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ちょろいのぉ


三日後。村へ兵士達が大挙してやって来た。


数は33名。

この村にとっては大人数だ。

少し太ったみすぼらしい口髭を蓄えた指揮官に連れられてやって来た。指揮官と言っても下から数えた方が早いボンクラだが、意気揚々と風を切って歩いて村に入場した。

ホントは馬で来たかったが、ダーレルの街の復興やら伝令やらで手配できず、歩いて来たのだ。


それでも途中の村々では相応の歓待を受け、なんだか凄くエラクなった気分上々な状態でアルネ村まで来て、そして村を練り歩いた。


村の中心の飲み屋兼食堂で今昼食を取りつつ、一応情報収集にあたっていた


「田舎臭くてたまらん!なんだこの肉は!」


といいつつ旨そうにチキンの足を頬張るダッタ。指揮官の名前である。

ダッタは小物だ。そんなヤツがマレーヌ親子を拐う担当に成ったのは、ただ彼女達を引率すれば良いだけだったからだ。

母娘との交渉は本来は[死の円舞団]が受持つ筈だった。だが、あのダーレルの街の攻防において全滅したと伝わった。誰一人生き残りはいないという。

一人団員の少女が生き残ったという情報もあったが、街をどれ程探しても目撃例がなかった。街の外れで血にまみれた赤い一文字の仮面が見つかった事と、団員と思われる大男の心臓を抉られた無惨な死体。それに女児用の血だらけで所々破けた下着があったこと。そしてその場所には潰された女の死体と男の手だけ。それに首が落とされた男の死体。

確認したら団員の服装をしていたので、ほぼ間違いなく[死の円舞団]は全滅したと思われた。


「くそ役にたたねぇ奴らだ。ウワサじやスゲー強いと騒がれていたが、蓋を開ければあの様だ!

使えねぇー。あのいい体付きの女だけでも生き残ってりゃ少しは夜が楽しめたかもしれねぇのになぁー」


ダーレルの街の攻防戦において、外の駐屯地から一歩も外に出ず、テントの中で震えていた男が偉そうな事を言う。この兵団。ダーレル攻防戦において一人の脱落者も負傷者もいなかった。

皆駐屯地に亀のようにこもって、誰一人助けにもいかなかった。

同じような兵団もいたが、彼らは戦いそして、街の人々の救出にもあたった。


ダッタ率いる兵団はダーレルの街の人達から、忌み嫌われた。臆病者の集団として、同じ仲間からも冷たくあしらわれた。

実はイチが生き残って宿屋で働いていると知ってる者も何人もいたが、誰一人イチを売らなかった。

皆知っていた。本当の英雄は誰か!あのジャイアントを三体も倒した英雄!ただなぜ彼らがイチを残して全滅したのかは誰もわからなかった。


そしてなぜか街中の死体か整然と並べられていたことも、突然火事が一斉に収まったことも誰もわからなかった。

そして魔物の死体が全て消え失せていたことも……。


ジャイアントを倒した所までは多くの人々の記憶にあった。だが、そのあとの記憶が曖昧だった。

でも多くの人達は見た。

グレーターデーモンの恐ろしき姿を!

そのグレーターデーモンが魔獣共を操って、街ダーレルを襲わせたのだろうという結論に至った。

そして街の人々は[死の円舞団]が全滅したのは、グレーターデーモンが撤退したことと関わりがあると思っていた。彼らが命掛けで街を守りあの恐ろしき悪魔の王と戦い、命を代償に撤退させたのだと……。


お気づきだろう。誰の記憶からもリリスそしてリーダは消えていた。

あのくねくねも誰の記憶にも残らなかった。

それだけが朗報といえるかもしれない。


ある善良な家族の全滅。父母息子死亡確認。娘リンダは行方不明。

街の被害報告書にはそう記されていた。



そしてイチも人知れず街から消えた。



で、ダッタ率いる兵団は街の復興にもあたったが、ダッタとその取り巻き達のあまりにも偉そうで傲慢な態度に街の人々の印象は更に悪化した。

彼らが街を出て行く時、街からは歓声が木霊したという!




そしてアルネ村。




そんなダッタは取り巻き達と飲んだくれていた。

すぐに【跳ねる子馬亭】に向かわなかったのは、母娘の引率の前に飲んだくれて威張り倒したかったからだ。


そんなダッタの所へ【跳ねる子馬亭】に偵察に行った者が帰還した。

そしてダッタに報告した。


女将マレーヌは噂以上のうつくしさ。

そしてその娘シェリルは15歳とは思えない程の色気を持つ落ち着いたこれまた美しき娘。


そこには一月程、冒険者が滞在している事。


グレーの髪の白と黒のオッドアイの男。

そして四人の娘を連れていること。

娘達はもしかしたら妹かもしれないが、なぜかあまり顔は憶えられない……たぶん平凡な顔だろう。

一人15歳位の娘がいて、その少女が絶世の美女である。

黒髪で綺麗な清楚なドレスを着て、その宿に滞在しているという。


ダッタはがぜん興味を持った。


そこへ、その絶世の美女が現れた。

黒髪に黒い瞳。身体の稜線がわかるスラッとした白いドレスを纏っている。

陽光にドレスが透けて裸体を想像させる。


ダッタが食っちゃべってる食堂に入ってくるなり、美少女はダッタの元へ駆け寄り、その手を握り潤んだ瞳で訴えた


「指揮官様かと思われます。どうぞわたくしをお助けください!」


「ど、ど、どうした。なにをすれば良いのか」


あまりの少女の透き通るような美しさに心奪われた


「わたくしゆえあって奴隷に落とされました。

そしてわたくし四姉妹は灰色の髪の男に買われました。そして毎夜毎夜わたくし達はあられもない格好で、その男に陵辱の限りを尽くされております。

わたしくし達はなんとか逃げ出したいと思っておりますが、その男はあまりにも強いのです。

もしわたくし達をその男から解放してくだされば、わたくしあなた様の物になってもよろしゅうごさいます。

その代わり妹達には無体なことはしないでいただきたいのです。まだ年端も行かない者なれば……」


黒く潤んだ瞳。ふっくらした紅き唇。そして華奢ながら、胸や臀部はこれからの成長も望める。

この世にも美しき少女が自分の物になるかもしれない。

そして現実、この少女を好き勝手に奴隷にして毎夜陵辱しているという。


ダッタは思った。


『羨ましい……いや許せない』


俺だってこんな美女とムフフなことやデヘヘな事をしたいのだ。そしてその灰色の髪の男をどうにかすれば、この美少女を今夜にでもひん剥いて好き勝手出来るかもしれない!そう思うと、俄然やる気がでてきた!


「よし!兵を集めよ!

今から灰色の髪の男を成敗しに行く!

行き先は【跳ねる子馬亭】だ!」


ダッタは拳を振り上げた。

それを見た美少女は小さく呟いた




「ちょろいのぉ」




ルルワの言葉は誰もいない空間に消えていった……。









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