もう立ってはいられないわ
アルネ村に散っていた兵隊達が集められた。
連絡役兼護衛を3名残した30名で【跳ねる子馬亭】へむかった。名目は女将マレーヌと娘シェリルの保護。
そしてそこに長期滞在している灰色の髪の男になにやら疑いありということで、事情聴取及び捕縛ついでに殺しちゃおうとダッタは思った。
美少女は……名前は聞きそびれたが村の中心の食堂に残り、ダッタの帰りの無事を祈りながら待つという。
「あなた様が妹三人を助けてここへ連れて来てくれると信じて、わたくし身を清めて待っております」
そしてダッタの耳元で囁いた
「ベットの中で待っています……あの男に代わり可愛いがってください」
その言葉でダッタは燃えたのだ。
今【跳ねる子馬亭】へ向かう道中。
指揮官ダッタの酔って腐った頭の中は、黒髪の美少女のあられのないあんな姿やこんな姿であった。
ここは村の食事処。
貸し切り状態。
というか、勝手に駐屯地にして食事を無償で提供させていた。
ダッタ達兵士一行は村外れにある【跳ねる子馬亭】へ向い、食事処には三人の兵士に護衛された黒髪の絶世の美女がいる。
そして美少女が囁いたのだ
「ここに誰も入れないでくださいませんか?わたくしその……皆さまのたくましいお姿をみて女が疼いてしまいました」
そして足の付け根までスカートをたくしあげる。
世にも美しき右足が露になる。
そして大事なとこは見えはしないが、どうも下着を履いていないらしい
「すぐに兵隊の皆さまお戻りになるのでしょう?
わたくし、ひとりじゃ満足できません。三人揃ってお相手したいの……内緒ですよ。
それと食堂と、その部屋には誰も近づけないでくださいませんかか……わたくしその……あのときの声が大きいらしくて……誰かに聞かれていずれ指揮官様にバレてしまいますわ」
「おお。すぐに食堂は閉めさせ、主人一家はここから動かないことにする。うへへへ」
にやけた顔で食堂の主人に指示を出し、食堂を閉めさせた。そして一室を用意させ『その部屋には近づかないように』と徹底させた。
美少女と兵士三人は別室の前に着いた
「今準備致します。お呼びしますから鎧を脱いでここでお待ちいただけませんか?」
部屋の扉の前。鎧を脱いだ男三人がデレデレしながらうろうろしている。そして
「どうぞお入りになってください。それと扉は閉めてくださいね、あの声が漏れてしまいます」
男達は部屋へと我先に突入し、律儀に扉を閉める。
ベットの中。肌がけ一枚で頭まですっぽりと覆っている美少女。その脇の机には丁寧に折り畳んだドレス。
三人の男達の脳内はメロメロになる
「パッとめくってください。早くお見せしたいの」
言われたまま期待に膨らませ、肌掛けをいきおい良く捲った
「やあ!君たち。ご苦労様」
「なんだ?」
兵士達は理解できなかった。そこに居たのは紫のゴスロリメイド服を着た魔族の美少女。先ほどの黒髪の娘はどこ行った?
「ついさっきまでは裸だったんだけどね。ボクの裸は男では眷属以外はフェルにしか見せないことにしたんだ。
それと君たちはここで暫く眠ってもらうよ。
殺してしまえば楽なのにね。フェルは人殺しが好きじゃないのさ」
「はあ……」
事情の飲み込めない三人の男は、訳のわからないまま床に倒れた。
もう寝息をたてている
「さてと。デモスくん」
「御意」
男達を眠らせたデモスは執事姿。長身で黒髪で黒いスーツ姿。酷薄そうな切れ長の目。薄い唇。それでいて妖艶な美男子
「ボクをお姫様のように抱いて〈跳ねる子馬亭〉の近くまで運んでくれるかな」
「御意。喜んで」
そしてデモスはリリスをお姫様抱っこして窓から外に飛び出した。
風のように村中を駆けていく
「ああ。リリスさまぁあ」
そんな声がしたとかしないとか……。
★
アルネ村の村外れに建つ【跳ねる子馬亭】
兵士のひとりが冒険者に変装して食堂の中へ入っていく、そこには三人の同じ年頃の少女とカウンター越しに女将さんだけがいた。
兵士はカウンターに座り、冒険者を装いながら情報収集をする
「おかみさん。人を探しているんだが、灰色の髪の男を知らないか?」
「あなたはその方のお仲間ですか?そんなお方には何一つお知らせすることはありません」
女将のだだならぬ様子に事情を察した男は
「ある筋から情報提供があってな、実はその男犯罪者の可能性がある」
小声で囁くと女将さんは三人の娘をカウンターから別の席に移らせた。そして男に顔を近づけて
「わたしこの食堂の女主人マレーヌと申します。実は一月ほど前からそのお探しの男がここに居着きました。村に壮年の男達がいないのをいいことに好き勝手しだしました。
そして三日程前わたしの旦那がダーレルの街の魔物の襲撃で亡くなったとの噂を聞くと更に豹変し、その日は娘が女にされて……一晩中眠らせて貰えず乙女を散らして陵辱された……。そして今も別室にて現在進行形で裸で絡み合っているのです。
昨晩は旦那に貞節を貫いていたわたくしも襲われて……旦那にも見せたこともないような恥ずかしい姿を晒してしまいました」
そしてポッと頬を赤らめる。白肌が桜色に染まり色気が滲みでる
「わたくし久しぶりで……旦那がまだ死んだともしれないのに……悶えてしまいました。悔しくて悔しくて今は旦那に会わせる顔がありません……」
男はマレーヌの色気にしばらくポケーっと放心していたが、我に返った
「コホン。あー。いやー。
その事なんだが……俺達は旦那の死も伝えに来たんだ。
噂通りだ。ダーレルの街で魔物に立ち向かい見事立派に果てられた。三日前ならもう死んでいる。
マレーヌ殿は旦那さんが生きている間は、見事貞節を守られたのだ」
「そんな……旦那がきっと助けに来てくれる。死んでなどいない……そう思い今日まで耐えに耐えて来たのに……」
そう言うとマレーヌはカウンター越しに男の手を握り
「実は兵士が多数この村へ来たという情報が入りまして、わたし同じように日々酷い目に合っている奴隷の少女をひとり、助けを求めるように送り出しました。
出来ればあなた様にもその兵隊さんに助けを呼びに行ってはくれませんか?
いくら灰色の男が強くても、多数の兵隊さんには敵わないと思います。お願いです。日々あの者に慰み者にされると思うと……女がたらしの伯爵様に母娘共々可愛がって貰った方が幾分ましと思うくらいです……旦那がいない今となっては寄る辺も必要でしょうから……」
男は我が意を得たとばかりに
「実は我々その伯爵様の使いなのです。旦那の死を知り母娘だけでは心元ないだろうとあなたたちの保護を仰せつかっております。
そして兵士達も密かに回りを取り囲んでおります。
今指揮官に知らせて来ます。すぐに助かりますよ。
灰色の男が現れたら、逃がさぬように引き留めてください。では」
そして食堂を出て行く男の後ろ姿に向けて、マレーヌはペロッと舌を出した
「グレイさんたら……昨晩は日が昇るまで……あんなに激しく……もう思い出すとね。
とても立ってはいられないわ」
もじもじしながらマレーヌは洗い場に寄りかかった。
その漏れでた吐息は甘ったるい音がした。




