しい』その一言に尽きます」


Aランクパーティー【餓狼団】をたった一人で壊滅させたアリエッタ。

餓狼団もアリエッタ達にちょっかいをかけなければ、無闇に争う事も死ぬことも無かった。あまりにも無駄で無意味な戦い。誰の益にもならない


「まあ。無事で何より。残るは……後始末だけだな」


マーリンは後ろを振り返り、戦いの成り行きを見守っていた若いパーティーに声をかける


「済まないが!私達がここでこのゴミを見張っている間に、ギルドへ報告してくれないか?」


若い四人組パーティーはコクコクコクコク何度も高速で頷き、慌てて駆け出していく……。


マーリンはそれを見届けると


「グヘッ」

「済まない。ここに人がいるとは思わなかった。

いや……ゴミか」


仰向けの黒魔法士を土足で踏みつけたまま、冷たく言い放った。








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