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ゼロとイチ


わたしはイチ。


わたしが自分の存在に気が付いた時、わたしは円筒型のガラスのような透明な筒の中に入っていた。

中はどろっとした透明な液体に満たされていて、わたしはそこに裸で浮かんでいた。

わたしは自分の顔はその時分からなかったが、はっきりと想像は出来た。


同じ姿形をした女の子が10体も、同じ円筒型の透明筒の中に浮かんでいたから……。

白い肌に黒い瞳、黒い髪。肉体はどれも似たり寄ったり同じだった。顔も同じ。

だから自分も同じだってわかった。


みなそれぞれに名前があった。

わたしのイチから数字でクまであった。


その中でひとりだけ特別な子がいた。

名前はゼロと呼ばれていた。

なぜ特別なのか、それは皆が特別だと話していたから。

皆とはここに来る黒い服とローブを着て、黒い頭の先が尖った目のところだけ空いている覆面をしていた10人程の黒い人たちである。


その特別なゼロのところの液体だけ、なぜか金色だった。

そしてわたし達は黒い人達にいつも言われていた。


「お前たちは出来損ないだ。完璧なのはゼロだけだ。

ゼロが成長し女としてわれわれと交われば、我々はより強大な魔力と力を得られるだろう。

だが、お前たちはクズだ。出がらしだ。出来損ないだ。きっと女となったお前達と交わっても快楽ぐらいしか得るものはないだろう。

だが、それでも色々実験には使えるだろう!

死ねば解剖して色々秘密が分かるかもしれない。

死なずとも我々に快楽を提供してもらおうか?」


はじめ出来損ないの意味がわからなかった。

でも直ぐにわかった。

言われた次の日。ナナの筒の中は真っ赤になっていて、得体のしれない肉片が漂っていた。


それから暫くして、二の頭が取れていて逆さまになって浮いていた。


それから一年もたたないうちに、わたしとゼロを除く全ての女の子達がいなくなった。

ただ一名。二だけが頭がない胴体だけの姿で浮いていた。


わたしは恐れた。いつかわたしも他の子たちと同じように、ある日突然原型を留めていない姿になっているかもしれないと……。

そしてその日は来た。

激しい痛みに眼を開けて見れば、目の前をわたしの腕が二本、どろどろの肉片を纏った骨のような形で浮かんでいた。


ギャーーーーーーーー!!!


わたしは叫んだ!

そして頭の尖った黒い人達が来て、筒のどろっとした液体を排出した。

わたしは床に投げ出され両腕のない無惨な姿で、裸のまま、凄まじい痛みにのたうちまわっていた。



そして気を失った。



目が覚めた時。

わたしはまた、円筒の筒の中で透明な液体に漂っていた。

すぐ手を見た。

両腕はあった。

ただ、いつもの手ではなかった。

赤黒く気持ちの悪い色をしていた。そして胸の辺りまで侵食されていた。


わたしが目覚めたのに気づいた黒い人は、わたしに言った


「お前の両腕は二の物だ。二から切り取りお前イチに移植した。そして融合した。

二はな、解剖されバラバラに刻まれ、実験用の魔物のエサになった。

お前も死ねばそうなる。俺たちにはゼロがいればいい。

出来損ないのお前はそのまま始末するべき、という意見もあったが俺が退けた。

だから俺がお前の命の恩人だ。

オレはガキには興味ないが、成長したお前が楽しみだ。ここから出たら俺がお前を貰う算段はできている。

その時はせいぜいオレはを楽しませてくれよ。

しかしお前の体。気持ち悪~なぁ」


わたしの命の恩人の黒い人は、顔をかくしているがわたしには区別がついた。

なぜなら、少し皆より太っていたから。

その太い人はわたしの特別になった。

わたしはいつも彼だけ見ていた。


でも、彼はわたしなんか見てなかった。

いつも皆と一緒にゼロばかり眺めていた。

金色の液体の中を漂うわたしと同じ体、同じ顔の少女ばかりを……。


……わたしを見て……

……わたしだけを見て……

……わたしだけを愛して……


どれ程願いを託し想いを込めても、彼はわたしを見てくれなかった。


まだ一度も目覚めていない。ゼロばかりを見ていた。


ゼロ。特別。そしてわたしの特別な人の特別な人。

もしゼロ。こいつさえいなければ、わたしは特別だったかもしれない。

わたしの特別な人もわたしばかり見ていたかもしれない。

そう思うと、ゼロが憎くて憎くて仕方なかった。




……ゼロ死ね……




毎日死ねと願い続けた。


ある日。大勢の黒い人がゼロの周りに集まっていた。

そして筒の中から金色の液体がこぼれた。

そしてゼロが初めて外の世界にでた。

でも、ゼロは眠っていたままだ。


ゼロは柔らかい布に包まれて、まるで宝物みたいに抱えられながらこの狭っ苦しい世界から消えた。


それからゼロは見ていない。


わたしは放って置かれた。


たまに誰か見に来るが、皆わたしを見るとヒドイ眼をした。


身体の半分がもう赤黒く変色し、以前の美しい白い身体の面影はほとんど失くなっていた。


それから一年後。


わたしの特別な人が来た。


わたしを貰いに来たのかと思った。


だが違った。


別れを告げられた


「今度の満月の夜。ある場所である儀式をすればゼロ様は覚醒される。そうすれば我々はゼロ様と交わり強大な魔力と大いなる力に目覚める事となる。

俺は同士に迫られた。

お前を取るか?ゼロ様と交わるか?

答えは解るよなイチ。

俺はゼロ様を選んだ!

だからなイチ。もうお前は要らないんだ。

要らないん子なんだよ。

それにその身体……美しいゼロ様とは比べるべくもない。よくぞここまで醜く見るもおぞましい身体となったものだ。もはや誰もお前など抱こうと思わぬだろう!

出来損ないのクズめ!サラバだ!もう会うこともないだろう!」


そう言ってこの世界から特別な人も消えた。


わたしは新たな感情が芽生えた。





─ゼロを殺す─





──全身全霊を賭けて殺してやる──















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