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ペット16歳


以前はボスフロアとの境目には扉なんて無かった。


黒光りする両扉で縁は金色。高さ5mはあるだろう


──このドデカい扉を誰が運んだのだろうか?


シュヒルはあらぬ思いに囚われていた。

そしてこの扉をどうやって抉じ開けようか?

考えを巡らせていると……


「おい。デカブツ。ワシと共闘せい!」

「ウルセェ!チビ助!わあってるよ!」


いきなりゴメスとライザが得物を構え、振りかぶった!

この扉をぶち壊そうというのだろうか?


『ちょっと困るよ!まだ取り付けて間もないからさ!

カギも掛かって居ないし、普通に入ってくれないかな?』


突然頭の中に声が響いた。

少し甲高い神経質そうな男の声。

マーリンはウンと頷き


「だそうだ。

それとゴメスさんとライザさん。

いい加減その武器を納めてくれないか?」


マーリンの言葉に二人は従う。

そして両開きの扉の左右に立ち、扉を押す。

すると扉は苦もなく開いた


『ほい!デカブツ!これ受け取って!

落としたら殺すよ!』


いきなり一抱えもある肌色の球体がライザ目掛けて飛んできた。ライザは扉から手を離すと、抱くように捕まえた


「ひぃ!」


ライザは、ライザらしからぬ悲鳴を上げた。

その腕に抱かれているのは豚に良く似た頭。オークの生首であった。しかもその目は動きライザを睨んでいる


「こいつ!まだ生きてやがる!」

「落としたら殺されるわよ。ライザさん」


マーリンの言葉に、思わず投げ捨てようとしたオークの頭を抱き締めるライザ。

その怯えようは、大剣を振り回す女には似合わない。


そして自分へオークの頭を投げつけた男の顔を見た。

男は片眼鏡(モノクル)をした優男だった。

身長は180cm位。

緑の髪は肩まであり、色白で瞳は青い。


黒を基調とした赤い縁取りのベスト付きローブを着ている。見た目から錬金術師と推察される。


「えーっと。そこのデカブツ。ライザっていうのかな?

その頭こっちへ投げてよこしてよ」


錬金術師のような男が促すと、ライザはこれ幸いと頭を放り投げた。慌てて投げ返したので勢いがついたが空中で突然止まり、そこからはゆっくりと男のところまで移動した。

男はそれを掴むと指一本立てて、オークの頭をクルクルと駒のように回した。まるで疾走する馬車の車輪のように、永遠にクルクル回っている。


あの広かったボス部屋には所狭しと魔物達が並べられていた。けれどザッと見回した所、まともな魔物は一体もいない。皆何処か欠損していた。

頭であったり、手足であったり様々だ。


そしてその多くがこの付近にはいない魔物だということ……。バジリスク何かよりも強力な魔物が多くいた。


もしこれらの魔物がキメラ化しこのダンジョンに溢れたら……ギルドだけでは対応出来なかったかも知れない。


皆誰もがその圧巻の光景に動けなかった。

ただ一人を除いては……


「あら?貴方にしては随分とヌルい魔物だけを集めたじゃない?」

「仕方ないよ。時間が無かったし……。

取り敢えずコイツらで楽しんだら、改めて深淵のダンジョンの深層に潜り、使えそうなヤツ達を捕まえるつもりなんだけど!それよりもマーリン。

伝説のマーリン様がどうやって僕の居場所を嗅ぎ付けたんだい?」


男の問いに首を竦めるマーリン


「偶然よ。わたしこの区域で冒険者をしていて、このダンジョンについて調査依頼が来ただけ。

ところで……このダンジョンで最近何人か行方不明者が居るらしいけど、心当たりがないかしら?」

「行方不明?」


男は数瞬思案して


「ああ。そいつらのことかい?」


ある区画を男の指が指した。


「うぇ!」


サリーが思わず手を口元に持ってきて嗚咽を漏らす。

そこには四個の若い人間の生首が円筒形の筒の中に浮かんでいた。それらは目をキョロキョロさせたり、口をパクパクしているので生きている?らしい


「ああ。誤解しないで欲しいけど、コイツら見つけた時に既に死んじゃっていたから、再利用しただけ。

僕のキメラの材料になるにはちょいと弱すぎるから、僕のペットを作ったんだ。ビオラ。おいで!」


「はぁはぁはぁはぁ」


四つん這いの裸の女が現れた


「グリーンバッチの冒険者……ビオラで間違いない。

それにしても……」


シュヒルは顔を歪めた。

確かに胴体と頭部は人間だが、その前足は獣のよう。後ろ足は膝の関節辺りから獣の足になっている。異様なのは胸部から頭部にかけて……。胸部が異様に反って女性のふくよかな胸が正面に見える。普通に四つん這いに成れば、頭を上げてようやく前を向くが、この個体は胸部が反り背中が曲がっているせいで、顔が普通に正面を向いている。

つまり胸から上は、胸像のようにまともだ。


まだ16歳で冒険者になって一年も経っていない筈。愛嬌ある可愛い顔はそのままだが耳が、長く伸びた獣の耳に変えられている。

大きな試験管に浮かんでいる四個の生首は、彼女のパーティーメンバーだろう


「僕が見つけた時は、他の四人の胴体は食い荒らされていてね。この子だけがディナー前で助かったというわけさ。尤も手足は骨になっていたし、死んでいたけどね。復活させてこうして僕のペットにしているのさ。

僕はね。お尻から太もものラインが凄く好きだから、ぐちゃぐちゃになっていた太腿は復元しといたさ。オマケにフサフサのしっぽを付けてあげたんだ」


ビオラははぁはぁいいながら、男の手をペロペロしている。剥き出しの臀部がこちらを向いてフサフサのしっぽをブンブン振り回している。18禁のお股の部分が丸見えだ。マーリンはそんなビオラを一瞥する


「相変わらず趣味が悪いな。お気に入りのスフィンクスは元気にしているか?」


「うん。元気にしているよ。今は砂漠地帯にいて、バジリスクを捕まえて貰ってるさ。あいつら結構レアなのに、君たちは三匹もオシャカにしてくれた。折角侵入者を石化させて無傷の実験材料にしたかったのに。期待外れだったよ。まあ。いいけどね……」


そう言いながら、人差し指の先でグルグル回していたオークの頭を、ゴロゴロと地面に転がす。



ビオラ犬は嬉しそうに追いかけていくと、前足でオークの頭をオモチャにしていた。






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