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冒険者グレイ


ジェイは逃げた。

幼馴染の少女を犠牲にして……。

対個人戦が得意なジェイにはあのスタンピードで大量発生した魔物の前では役立たずだ。


例えあの場に残ったとしても、数の暴力の前に瞬殺されたことだろう。

それが分かっているからこそ、リーダーのザムドの指示に従った。

だけど……それでも好きな女の子を置き去りにした事実には変わりない。


ジェイはリンの事を思い振り返った


─え?


後ろに一匹の魔物も居なかった。

森の木々の隙間から、濛々と煙が立ち上っている


「ザムドさん!止まってください!

何だか様子が変です!」


「何だ?これは……」


ジェイの言葉に足を止めたザムドは空を覆い隠す程の煙を見上げた


─何が起こっているのだ?


魔物の来る気配もない。

そうなればリンの様子も気になる。

まさかあの状況で生きているとは思えないが、確認出来るかも知れない。

少なくとも魔物がいないのは確かだ


─行ってみるか?


「ジェイ。あの木に登れるか?」


先ずは一際高い木に登って、状況を把握させよう。


ザムドの意図を察したジェイはするすると木に登った



─何だあれは?おかしいだろ!



リンがいた辺りの森が焼け、周辺が焼け野原になっている。

この短時間では森はあそこまで延焼しない。

リンはあれだけ大規模に焼き尽くす魔法を放てない。

リンではないということだ。


そればかりではない。


見たこともない青白く光る壁が、百メートルに渡り出来ていた。

ジェイは木から飛び降りると、ザムドに報告した


「よし。戻るぞ」


ザムドとジェイは街へ行くのではなく、引き返すことを選択した。







「ザムド!ジェイ!」


パーティーメンバーに声を掛けられたリンは、駆け寄って二人に抱きついた。

ひとしきり再会を満喫した


「リン。一体何があった?どうなっているんだ?」

「分からない。でも……わたしは生きているのは確か」


詳しい事は分からない。

でもリンは今まで身に起きた事を正直に話した。


三人は壁に近づく。

壁の向こうでは、炎のように揺らぐ青い狼が魔物と戦っている。

そして頭に羊角を生やした少女が、これも炎のような青い三体の魔人に守られて立っていた。

視線を感じたのか、少女が此方を向く。

赤々とした瞳が不気味に光る


─やっぱり悪魔?!


三人は思わず目を反らした



「きをつけて。こちらから。かべをぬけて。むこうへ。いけるけど。あちらからは。むり。かえれない」



声のする方には、片手で魔法の壁に触れている白い髪でピンクの瞳の美少女がいた


「シロエさん。わたしを助けてくれた。

壁は彼女の魔法。

それと羊の角の女の子がイチさん。

青い狼を召喚した。

壁の上に座っているのがクロエさん。

炎の竜で魔物を倒したの」


リンの説明に3mの壁の上に座る黒髪の美少女がコクンと頷く。

シロエとクロエは色は違えど双子のようにそっくりだ。


「それから……」


リンが振り返った先には三人の人物がいた。


ここから20mも離れた大木の側。

先ず目につくのは裸の魔人。

薄く紫がかった肌。赤紫の頭髪と瞳に唇。グラマラスで妖艶な肢体の美女。

良く見れば裸ではない。一応大事な所は隠してある


「あの女の人がリーダさん。

裸じゃないですよ」


リーダは目を細め、ザムドと目が合うと舌なめずりした。


「向こうにいるのがデモスさん」


190㎝超えの身長の男が、一瞥すると興味無さそうに無表情になる。

執事服の色男。

男のザムド達から見ても顔立ちは美しい。

頭髪は黒く、前髪が目に被るほど長くサラサラしている。

燃えるような赤い瞳。

頭にはイチと同じ羊の角を生やしている。

間違いなく悪魔だ


「そして最後がリーダーのグレイさん」


「よろしくな!

お前達もこっちへ来い!

これから面白いショーが始まるからさ」


グレイと呼ばれた男は気さくに手を振る。

だが、大木を枕に寝っ転がったままだ。


灰色の髪。灰色のマント、裏地は深紅。

鎧は薄汚れた革製。

瞳は右目が白で左目が黒のオッドアイ。

白い瞳はグレイの縁取りがされているので完全な白目ではない。

年の頃は22~3歳。こちらもガタイが良く、立てば190㎝を超えそうだ。


サンドイッチをかじりながら戦いを眺めている。

直ぐ脇に小さなテーブルが置かれ、その上にはティーセットが並べられている。


良く見ればその直ぐ近くに10歳位の赤い髪のメイドが座っていて、グレイの足をモミモミとマッサージしている


「あっ。こいつはアズラ。万能メイドさ」


アズラはペコリと頭をさげる。



─グレイ……もしかしてあの……クズか?



ザムドは記憶を探った。

冒険者仲間から話しは聞いている。

美女を引き連れたグレイという冒険者。

いつも寝っ転がって弁当を食いながら戦いを見物する冒険者。

戦うのは女の子ばかり。


自身は決して戦わず、高みの見物。


それだけではない。

黒い少女と白い少女と姉らしいもう一人の奴隷の美女を使役し、更には全員と婚姻関係にあると言われているハーレムパーティー。

噂ではお風呂で洗うのも、着替えも全て女の子達にやらせる羨ましい男。


いつしか嫉妬や侮蔑をこめて


【クズ】


と呼ばれるようになった。


─この男がそうなのか?


ザムドは思う。そうなればあの魔法の壁を出しているシロエと壁の上に座っているクロエは奴隷で嫁なのか?

見た目はまだ少女。漸く成年に達したばかりだろう。

この世界では15歳で成人になる。

結婚が奨励されるのは18歳からで、それまでは準成人のような扱いになる。

一応奴隷とも結婚は出来るが……普通は奴隷解放するだろう。


それにしても羨ましい。

これだけの美女に囲まれて……ズルい。

着替えもお風呂もだなんて……あんなことやこんなこと


「変なこと考えてませんか?

ザムドさん。何だか目がいやらしいですよ」


リンに軽蔑の視線をいただいた。



あ━━━れ━━━!!!



何処からか声がする。


─上か!


ザムドが見上げたら美女が4人,空から落ちてきた!













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