不夜城
ここはグレイ達のいるアルネ村から3日程離れた、街ダーレル。
街道が重なる重要拠点で商業発展し、そして当然の如く歓楽街も発展している。
ここを治めるセルフィア王国クリオ伯爵領の領主セルケゲイ・クリオ伯爵にとって最重要な収入源になっている。
そしてここに魔物が多数出現し、旅人の往来を阻害し、収入にも響いてきた。
それで大規模な山狩りというか、魔物達を一掃しようという話となった。
魔物退治の基本はギルドで募った冒険者達。
ここダーレルは街道の集中点でもあるから冒険者達は自然と集まり安く、領主の館のある領都に次ぐ規模の冒険者ギルドがある。
領主軍はダーレル在住の120名程と周辺から集められた80名の兵士、合わせて200名だ。
魔物狩りは冒険者に任せて、兵士は街へ逃げ込んだ魔獣の対策と警備。そして冒険者達の監視にあたる。
監督役だ。
そして今は魔物狩りが始まったばかりだ。
その様子を、丘の上の大木の上の方で葉っぱに上手く隠れながら、背徳の女神リリスは眺めていた
「あーあ。退屈タイクツ……ここらの魔物皆弱いしさ。数だけいりゃあいいってもんでもないでしょう!
でも、これじゃあ~祭りの山車は必要だよね。今夜辺りアイツを誘おうかな……それまで大人しく寝てますか」
そして枝の上でがんじがらめになっているルルワが、日が落ちるまで、口も塞がれてアワアワしていた。
そして日が落ち、辺りが闇に包まれる。
ビーストモード。
獣姿のリリスがしっぽをピンっと上げて、四つ足て歩んでくる。
その後ろを体躯10mもある三体のジャイアントがのしのし歩いてくる。その回りを無数の大小様様の魔物達がうごめいている。
そしてその上空。闇夜に溶け込み目立たないが、体長15mほどの牡牛の角をもったグレーターデーモンがコウモリいや……ドラゴンのような羽をはためかせゆっくりと舞っている。
小高い丘の上。
リリスは立ち上がる。
その隣にグレーターデーモンが降り立つ。
小柄な紫のゴスロリメイド服のリリスにグレーターデーモンは深く深く頭を垂れ、忠誠を示している
「やあ。デモス。久しいね。
良くボクの呼び掛けに答えてくれた!」
「我らが女王。我らがリリス様。
この命、母なるリリス様によって産み出されたもの。
リリス様の血によってより力を授かった者。
如何なるご命令にも服す所存でございます。
もし、わが命をご所望ならはこの胸直ぐにでも掻っ捌き、心臓を御身に献じましょう」
ふっ。
リリスは笑う
「君。今のボクになら勝てるかもしれないよ?
欲望に忠実な僕の君たちだもの。
ボクを殺して喰らってみたいと思っているんじゃない?」
「何をおっしゃいますかリリス様。
我らは全てリリス様に繋がっております。
リリス様の痛みも苦しみも喜びも歓喜も全て繋がっています。リリス様を食らったら我らが我らを喰らうということ……だが……全て繋がっているというのは冗談であります」
ハッハッ
リリスは笑いを弾けた
「いいねいいねいいねぇ~!
くそつまらないけど、冗談を言えるようになったんだ!感無量だよ!デモスが冗談ねぇ!最高だよ!」
「滅相もございません。
ところでリリス様。
リリス様がその気になれば、この街はおろかこの王国すら灰塵に帰すことができるでしょうに!
四天王を現界に受肉させ、108の我ら上級デーモンを将官とし、1,080の中級デーモンを士官とし率いさせ、108,000の下級デーモンの兵と、1,080,000の魔獣をもってすれば容易いでしょうに!
はあ。はあ。はあ。はあ。はあ。
失礼。興奮してしまいました」
「まあね。たしかにそうなんだけど……別に世界征服とか興味ないし……めんどくさいし……愉しければいいしね」
デモスは紅き瞳をリリスに向けた
「リリス様はなぜそれほどまでにあの者に忠実にお仕えするのですか?そのような奴隷にまで落とされて……それでも嫌な顔ひとつしない。
それどころか歓喜を感じます。
いくらあの御方の生まれ変わりとはいえ、あまりにも卑小なあの者にそれほどまでに御執心なされるのですか?」
「一万年前まで、三千年に渡り共に時を過ごした。
快楽を貪り世のあらゆる愉しみを味わい尽くした。
それじゃぁ……だめかな?
納得していないようだね。デモス。
なんていうか、理屈じゃないんだよね。
一万年前。世界の全てだったフェルは騙され、その力のほとんどを封印された。
でもいつの時代でも、何度生まれ変わっても、必ずボクの前に現れる。
ボクを愉しませてくれる!
彼は知っているんだよ。
ボクがルルワだって。
でも、ボクごと地中深く封印抹殺しようとした!
本気でね!
訳が分からないよね!
千年振りだよ。彼に会ったのは!
彼はセトと共にボクを封印したくせに。
何事もなかったようにボクを解放し奴隷にした!
ホントに訳が分からない!
ボクはね。
そんなフェルが大好きなんだ!」
そしてリリスは両手を広げた
「もうこれくらいでいいだろう!フェルのことは!
ともかく、今から宴を始めようと思う!
ご馳走は血滴る糞袋!ここで貪る人間共!
老いも若きも男も女も関係ない!
ここにいる全てがご馳走!
さあ我が僕共よ!歓喜せよ!」
そして眼下の街ダーレルをみた。
黒々とした街にぽっかりと明かりがみえる。
その歓楽街は不夜城。
「レディース アンド ジェントルマン!
みんなこれから三時間!
生死の境であがいてあがいてかあがいてあがいて
生き残るためにあがいてご覧なさい!
せいぜい血反吐を吐き散らして!
ボクを愉しませておくれ!」
そして街ダーレルへ向けて
右手を振り落とした
魔物共が一斉に丘を下っていった




