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あたちの初めてをあげるにゃ!


次の日の朝。


朝食を終え、まったりコーヒータイム。


カウンターに座るグレイは左右に美少女ふたりを侍らしている。

双子のように良く似ている。


右側、白いロングヘアー。ピンクの瞳。白いワンピースの少女はシロエ。

左側、黒いロングヘアー。黒い瞳。黒いワンピースの少女のクロエ。


シロエはホットミルク。

クロエはブラックコーヒー。


グレイはカフェオレ。

角砂糖三個入り。


グレイは黒い少女に


「おい。クロエ!お前それ、苦くないのか?」

「クロエ。コーヒー。ニガクナイ」


グレイはなんだか納得いかない顔をしている。

カウンター越しの猫耳グラマラス母猫レーナが、その豊満な胸をカウンター台に乗せる


「ねえ。グレイさん。先ほどお話があると言っていたけど、どんなお話しかしら?」


「あーそれな。オレ達そろそろ旅立とうと思ってな」


ガチャン!


皿を落とした猫耳娘チーナ


「あらあら。大丈夫?チーナ」


レーナは皿を片付け始める。

でもチーナは立ち尽くしたまま震えている


「行って……出ていってしまうのかニャ?」

「ああ」


グレイは間髪入れず答えた。

チーナはブルブル震えて


「あたち……あたちも」

「駄目だ」


畳み掛けるグレイ


「あたち……まだ何も……」

「お前は連れて行けない」


「あたちのこと嫌いに……」


チーナは唇を噛んで、今にも泣きそうだ


「違う。これからオレ達の行く所は危険だ。

何が起こるのかわからない。

とてもチーナは連れて行けない」


「ちな。じゃま」

「チナ。シヌヨ」


「それに」


グレイは優しくつづける


「レーナさんをひとりにするつもりか?

シロエとクロエが抜けて、おまけにお前まで居なくなったらこの店はどうなる?

いつか旅に連れてってやると以前オレは約束した。

だが、今はダメだ。

解ってくれとは言わない。

解れだ!」


「うん……でも、いつか約束叶えてニャ!

あたちも旅に連れてってニャ!」


チーナはうつむいたままだ


「それと……チーナをお嫁さんにしてくれる約束も……ちゃんと守って欲しいニャ」



「オレはそんな約束していない」



「ちな。どさくさ。ぶっこんだ」

「チナ。ぬけがけ。ぜんぶ。け。ヌケロ」


チーナはめげずに、グレイを見て


「今夜。あたちの初めてをあげるニャ」


うるうるキラキラ瞳で決意表明。

グレイは瞬間無表情になり


「要らねえ」


「ちな。しね」

「チナ。マジ。シネ」


そして、その今夜。


暗闇の中。

抜き足差し足で階段を上がるチーナ。

もはや見飽きた真っ裸。

グレイの部屋の前にくると気付かれないように、そっとドアノブに手をかけ開け……られない!


「な!なんでニャ?ちびた!ちびたい!ニャ?」


ドアは開かず。ドアノブが冷たい。


グレイの部屋の中。そのドアは部屋の内側氷漬け。

ガチガチに固められている

そのドアの向こうから


「グレイニャん!あたちのあたちの初めてを!貰ってニャ!ちびた!ちびたいニャ!貰ってにゃぁあ!」


と騒がしい


「ちな。うるさい」

「チナ。ウザスギ」


白と黒は呟き


「しろえ。さむい。あったまる」

「クロエ。こごえる。アッタマル」


そして真ん中のグレイにぎゅっと抱きつく

グレイはもはや夢の中。


「ますた。すき」

「マスタ。ダイスキ」


ふたりの毎晩の告白を今夜も聞かなかった。



それから一週間後。

三人は旅立った。

近くの丘にクロエが穴を掘って、新たに狩った肉一年分を、シロエが氷漬けにして保存しといた。

ちなみに氷は特殊な氷で、なかなか溶けない。

ある合言葉を唱えながら氷を触ると、10分間だけその触れた部分が少し溶ける。

肉を取り出すには十分な時間だ。

その合言葉はレーナさんにだけ教えた。

チーナに教えると皆にただ漏れになる。



それまでの一週間。


毎晩。


チーナは乙女をグレイに捧げに行ったが、ついぞそれは叶わなかった。



ガランとひと気のない《にゃんころ亭》


猫耳母娘が、カウンターテーブルに同じように突っ伏している。


「寂しくなったわね」

「ホント寂しいニャ」


ふたりはカウンターテーブルに顔を付けたまま、見合っている。

猫娘チーナの瞳は涙で濡れていた


「でもまた来てくれるって、約束してくれたニャ!」

「そうね。また会いたいわね」


レーナは相槌をうった。

チーナは目をショボショボさせながら


「チーナを迎えに来るって約束したニャ。

お嫁さんにしてくれるって言ってたニャ!」

「あなたが言ってただけだけどね……チーナ……ホントあなためげないっていうか……図太いっていうか」


レーナは呆れている。

でも、チーナの底抜けなバカらしさに安心もしている


「そうと決まれば!」


レーナは上体を起こし、続けた


「花嫁修業しなきゃね」

「ニャ?花嫁修業?」


「そう。花嫁修業。

お料理作ったり、裁縫覚えたり、今度グレイさんに会うまでに頑張って覚えましょう?

いつまでも食事をお客さんに運んだり、お皿を洗ってばかりじゃ駄目よ。

そんなんじゃまたグレイさんに置いてけぼりにされるわよ」


レーナはチーナをしっかりと見据える。

チーナは上体を跳ね上げると


「やるやるやるやるやるニャ!

花嫁修業頑張るにゃ!

早く教えるニャ!」


とレーナの手を取り、立ち上がせる。

そして早く教えろとせかす。


レーナはそんな娘を見ながら


「なんとかとチーナは使いようってね」


と嬉しそうに笑った。


落ち込んでいるチーナは似合わない。



元気な姿が一番ね!
















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