ヤメロキモチワルイ
あの別れを告げられた日から一月もたたないうちに、わたしの特別な人がわたしに会いに来た。
その人はボロボロだった。
片目が潰れて血を流していた。
わたしを残った片目で汚ならしいものを見るような眼差しで見ると言い放った
「アイツらが邪魔しに来やがった!あの白き教団の奴らが!
いや違う……アイツらも連れていた!
白き女神の化身を!
我らが、黒き女神の化身を作り出したように、奴らも成功していたんだ!
そしてあの女神が封じられているいう伝説のある遺跡で、俺達と同じように満月の夜に合わせて覚醒の儀式をしようとしていたようだ!
我々黒き教団はあやつら白き教団と鉢合わせた。
その瞬間。いきなり殺し合いが始まった!
俺も応戦したが顔を殴られて気を失った。
そして朝日のまぶしさに目が覚めたら、みんな死んでいた……。
そして我らのゼロ様も何処にもいなかった……。
我々は負けたのか?
白き教団にゼロ様は連れていかれたのか?
何も解らない。
ただ一面死体だけがころがっていた」
そしてギラギラした眼差しでわたしを見た
「もうお前しか残っていない。
だからお前と交わるしかない。
本来ならば覚醒して更に美しい大人のお姿に成長されたゼロ様と交わり、我々はその僕となって真の力に目覚めていただろうに……もはや術がない。
僅かの可能性かもしれない。
だがゼロとは言いきれぬ。
お前を抱けば力に目覚める可能性がほんの僅かだけある。
だから俺はお前と交わる。
見たくも触れたくも交わりたくもないお前と、死ぬ気で交わってやる」
そしてわたしは円筒型の筒の中から、液体ごと排出された。
そしてわたしは特別な人に組み敷かれた。
彼は黒い服を脱ぎ捨てボヨヨとした醜い裸体を晒した。
そして頭巾を取った。
それは世にも醜いわたしよりも遥かに醜い顔があった。
顔半分が爛れぶよぶよしていた。腐ったような匂いがした。片目は潰れて血が流れていた。
ぶつぶつが顔中に出ていた。
厚く腫れぼったい唇を開けて言った
「お前のような醜い女!しかも俺の嫌いなまだガキの女!
抱きたくもないお前を!交わりたくもないお前を!オレが抱いてやる!
たぶんお前にとっては最初で最後の快楽だ!
せいぜい楽しんでくれたまえ!」
わたしは思い切り足を広げられた
そして気持ちの悪い顔を近付けて特別な人はいった
「今から俺とお前は一つになる。感謝するんだな……それにしても気持ち悪いなぁお前……」
特別な人は世にも悍ましい笑顔を作った
─……いや
わたしは手を伸ばした。
特別な人の顔に当たった。
ぶよって感じた
──ヤメロキモチワルイ──
その手に力を込めた
ボン!
いきなり特別な人の特別醜い頭が消えた。
肉片を撒き散らして弾け飛んだ
ドサッ
ボヨヨとした身体がわたしの上に落ちてきた。
わたしの特別な人はわたしと交わる前にその命を散らした。
わたしはようやくその肉塊を身体からどかして、わたしは立ち上がった。
入り口が空いている。
階段があった。
ドアがあった。
開けた。
黒い人達が何人も大きな部屋の中にいた。
みんなわたしを見て固まっていた。
「殺せ!いいからこいつを殺せ!
誰か早く!」
中の誰かが叫んだ!
その誰かの胸部からわたしの手が生えていた。
わたしがそいつの胸を貫いたのだ。
みんな慌てたようにわたしを殺そうとした。
わたしは慌てることなくみんな殺した。
ふと気になって、血だらけで倒れている男の頭巾をとった。綺麗な顔をしていた。
そして全員の頭巾をとった。
若いのも、年とったのもいるけれど、あんなに醜い男は特別な人だけだった。
わたしは思った。
『誰か一人でもわたしにゼロにかけるような優しい言葉をかけてくれたなら……そいつを特別な人にして生かしてあげたのに……』
わたしはニヤリとわらい
「んなわけねぇか……あはっ」
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
わたしをバカにした者達は死んだ。
後はアイツを殺すだけ。
ゼロ。
特別な人は消えたと言った。
でも死んではいない。
生きている。
判る。
円筒型の筒の中の少女達が死んだ時、わたしのこころの中の繋がりが消えたのがわかった。でも、ゼロとの繋がりは消えていない。
繋がったままだ。
そしてゼロのキモチも伝わってくる。
今のキモチ
─ヤスラカで
─アタタカクて
─シアワセで
─ココチイイ
アイツだけズルい。
アイツだけイイオモイして。
絶対殺す。
殺して殺して殺し尽くしてやる!
わたしはこの部屋のもう一つのドアを開けた。
世界が広がっていた
何処までも澄みわたる青空
わたしは裸のまま
赤黒いマダラ模様のこの体に風を受け
わたしは奇声を上げながら
駆け出していた
両手を広げて
初めて笑顔になって
あんな薄暗い世界が全てだと思っていた
小さな円筒型の筒の中が居場所だと思っていた
だけど
だけど
だけど
世界はこんなにも
広いんだぁああああああああ!




