しょーかん ゆにこん
「うまかった」
「ごちそさま」
「ゴチソサマ」
お店カウンターで手を合わせる三人。
灰色の髪のグレイがまん中。
右側には白い少女シロエ。
左側には黒い少女クロエ。
目の前には空の食器。
そしてカウンターの向こう側。
ボインな猫獣人ひとり。
「どういたしまして」
レーナさんが微笑む。
「おかわりニャ!」
シロエの隣にはスレンダーぼんきゅぼんな猫ひとり。
口の周りに食べカス引っ付けて、空の食器を母レーナに渡している。
そしてスープを注いで貰うと
「あちっあちっあち~けどウマイニャ~」
猫舌発動しながら、ペロペロしてる。
隣のシロエがピシッと手を挙げた
「しつもん。れーな。ふつう。ちな。いちいちにゃーにゃーうるさい。なんで?」
「猫だからニャーニャー言うのは当たり前ニャー。
それにあたち。チナじゃニャくてチーナニャ!」
「ちなにきいてない。ちな。うるさい」
「チナ。ウザイ」
クロエが便乗する
レーナさんは笑いながら
「猫人だからって別にニャとか言わなくてもいいのよ。ただルーツを大切にする獣人多いから、区別するために犬人はワンって、狼人はガオとか語尾につけることが多いわ。
それに今は色々混ざり合って、猫だかタヌキだか分からない丸くて青いのもいたりするから、尚更ルーツの動物にこだわったりするわね。にゃん」
「れな。かわいい」
「チナ。ウザイ。いるだけで。すごく。ウザイ」
「ひどいニャー!あたちもかわいいニャー!
ウザくにゃいニャー!ニャー!ニャー!」
何故か両手を猫招きのポーズで抗議するチーナ。
顔は器に固定。言い終わってもそのポーズのままペロペロ飲んでいる。
そんなチーナをいない者としてスルーする四人。
「グレイさん。ひとつお願いがあるのだけど、良いかしら?」
「ああ」
「そろそろお肉無くなりそうなの。補充お願い出来るかしら?」
「任せろ。直ぐ行く。
シロエ。クロエ。準備しろ。
狩りにいくぞ!」
グレイは立ち上がる
「あいさ」
「アイサ」
白と黒はトトトトトと階段を上がっていく
「それとレーナさん今月分」
グレイはゴロッと魔石をカウンターに転がす。
それをレーナさんは受け取りつつ
「あらいいのに……。いつものお肉だけで十分だわ。
それに夜もシロエちゃんとクロエちゃんに手伝って貰っているし……。
でも、ありがたくいただいとくわね。
いつまたここへ三人転がり込んでもいい分として、預かっておくわ。ですよねグレイさん?」
「ああ。俺たち冒険者はいつケガして動けなくなるか分からないからな。
その為の前払いだ。ある時に払う」
やり取りの間に白と黒が準備を終えて戻ってきた。
「はい。ますた。けん」
グレイは手を拡げる。シロエが彼の腰に剣の鞘をベルトに固定する。
その間にクロエはザックをレーナさんに渡し、中に弁当を入れて貰っている
「ますた。すわって」
グレイは腰掛け右足をあげる。
シロエは靴を脱がし冒険者用のブーツを履かせる。
左足も同じようにする。
脱がし終わった靴は入り口の方の邪魔にならないスペースに置く。
シロエとクロエも膝まであるブーツに履き替えていた。
クロエはザックをグレイに背負わせる。
「では。いくぞ。出陣だ」
グレイは立ち上がると店を出て行く。
ちょこちょこと白と黒が付いていく。
入り口の扉を閉める時、シロエとクロエはちょこんと頭を下げ挨拶した。
その二人の姿も見えなくなった
「シロちゃんとクロちゃん。グレイさんのにゃんにゃんじゃろニャ?もしかして孕ませた子供かニャ?」
チーナは三人が消えた扉をじっと見ながら呟いた
「グレイさん。まだ20歳か其処らのはずよ。実の子ではないわ。それにあなたも今更それ聞くかしら?
