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任せときな!姉さんよ!


「ほーら!行くわよ!

ぶちかましなさい!」


マーリンの号令一下、神速と赤い疾風の二人が(くつわ)を並べて駆け出した。

瞬く間に頭が蛇のコボルトキメラを切り捨てる


「どりゃーぁあああ!ふっとべぇええ!」


女剣士ライザが少し遅れて大剣を振り回し、キメラを両断する


「どーれ!ワシも一丁やるかのぉ!」


更に遅れて髭面のゴメスが戦鎚(ウォーハンマー)を最上段から振り下ろし、蛇の頭諸ともコボルトの胴体をへしゃげる。

ファーラは短弓でサポートしている。



ここはファーラがキメラを見かけた、中ボスが居た筈の開けたエリア。

マーリンがエリア全体を照らす光源となる魔法、ライトを唱えると同時に戦闘が始まった。マーリンは参加せずに戦闘を見守っている。その横へ魔法士のクラムドが並んだ


「マーリンさんの仰る通り、あのキメラはとても弱いですね。あのようなキメラを見たことがあるのですか?」


「まあね。人生をお前達の誰よりも生きているから、知りたくなくても知ってしまう事も多いのさ」


そしてマーリンはコボルトと蛇のキメラを指す


「これは手慣らしだな。ヤツは久方振りにキメラ合成に入る時に、ああやって身近な魔物を使って手慣らしをするのだよ。あれは身体と頭が別の生き物だからな、両方生かしながら合成するのは人間には至難の技よ。

けれどヤツなら朝飯前ね。

本来はあんな物を作らなくてもキメラ合成を出来るから、ただの道楽だな。

いつも弱いサンプルから強い合成へと発展するのがヤツのスタイルだ。このまま放置していれば十日もせずに、お前達のでは手に負えないキメラを作っていた事だろう」


そうこうする内に双頭の蛇のトロールが、頭と胴を切り離されて無慈悲に止めを刺される。ほんの5分も掛からずに全てのキメラの命を絶った。


続々とマーリンの元へ集まってくるメンバー。

シュヒルはダンジョン探索続行を決意した時点で、リーダーの座をマーリンへ譲った。シュヒルには未知の事柄が多過ぎて、マーリンへ委ねるしか無かった。

マーリンはしぶしぶ受け、この臨時パーティーの司令塔となった。


久しぶりに一兵卒に戻ったシュヒルは、水を得た魚のように躍動し仲間達と共にキメラを平らげた。一応副リーダーの肩書きは持ってはいるが、今はあまり意味を成さないだろう。シュヒルは


「それでマーリン。これからどうするつもりですか?」

「このまま進むわよ。今しがた思念体を送ったから、ダンジョンの構造は把握したわ。サーチをかけて魔物のいる位置も分かったし、これからは光源を灯したまま進んでも大丈夫よ」


マーリンが何事も無いようにサラッと答える。ここへ疑問を投げ掛けたのはサーラこと白魔法士のサリアンナだ


「あの……思念体って何ですか?それとサーチも何ですか?何故それでダンジョンの構造や魔物の位置が分かるのですか?

何を仰っているのか、良く分かりません」


「ああ。それね。ちょっと説明が必要かしら?」


マーリンはそう言うと、解説を始めた。


思念体は自分の透明な分身を拵えて、高速で浮遊しながらダンジョンを見回っていたという。

メンバーが戦闘をしている間に思念体を飛ばしていたらしい。それと思念体でも魔物の種類や数は大体把握出来るけど、高速で移動しているので漏れも多い。

それでサーチという魔法をかけると、一定範囲内の魔物の数や位置、それと大まかな強さが分かるみたい。

術者と近い魔物の方が、より多くの情報を得る事が出来るという話だ。


もしこれが事実ならばダンジョンに入る前に、ほぼ攻略したとも言えるだろう。魔法の知識が高い者程、その魔法や術の異常さが分かる。現にクラムドも目を白黒させている。


これでは斥候役のファーラの出番は無いに等しい


「まあ。貴方達の顔を見ると半信半疑でしょうから、道中証明するわ。それに思念体やサーチを駆使したのは、最短でヤツの所にたどり着く為。

あちらさんは今の所は逃げるつもりは無いようだけど、ヤツは気紛れだから急ぐに越したことは無いわ。

という事でわたしの後を付いて来なさい」


そうしてマーリンは先頭になって、ずんずんダンジョンを進んで行く。途中


「あの角を曲がればキメラが三体いるわ。

あら?何処から連れてきたのかしら?

コボルトの頭部の蛇がバジリスクだわ。

今までのように舐めて掛かると、石化されちゃうっていう遊び心ね。という事で蛇の頭とは目線を合わせないように!三匹近くで固まっているから、ライザさん。

いっちょぶちかまして下さい」


「任せときな!(あね)さんよ!」


ライザは勢いを付けて角を曲がると、コボルト蛇のキメラが三体まとまっていた。蛇の顔と視線を合わせないように目線を下げ、身を低くして滑り込むようにして大剣を大きく一薙ぎした。

三体のキメラの胴が一瞬で上半身と下半身に分かれ、ライザは更に大剣をぶん回し二体の蛇の頭を切り飛ばした。

残った一匹の蛇頭は「ふんぬ!」と足で踏み潰した。


ライザは肩に大剣を担いで仁王立ち。頭に額当て、革の鎧に胸部だけが金属の胸当て。肩はノースリーブでむき出しの筋肉が逞しい。

その顔はやけに得意気だ


「どうだい姉さん!ぶちかましてやったぜ」

「あら素敵!流石はライザさん!完璧ね!」


「へへへ……」


ライザがニヤケる。聖魔の剣のメンバーはこんなにも人に懐き、胸襟を開くライザを見たことがない。いつも寡黙でぶっきらぼう。頼り甲斐のある女の代表格みたいな感じだからだ。


今日も途中からマーリンのことを「(あね)さん」と呼んで慕っている。

ライザがマーリンを姉さん扱いするのは、自分を格下と認めマーリンの舎弟というか妹分(いもうとぶん)となったのも同然の行為。身体が一回り小さなマーリンに子犬のように懐く姿は、可愛くもあった。


シュヒルは屍となった蛇の頭を見分する。

バジリスクは頭部に王冠のような突起物がある大蛇で、その目には石化能力がある


「こんな所にバジリスク。砂漠地帯やそのダンジョンに生息してここでは殆んど見かけない。

更に三匹固まっていたのが厭らしいな。知らずに近づいたら、先ず間違いなく石化されていただろう。

マーリンさんのお蔭で助かりました」


敵を斥候も使わず発見し、しかも数だけではなく細部まで見通すので、その実力の底は見えない。ここは無条件でマーリンを信頼するしかない。



そして一行はマーリンの先導の元、幾つか戦闘をこなしながらも最短でボスのいるフロアにたどり着いた。



目の前には大きな門が立ち塞がっていた。






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