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羽虫を潰したまで


胸に風穴を開けられ死んだと思われたリリスは、胸に穴を開けたまま笑っていた。


驚愕に目を見開く母娘。


その目の前でリリスはまるで巻き戻ししたかのように、手も付かず何ら反動もなく滑るようにスーーーっとその身を起こした。

胸の傷はみるみる塞がっていく。

そして抱き合っているふたりを引き剥がすとニアナの胸ぐらを掴んで持ち上げる


「なにしてくれちゃってるのさ!あれ程邪魔しないでって念押ししたのに、バッカじゃないの?

あれを見てよデモス!

グレーターデーモンのデモスくん。

あんなのを(しもべ)にしているボクが、君らに殺される訳ないじゃん!

ほんの少し考えたらわかるよね?」


ニアナを投げ落とす。

そしてツカツカとニアナに歩み寄るリリス。

そんなリリスに畏れをなし、尻餅ついたまま後ずさりする。

リリスは中腰になって人差し指でニアナを差しながら、追い縋る


「でもでもでも面白かったでしょう?

ビックリしたでしょう?

死んだと思ったでしょう?

いやぁ一度やってみたかったんだよね!

だからさ。敢えて君の攻撃受けたのさ。

ちなみにボクには痛覚が無いから、痛くも痒くもないけどね……それと、ボク死なないし死ねないから!

煮ても焼いても食われても死なないから、そこんところその空っぽの頭にねじ込んでいてくれる?」


お尻を地面にねじりながら後ずさりしたニアナだが、背中に何か当たり後退が止まる。

左手に何か触れている。見るとそれはサンの手であった。恐る恐る見上げると黒々とした獣の足。

そして巨体。赤赤と燃える目。


……えっ


つっかえ棒を失くしたみたいに後ろに倒れるニアナ。

眼前を蹄がせまってくる。

思わず頭を両腕で庇う


グショ


何の障害にもならずニアナはグラマラスな下半身を残して上半身をデモスの蹄で潰された


「ちょっとなにやってんのさ!デモス!

殺しちゃダメだよ!ボクお説教してたよね?

そのお説教無駄になっちゃったじゃない!

なんで殺したのさ!」

「つい」


「かーーーーーやってられないよホント!

君らはすぐに殺しちゃうからさ」


「羽虫を潰したまで」


無表情に無慈悲に冷たい底冷えのする声で告げるデモス。なんら余念もない。


「よ……よ……よくもニアナさんを殺ったなぁ!」


そう叫び、猛毒をしこたま塗り付けたカットラスを持ってリリスに迫る仮面の男シ。

それを

『また馬鹿がいるよ。やってられないね』

と呆れた顔で見ているリリス。

避けるつもりなどサラサラない。


カン


そのシの刃がリリスを傷付けることはなかった。

直前に鋼鉄のように変化した手のひらで受けられたのだ。

リリスとシの間には妖艶な美女リーダがいた


「馬鹿かしらあなた?

今そこの女を殺したのはデモスでなくて?リリス様は殺すつもりなんて欠片もなかったわ。

その刃を向けるとしたらそこのデカブツな牛野郎でしょう?なぜそこのところがわからないのかしら?」

「うるさい!そいつが来なければサンもニアナさんも死ぬことなかったんだ!俺はその(かたき)を討つまでだ!」


「それはそうかもしれないけど……でも先ほどのリリス様のお話し聞いておられました?あなたがどう足掻こうがリリス様は殺せませんし、死にませんわよ?

それにその仮面邪魔だわ。それじゃあキスもできないじゃない?」


左手で刃を受け止めて、右手でシの仮面を剥ぐ。

怒りに燃えた瞳をした顔は青黒く変色し、大小様々なボツボツが顔を覆っている。

毒を盛られた跡だ。


「いただきますわ」


リーダはシことシローに口付けをした。

そして強く抱きしめて舌をシローの唇の間から口中ににじり込ませる


「ちょっとリーダ!それ以上はダメだよ!

もっと欲求を溜め込ませて、ボクとの初めてで悶えさせようと思っていたのに発散しちゃったよ!」

「ねぇリリス様。この坊やいただいて宜しいかしら?

とても気に入りましてよ」


リリスに流し目を送るリーダ


「ダメに決まっているよリーダ!

男はフェル様だけで充分さ!

でも戦ってあげなよ。そいつそこそこ腕が立つみたいだからさ。あっ殺しちゃダ……」

「あら?どうしましょう。頭が取れてしまいましたわ」


頭部を地面に転がしたシローの体はゆっくりと音もなく倒れた


「ビックリしたわ。まさかあんな優しい攻撃が避けられないなんて夢にも思わなかったのですもの!

あまりに早すぎてイキそびれちゃったわ!

……あらリリス様?何か今仰りまして?」

「もういいよ!何なの君たちは!

息をするように殺しちゃう。

それにリーダ!君。初めての人殺しだろ?

少しは何か胸に去来するもの有るんじゃない?」


リーダは少し考えて


「勿体なかったわ。とても美味しそうだったのに

……残念」

「はぁ……。これだから女ってやつは……最高だね!」


うおおおおおおおおおおおおおおおおう!


ゴは叫び声をあげ


「……ママ……いや……ママ……」


と四つん這いで死んだニアナの元へ向かうイチを抱き上げると、抱えて走り去っていく。

ぼーーーーっとそれを眺めるリリス


「あれ?意外と走るの早いじゃん?

でもメンドクサイ。

ねぇデモス!あいつら連れて来てくんない?

うーーん。一人でいいかな小さい方。

その子絶対絶対殺しちゃ駄目だかんね!」


「御意」


デモスは羽を羽ばたかせる


「ちょっちょっと待ってよデモスくん!その格好で行くつもり?

またうっかり『つい』人を踏み潰しちゃうでしょう?

久しぶりに見せてよあの姿!

デ・モ・ス・くーん!」


「御意」



そういうないなや



デモスは人間の男に変化した……。
















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