もうここに来て半年になるわよ」
「にゃかにゃかねぇ。あちきも気を使うこともあるニャ。グレイさん顔なんかやさぐれているしニャ。
じゃ、あのふたりはにゃんじゃろニャ?」
カウンターを挟んで親子のやり取り
「拾ったらしいわよ」
「女の子ふたり。よく落ちてたニャ?」
「それで奴隷にした」
「奴隷って!それでグレイさんあんなに偉そうに命令してるニャか?」
「まあ。偉そうなのは地じゃないかしら。
あんなにみすぼらしいけど、なんか品があるのよね。
それに、奴隷といってもあまりヒドイ扱いしてないし、ずいぶんと優しいと思うわ」
チーナは腕を組んで
「いや!それはニャイ!
小さな女の子ふたり。グレイさんと毎日抱き合ってハレンチなことしてるニャ!あちきも混ぜて欲しいニャ!
あちきの裸に見向きもしないなんて、きっと!
ロ○コンくそヤロウニャ!!」
「別にいやらしいことしてないわよ。あの二人なんか魔力が人より多くて体に溜まりやすいのですって。
魔力が溜まり過ぎると暴発や暴走したりするらしいわよ。詳しいことはしらないけれど。
グレイさん魔力を無限に溜め込む事が出来るみたいで、ああして体がふれ合うと勝手に余分な魔力を吸収しているのですってよ」
「でも!ロ○コンくそヤロウに違いないニャ!
毎日きっとあんなことニャ!こんなことニャ!
ハレンチなことしてるに違いないニャ!」
「それはどうかしらねぇ~」
娘に何やら思惑ありげな顔を向ける母
「にゃ!にゃにか知っているかニャ!」
「知りたい?でもまだお子様には早いかしら?」
「早くにゃい!早くにゃい!むしろ遅すぎてどうにかなりそうなぐらいニャ!教えてニャ!」
少し考え込むとレーナは
「まあ、グレイさんにも話していいと許されているし……。
わたしねチーナ。もう何回もグレイさんとベットでにゃんにゃんしてるのよ」
「にゃんにゃん!?ひどい!抜け駆けニャ!」
「抜け駆けも何もあんないい男ですもの。味見くらいしたくなるわ。
もうわたし。知っている限りのあんなことやこんなこともしてあげたわ……でも」
「でも……なんにゃにゃニャ!?」
チーナはごくりと唾を飲む
「ぜんぜんダメなのよねぇ~。
まあ。不能って事ね。機能不全。
男であって男じゃないって事かしら。
でも同性が好きって訳ではないわ」
「つまり……ハレンチ極まりないことしたくても出来ないってことかニャ?」
「まあ。そうなるわね。
それにシロエちゃんとクロエちゃんあんなに可愛いのに、グレイさん全然いやらしい事してないのよ。
抱き付かれている以外、手を出したりしてないし。
普段必要以外触れてもいないし……。
奴隷の刻印。魂に刻まれたらどんなハレンチな事でも言う事聞かなきゃいけないでしょう?
それこそあんなことやこんなことをさせ放題だけど、そんなことに興味は無いみたい。
ホント勿体ないわ。
わたしなら磨きに磨いてピカピカにしてあげられるのに……」
なんか物騒なことをいう母にブルッと体を震わせる娘
「そ……そうにゃのか……」
「なんかね……昔……愛を誓い合った女の人とヒドイ別れ方をしたらしいわよ……惨く捨てられたらしいわよ……それで女性不信になってしまったのですって……不能もその後遺症らしいわ……辛いわね……」
レーナななんか遠い目をした。
チーナはそれ以上言葉を告げることはできなかった。
***
道を急ぐ三人。
グレイは遅れ気味の二人に目もくれずどんどん先へ進む。
シロエとクロエは立ち止まると、シロエは右手、クロエは左手を手の平を上に向け天にかかげた
「しょーかん。ゆにこん」
「ショーカン。シリウス」
シロエの右側に角の生えた子供の白い馬が召還された。
ユニコーンである。
クロエの左側には子供の青黒い狼が現れた。
シリウスである。
ふたりはそれぞれ自らの召還した幻獣に跨がると、主の跡を追った。
追い付かれた主人グレイは、更に加速した。
歩いているのに、走っているより早い。
魔法で加速している。
三人は飛ぶように草原を突っ切った。
草原に一筋の切れ目ができた。




